方法論の共有は「両刃の剣」【赤坂真二「チーム学校」への挑戦 #6】


多様化、複雑化する学校の諸問題を解決するためには、教師一人の個別の対応ではなく、チームとしての対応が必須である。「チーム学校」を構築するために必要な学校管理職のリーダーシップとは何か? 赤坂真二先生が様々な視点から論じます。
第6回は、<方法論の共有は「両刃の剣」>です。
執筆/上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二
目次
改善が成功する学校にあるもの
前回は、自校のカリキュラムを磨き上げること、そしてそれを運営することに専念する小学校の在り方が、意図せず中学校での生徒たちの適応を難しくしている事例を挙げさせていただきました。
このような課題を抱える学校が、どのようにしてそれを克服するか、気になるところかもしれませんが、具体を述べる前に考えておきたいことがあります。課題を抱える学校というと、さも生徒指導や学習指導における著しい困難を抱える学校をイメージされるかもしれませんが、そうではありません。全ての学校が教育目標をもち、それと現状のギャップを埋めるために取り組んでいます。だから、全ての学校が学校改善という課題を抱えていると言えます。改善を成し遂げた学校は数多くあるでしょうが、実際には、そうできていない学校もあります。そうした学校は一体どのような問題があるのでしょうか。
校内研修などに関わらせていただいている学校でも、改善がうまく進まないときはあります。ただ、改善の進まない学校を「ダメな学校」と断じるつもりは全くありません。私が考える「ダメな学校」は、そのような状況を変えようとしない学校です。幸いにして関わらせていただいている学校は、壁に突き当たることがあっても、然るべき期間にそれを乗り越えていきます。むしろ、問題のない学校改善の方が、問題があるように思います。紆余曲折があってもいいし、その速度が緩やかでもいい、しかし、確実に改善に向かって前進しているのが私の考える「よい学校」です。
これまで本連載で、学校改善の成功の根幹には、「校長のリーダーシップ」と「同僚性の高い職員集団」があることを指摘しました。しかし、それらがあれば、学校改善がうまくいくかといったら、そうとは限らないのです。校長先生に改革の意志があり、職員が良好な関係性であっても、なかなか光が見えない学校が現実にはあります。ある学校では校長先生が、学校改善に積極的で、それなりにアクションを起こしていました。職員同士も比較的よい関係で、それぞれが真面目に努力されていました。校長先生と職員の関係性も良好で、校長先生の願いを先生方はよく理解されていると感じました。しかし、いくつかのクラスで学級経営がしんどい状態になり、どうしたものかと悩んでおられました。
子どもたちの学級への適応感を測るアンケート用紙Q-Uで学校改善や教育委員会の支援に携わる河村茂雄氏は、不適応や学力向上や特別支援教育の推進において、著しい成果が見られた学校には、いくつかの共通点が見出されたと言います。具体的には、「学級経営・生徒指導・授業の展開において、目標とそれを具現化する方法論の基本的な部分で、教師間の足並みがそろっている」とのことです※1。