小中連携の前に横たわる悩ましい問題【赤坂真二「チーム学校」への挑戦 #5】

連載
赤坂真二の「チーム学校」への挑戦 ~学校の組織力と教育力を高めるリーダーシップ~

上越教育大学教職大学院教授

赤坂真二

多様化、複雑化する学校の諸問題を解決するためには、教師一人の個別の対応ではなく、チームとしての対応が必須である。「チーム学校」を構築するために必要な学校管理職のリーダーシップとは何か? 赤坂真二先生が様々な視点から論じます。
第5回は、<小中連携の前に横たわる悩ましい問題>です。

執筆/上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二

ある校内研修にて

5月、6月は校内研修真っ盛り。お陰さまでこの1学期間に、北海道から沖縄まで全国の学校からお声かけをいただいています。それだけ多くの管理職、ミドルリーダーの先生方にお会いします。公立学校といえども、同じような組織は一つもなく、従って、同じマネジメントもありません。リーダーの皆さんの創意工夫には頭が下がる思いです。多くのリーダーが、勤務校の教育の質的向上を目指し、学校づくりに励んでいるわけですが、なかなか悩ましい問題を目の当たりにします。今回は、いつもの学校のチーム化という話題から少し外れるかもしれませんが、チーム学校を考える上で、考えていかねばならないであろう問題に触れてみたいと思います。

私が大学の教員になった10年前は、専門が学級集団づくりなので、小学校からの研修のご依頼が圧倒的に多かったです。しかし、近年多いのは、中学校からのご依頼です。「荒れた」新入生の入学によって、学校が混乱しがちだというのです。中学校はけっしてそのような言い方はしません。これは、あくまでも私の見方です。お話を聞いていると次のようなニュアンスを感じます。近年の学力向上志向の風潮の中で、小学校は、授業づくりには力を入れているようですが、学級集団づくりは、それほどではないようです。社会性や規範意識が育っていないところがあり、集団としてのまとまりや人間関係に少なからず課題を抱えているようです。かかわった中学校の中には、学区の全ての小学校が学級崩壊またはそれに近い状態で、回復しないままに中学校に進学している事例もありました。

ある中学校からご依頼を受けて、お邪魔させていただきました。1年生も2年生も不安定だということです。不登校もいて、教室に入れない子どももいます。授業中は不規則発言が続き、場合によっては授業にならない教科もあるとのこと。授業を拝見させていただくと、子どもたちの反応はとてもよく、楽しげに学習しているように見えました。ただ、時々私語があり、そして、そのなかにいくつか「ドキッ」とするような発言がありました。また、彼らの表情を見ていると、明るく振る舞っている子どもたちに混じって、暗い顔をした子どもがあちこちにいることが気になりました。

こちらの中学校には四つの小学校から入学してくるそうです。仮に、A校、B校、C校、D校と呼びますが、その人数比は、3:2:1:2くらいだそうです。D校は、落ち着いた雰囲気で成績も優秀です。先生は、いわゆる「ビシッと」しつけるタイプだったようです。しかし、B校、C校は学級崩壊、または崩壊気味でした。こちらの先生方はとても困っておられたようです。また、一番人数の多いA校は、学級崩壊こそしていませんが支援を要する児童の割合が高く、叱る指導が多かったといいます。

「小小連携」の必要性

こうした子どもたちに共通することはなんでしょうか。それは教師に対する不信感です。B校、C校の子どもたちは、学級崩壊やそれに準ずる状態だったわけですから、学級を掌握できなかった教師という存在を、信頼しないであろうことは予想されます。では、残り2つの小学校はどうでしょう。A校は、人数から言えば学校生活に適応できる子どもたちはそれなりにいます。しかし、彼らが教師を信頼しているかといえば、そうではないと思います。叱られることが多かった子どもたちが、教師を信頼しないのはわかりますが、それは少数です。それ以外の多数の子どもたちはどうなのでしょうか。大抵このような教室では、不適切な行動をする子どもたちに教師の関心や注目が集中し、他の多数の子どもたちが放っておかれている場合があります。

彼らは、不登校にもならず、かといって反抗もせず、ひたすら我慢しています。その代償として教師を信頼しなくなるのです。彼らが中学校に進学し、もしそこで、自分たちの気持ちの代弁者に出会ったとしたらどうでしょう。この場合、B校、C校にいた不適切な行動をすることができる子どもたちです。実際に、小学校の時に教室を混乱させたことを自慢する子どももいたそうです。こうして、A校の静かな反抗者たちとB校、C校の元気な反抗者は結託して、中学校の教室を荒らしているのではないかと考えられました。

では、D校の子どもたちはどう感じていたのでしょうか。学校や先生の味方になってくれればいいのですが、そうはなりませんでした。「どうして中学校の先生はしっかりやってくれないのだ」と、これもまた教師への不信感を標榜します。学級集団づくりの観点から言えば、教師への信頼感が規範意識の基盤です。つまり、教師が信頼感を失うことは、規範意識の低下につながります。こうして、集団は荒れ、私へのご依頼となったわけです。

この中学校区の小学校が「手抜きをしていた」とは思いません。しかし、自分たちの学校課題を解決することだけに関心を向けていて、子どもたちの中学校生活を描くことに少し無頓着だったのかもしれません。学力だけでなく、社会性や思いやりなど非認知的能力の面でも、中学校区で共通して取り組む事項を決め、中学への接続を真剣に考えていくべきだったのではないでしょうか。今は小学校同士の連携がないと中学校に過剰な負担をかけてしまう状況になっているようです。高学年で荒れるということは、それまでの積み重ねに問題があったことが指摘できます。中学校区の小学校で、地域の子どもたちに必要な力をしっかりと議論して、低学年のうちから育てるべきだと私は思います。

『総合教育技術』2017年8月号より


赤坂真二(あかさか・しんじ)
上越教育大学教職大学院教授
新潟県生まれ。19年間の小学校での学級担任を経て2008年4月より現職。現職教員や大学院生の指導を行う一方で、学校や自治体の教育改善のアドバイザーとして活動中。『スペシャリスト直伝! 学級を最高のチームにする極意』(明治図書出版)など著書多数。


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