11月の先生のお話|それでも時間は生み出せる
「なんとなくダラける」「時間がルーズになる」「時間が足りない」。このようなことが頻発するのが11月。「時間を守る」意識だけでなく、「時間は生み出せる」という意識も同時に育てたいものです。そのためにできることを2つのポイントと共に紹介します。
目次
Point1 守るべきは、時間
・休み時間、子供たちが遊びに夢中になりすぎて授業開始時刻に遅れてしまう
・学級活動における話合いの場面において、時間が足りなくなってしまう
このような経験をされたことはありませんか。教師は安直に、「遊びに夢中だったから仕方ない」「時間が足りないなら延長しよう」と対応するのはよくありません。よほどのことがない限り、時間は守るものです。終了時刻から逆算して行動をすることは、集団生活の場である学校ではとても重要です。「時間は守るもの」ということを身につけさせるためにも、子供たちに手立てを与えたり、モデルを示したりする必要があるでしょう。
例えば、
・授業スタート前に席に着けるよう、何分前に行動を移すか
・話合いの落としどころ(最終的に、多数決なのか、ジャンケンなのかなど)を決めておく
・長々と話さず、要点をズバッと発言する
・教師が話合いの司会進行をし、モデルを示す
などがあります。他にも、教師ができる支援として、さまざまな声かけがあります。
■話合いの内容と関係ないおしゃべりが散見された場合
<好ましくない声かけ>
関係のないおしゃべりをしている子がいますね。皆のことだから真剣になりましょう
<好ましい声かけ>
真剣に話し合えている子がいますね。皆さん、その調子です
話し合えている子供たちに注目させて、みんなの意識を前向きにする声かけが望ましいです。
■話合いの内容の時間配分がうまくいっていないとき
<好ましくない声かけ>
時間、大丈夫ですか。あと10分間しかありませんよ
<好ましい声かけ>
みんなで鬼ごっこをするところまで決まりましたね。さあ、残り10分間で細かなルールを共有・確認していきましょう
ここまでの話合いの成果を自覚させながら、残りの時間で進むべき方向を示してあげることで、「あとひと息だ!」と子供の気持ちが高まります。このような支援を続けていけば、次第に子供たちから同様の声かけ、一体感の空気が生まれます。
Point2 時間は生み出せる
大人と子供の時間感覚は大きく違うものです。大人が「あの時間、もったいないなぁ」と思うことでも、実は子供にとっては、成長のために「必要な時間」であったりします。なので、あまり時間に縛り付けることは避けたいものです。あくまで自然に、自然にです。
そこで、授業開始の前に全員が着席も含め準備が万全であったら、
皆さんのおかげでスムーズに授業が始められます。時間が生まれました。ありがとう
給食の準備の時間においても、
チームプレーのよさで、時間が生まれました。ゆっくり食べられますね
このように、声かけの中で「時間が生まれる」という言葉を入れて、価値付けていきます。次のステップとして、
今から、外でお楽しみ会のドッジボールですね。素早く並んでスムーズに移動して、時間を生み出そう。生まれた時間で…
「いっぱい遊べるね!」
このように、時間を生み出すことで「よいこと」があるという経験を積ませていきましょう。次第に、相手の意見を尊重したり、譲り合ったりする姿が見られ、より「濃い」学びの時間が流れることでしょう。
私の尊敬する、100歳を超えてなお現役の医師を務められた日野原重明さんは、「命はどこにあるか」という問いに対して「命は時間の中にある」とおっしゃっていました。時間を大切にするということは相手の命を大切にすることにつながるのだと私は信じています。
この11月、時間を守り、生み出すことで、皆さんの学級に豊かな時間が訪れますよう心より願っています。
八神進祐(やがみしんすけ)●1988年、愛知県生まれ。愛知教育大学卒業。教育サークルMOVE代表。子供たちの“ありのまま”を大切にした教育実践に取り組んでいる。
著書『今すぐ真似したくなる教室のひみつ道具図鑑』、教育論文入賞多数、第5回・第7回「全国授業の鉄人コンクール」優秀賞、フォレスタネットグランプリ初代MVP。
YouTubeでは小学館「みんなの教育技術」より、授業力アップ動画を、Twitterでは「だいじょーぶ先生」(@teacher16694123)としてアイデア溢れる教育実践を発信中。