小5国語「クラスで活動報告をしよう」指導アイデア
執筆/沖縄県公立小学校教諭・村吉優子
編集委員/国立教育政策研究所 教育課程調査官・菊池英慈、那覇教育事務所指導主事・上里亮
教材名/クラスで活動報告をしよう(教育出版 五年下)
指導事項/B書くこと(1) イエオ 伝国イ(キ)
目次
単元で付けたい資質・能力
①言語活動とその特徴
活動報告文は、係活動や委員会活動等の、一定の継続的に行った活動を報告するために書く文章です。文の構成として、「活動の目的」「活動内容」「成果と課題」「活動して考えたこと」等が考えられます。
本単元では、係の活動報告文を文集にまとめることで、学級で読み合ったり他のクラスにも伝えたりする言語活動を位置付けます。
②言語活動を通して付ける資質・能力
伝えたいことを明確にして書くことを決め、目的に合わせて図や表などを効果的に用いるなど、読み手を意識して文章全体の構成を工夫した文章を書く力を付けます。
③指導のポイント
・二種類の文章を比較することで、具体的な活動報告文の様式を知り、どのような目的でどう書いたらよいかが具体的に理解でき、学習の見通しがもてるようにします。
・活動報告文に用いようとするグラフや表等の根拠となる資料が、目的や意図に沿ったものになるよう吟味させていきます。
・相互評価する際の観点を示し、構成や引用、事実と考えの書き分けなどを意識してよりよい活動報告文を書くことにつなげます。

活動報告文の題材例
・クリーン活動についてまとめ、よりよい街づくりについて考える。
・委員会活動の報告文を書いて活動への理解を深める。
・学校や地域の行事に参加し、活動したことを報告する。
・係の活動報告文を書いて文集にまとめよう。
単元の展開(7時間扱い)

アイディア① 活動報告文の構成や特徴を知る。
AとBの二つの文章を比べることで「活動報告文」の特徴をつかませます。
A「活動報告文」
B「感想文」
活動を報告するには、どの文が適しているのかな。Aの「活動報告文」には表やグラフがありますね。
Aは、見出しで活動の流れがよくわかります。
Aの「活動報告文」は、目的と活動内容、成果等で構成され、見出しで活動の流れが分かりやすく示されています。AとBの文章の種類と特徴について確認し、文章全体の構成の効果に気付かせます。
二つの文章の比較を通して、ゴールとなる「活動報告文」のイメージをもたせ、これから学習することを見通します。また、引用、資料の使い方、構成の工夫など、子供が自分で表現様式の違いを発見できるようにしましょう。AとBの文章にはそれぞれどんなことが書かれているのか、活動したことが分かりやすいのはどちらか、その訳は何かを考えさせるようにしましょう。そうすることで、目的に合った文章構成があることに気付くことができます。
アイディア② 活動の成果を伝えるため、効果的な資料の掲示方法について考える
活動の成果について説得力をもって伝えるためには、図表やグラフなど、考えの根拠となる資料を用いると、さらに効果的です。伝えたいことは何か、それを伝えるためには、どんな資料が必要なのかを話し合います。読み手に伝えたいことが伝わる資料になっているかを話し合いましょう。
資料を用いることで、活動の成果がより伝わるようにしましょう。グラフや表、写真等の資料には、それぞれの特性があります。伝えたいことに応じて選べるようにしましょう。
図やグラフなどを用いて、読み手に伝わるように記述するために


グラフで示すと、毎月の読書量の変化がよくわかります。特に、読書月間の取組後に冊数が増えていることは、成果として示せると思います。
数量の変化だけではなく、どんな種類の本を読んでいるのかも、表で示せたら、さらによくなると思います。
数値や言葉を使って具体的に記述する
グラフや表から分かることを適切に書くために、次のような言葉を用いて書きましょう。
○おおよそを表す言葉
だいたい ほぼ、約、おおむね
○比べる言葉・傾向を表す言葉
増加する、減少する、上回る、下回る、差が大きい・小さい、全体として〜であった、部分的に見ると〜であった。
表を見ると、読んでいる本の種類に偏りが見られます。このことは、課題として取り上げて、今後の取組にいかしましょう。
年間の読書冊数のグラフと本の種類の調査と両方をのせるのはどうでしょう。成果や課題が適切に示せると思います。
~図表を引用して書く~
活動の成果を表やグラフ、写真等を加えて示す際には、本文に「図1は~」「表1のように~」といった表現を用いて本文との関連を示すよう指導します。自分で図表やグラフを作成する場合もありますが、本や文章から引用してくる場合には、出典を明記することを指導する必要があります。
いずれにしても、図表を用いることで、より一層わかりやすくなることを目指し、目的にふさわしいものを判断できるようにすることが重要です。
アイディア③ 書いた文章を読み合い、よりよい活動報告文になるように助言し合う
書いた活動報告文を友達と読み合い、よく書けている部分や改善した方がよい部分について話し合います。その際、評価の観点を示し、相互批正をすることによってよりよい活動報告文になるようにします。
「評価の観点」と「記述の仕方」を参考にして互いの活動報告文を読み合いましょう。どう書いたらよいのか迷っている点についても相談しましょう。
評価の観点
① 活動の目的に沿った内容が書かれているか。
② 活動の成果に合った資料が使われているか。
③ 事実と考えが分けて書かれているか。


写真1に関しては、箱を設置した様子ではなく、アンケートの中身をのせたらどうでしょう。他のクラスにも読んでもらうことを考えると、どんな内容のアンケートをとったのかが知りたいと思います。
思ったことは、「活動結果」のところではなく、活動して「考えたこと」の項目に入れたらどうかな。ここは結果だから、事実を示せたほうがよいと思います。
相互評価し合い助言する際には、誤字や脱字の訂正を行うだけでなく、文章構成、目的や意図に沿った内容、適切な資料の引用、事実と考えの書き分けなど、観点に沿って話し合うことが大切です。訂正する点だけでなく、優れた表現や構成は参考にして、自分の報告文に取り入れていく視点も大切です。互いに学びが深まるような時間になることが重要です。
教科調査官からのアドバイス
国立教育政策研究所 教育課程調査官・菊池英慈
ポイント① 高学年における「活動報告文」の特徴を明らかにしよう!
文章の種類を具体化することは、どんな目的で、誰に向けて、どのように書くのかという、書く目的や相手を明確にすることにつながります。
そこで、本事例ではアイディア①にあるように、「活動報告文」と「感想文」とを比較することで、「活動報告文」の特徴を明らかにするようにしています。活動を報告する文章は中学年までにも書いていますが、高学年では単に活動した事実を述べるだけではなく、自分が体験したからこそ実感できたことや、深く考えたことを書くことが重要となります。
ポイント② 引用したり図表やグラフを用いたりする目的を明確にしよう!
より説得力ある文章とするためには、図表やグラフなどを用いて根拠となる事実を挙げながら、自分の考えを述べることが効果的です。
そこで、アイディア②では、数値や言葉を使って具体的に記述するときの言葉や、「図1は〜」「表1は〜」といった表現を例示しています。
その指導に当たっては、何のために引用するのかという目的を明確にしたり、引用した部分と自分の考えとの関連などを示したりすることにも留意させていくようにしましょう。
イラスト/和久田容代、横井智美
『小五教育技術』2019年2/3月号より