『レクがだれない』3つの極意【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】⑩
1年生の子供たちは、初めて集団活動を体験します。主体的・対話的な態度を育てるとともに、子供同士をつなぎ、よりよい人間関係を築きましょう。この連載では、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)や『教室ギア55』(東洋館出版社)などのヒット著者の鈴木優太先生が、小1「特別活動」のさまざまなアイデアを紹介していきます。
第10回は、子供たちが進行する『レクがだれない』3つの極意をレクチャーします。
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)など、著書多数。
目次
レクがだれない3つの極意
学級における集会活動は、「お楽しみ会」という名前の通り、子供たちにとって最高に楽しみな時間です。
事前の計画、事中の演出、事後の振り返りの一連の活動の具体的アイデアを『小学校の「お楽しみ会」を充実させる指導アイデア集』に記しているので参照ください。
「お楽しみ会」の内容として、レクを行う学級はとても多いでしょう。
「子供たちが進行するレク」がだれないための極意があります。
1.時間で終わる
2.回数で終わる
3.全員達成で終わる
「終わり方をはっきりと決める」ことです。
極意1:時間で終わる
レクリーダー「4分30秒間、『チーズバーガーじゃんけん』をします。はじめ!」
「タイマーが鳴ったら終わり」
が最も分かりやすく取り組みやすい方法です。そのため、子供たちが進行するときは「時間で終わることのできるレクを選ぶ」ことをおすすめします。
したがって、タイマーが教室の必需品です。しかし、どんなタイマーでもよい訳ではありません。「10秒ボタン」があるデジタルタイマーの一択です。
1秒ボタンしかないタイマーで30秒間を設定するには、「30回の連打(もしくは長押し)」が必要となってしまいます。これでは、心地よいテンポでの開始が難しいのです。10秒ボタンのタイマーではたった「3回」で設定できます。タイマーの「ピピピッ、ピピピッ」の合図で活動をきっぱり終わります。
子供たちは、20分間あれば20分間レクをしようと考えがちです。しかし実際は、説明や移動なども含めた時間です。また、選んだレクの活動時間を長めに設定しがちです。「たくさん活動したい!」というやる気の表れではありますが、設定した活動時間が長いことがだれてしまう元凶にもなっています。
「もう少しやりたかった!」
と感じるぐらい、やや短めの活動時間が適切です。子供たちが進行するために、一度以上経験のあるレクを選択しているためでもあります。
レクを紹介する書籍やウェブサイトには活動時間の目安が示されています。例えば、活動時間が5分間と紹介されているレクは、あえてお楽しみ会では「4分30秒間」で実施してみましょう。このような時間管理が、授業においてもお楽しみ会においても大変重要です。
子供たちが主体となった活動だからこそ、「時間」に関しては教師の介入を惜しまず、レクを担当する子供たちと一緒にシミュレーションをすることがだれない秘訣です。短い活動時間のレクを2つや3つ取り組んでもよいのです。
「時を司る」ことが良きレクのはじめの一歩です。
極意2:回数で終わる
レクリーダー「『後出しじゃんけん』を5回やります。何回成功したか数えましょう」
「何回やったら終わり」
を確認してから活動を始めます。
回数で終わるレクの場合は、1回1回活動を終えるごとに拍手をすることで盛り上がります。しかし、騒がしくなってしまって「静かに!」という声が飛び交い、活動と活動の間の接続がうまくいかないためにだれてしまう…ということがあります。
全員で手拍子を合わせて活動を締めくくる『拍手じまい』まで行いましょう。
①活動中に、レクリーダーが「よ~~おっ!」と、かけ声をかける。
または、〈チャチャッチャチャッチャ〉と、リズムよく手を叩く。
②子供たちが〈チャッ・チャッ・チャッ〉と、3回手を叩く。
③「静か」をつくる。
『拍手じまい』の合図は、「よ~~おっ!」とかけ声をかけるのと、〈チャチャッチャチャッチャ〉とリズムよく手を叩く2パターンがあります。
〈チャッ・チャッ・チャッ〉後の「余韻」から「静か」を感じて、心地よく活動を終えられます。間髪入れずに次の活動が始められ、「テンポよく」レクを進める魔法のようなテクニックです。
極意3:全員達成で終わる
レクリーダー「『カタカナならべかえクイズ』の答えが分かった班から座ります。全員が成功したら終わります」
「全員達成できたら終わり」
は大きな「達成感」があります。
しかし、なかなか終わることができないためにだれてしまうという注意点を念頭に置き、慎重に計画します。
全員達成するためには、「終わりが見通せるレクを選ぶ」ことです。例えば、『後出しじゃんけん』のように、全員達成までに1分程度で終わる、10回程度で終わるものは、「時間や回数を見通せるレク」として適しています。
また、『カタカナならべかえクイズ』のように、達成が難しいチームにはヒントを出すなどができる「必勝法を見通せるレク」も有効です。
これらのレクでは、「立って」活動を始め、終えた人から「座る」ようにします。活動終了が一目瞭然だからです。
一方、『チーズバーガーじゃんけん』のように、グー・チョキ・パーの3つが揃うためには偶然性しか条件がないなどの場合、全員達成で終わるレクには向きません。
時間や回数の見通しをもてず、必勝法もないため、「終わらないことも見通せるレク」となります。こうしたレクで全員達成をゴールに設定してしまうと、いつまでも達成できずにだれてしまうことが起こりえます。
「終わり方をはっきりと決める」ことが子供たちが進行するレクがだれない極意です。
2023年2月発売予定の多賀一郎監修/鈴木優太編著『ロケットスタートシリーズ学級づくり&授業づくり スキルレク&アイスブレイク』(明治図書出版)に、このような極意や役立つ実践の詳細をまとめています。ぜひ、ご覧ください。
教師も、子供たちも、ともかく「やってみること」を通して、お楽しみ会やレクをだれずに楽しく行う勘所を掴んでいきます。『今日の福引き』などの毎日の朝の会で行うショートレクや、授業において学習ゲームに積極的に取り組むことで円滑に取り組めるようになります。
そして、たとえだれてしまったとしても、子供たちがレクを進行してみる経験は何にもかえがえたい尊い価値がある、ということも実感することでしょう。
子供たちに「任せてみること」がとても大切なのです!
レクをすると失敗もひっくるめて様々なことが起こります。豊かな体験を潤沢に経験した子供たちは、温かく仲間とつながり、たくましく成長していきます。
子供たちは「レク」が大好きです。
参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『日常アレンジ大全』(明治図書出版)
イラスト/高橋正輝