理科でネット検索を用いた調べ活動、どのように指導すればいいの? 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

これまでの調べ学習は、教科書や図書室にある本を中心に調べたり、わざわざコンピューター室に行って調べるなど、必要な情報が見つからなかったり、調べるだけで時間がかかったりして必ずしも合理的な方法とは言えませんでした。それが今や、子ども自身が授業中調べたいときに検索ができる時代になりました。しかし、検索はしたものの、どの情報を取り出せばよいのか?検索の仕方がそもそもあっていたのか?という新たな問題が出てきました。これからの時代、検索能力は必要ですが、どのように指導しますか? また、理科とネット情報はどのように関わるとよいのでしょうか。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?

執筆/東京学芸大学附属小金井小学校教諭・三井寿哉
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

ネット検索での調べ活動は容易になったけど…

1人1台端末の普及によって、理科の時間でもインターネットを使った調べ活動が容易になりました。しかし、以下のような例を経験された先生も多いのではないでしょうか。 第6学年「人の体のつくりとはたらき」での事例です。心臓や肝臓の働きについてインターネットを使った調べ活動時、ネット検索をすると、小学生向きの情報サイトもあれば、医療向けの情報サイトなどもあり、その書きぶりも様々です。医療向けサイトは専門用語が飛び交い、大人でも理解するのが大変なものがあります。小学生向けのサイトでも教科書の範囲を超えた内容や用語が掲載されています。発展学習として多くの知識を得ることはよいと思いますが、子ども自身はその難しい内容を本当に理解しているのでしょうか? 授業での問題解決活動として必要な情報なのでしょうか? 子供によっては、その文章をじっくり吟味することもせず、コピペして調べたつもりになっている様子も見られます。では、どのように指導すればよいのでしょう?

ネット活用で育てたい2つの力

①必要な情報を取捨選択できる力
学校でのネット検索は、フィルターによって安全な子供向けのサイトしか見られないよう施されている場合が多いですが、どうしても大人向けのサイトにたどり着いてしまうことがあります。これは避けられません。大事なのは、その情報のどの部分を自分の情報として取り込むかです。自分にとって必要な情報だけを切り取り、ノートにまとめたり、PCの別アプリに貼り付けたりする活動が行えるよう指導していきましょう。多くの情報から必要な部分を取捨選択できる力は情報処理能力につながります。

②読めない言葉は自分の言葉に直す力
ネット検索を用いた調べ活動のまとめを見ると、文書にある用語や言い回しをそのまま引用しているケースが散見されます。ポスターに漢字で書いたは良いが、発表時に読めない。友達に伝わらない言葉で説明している。これは十分な調べ活動とは言い難いです。大人もそうですが、読めない言葉、意味の分からない用語はついつい読み飛ばしてしまいます。その言葉の意味もわからないまま、引用して発表しても相手には伝わりません。

読めない言葉に出合ったら、その言葉をさらに検索して読み方や意味を調べていく方法を身に付けられるよう指導していきましょう。情報端末は言葉を選択して検索するだけでその意味を知ることができる強みがあります。友達に説明して理解してもらえる優しい簡単な言葉や文に直すことができる力が大切です。読めない言葉をそのままにせず調べる習慣は、自身の認識を深めることにつながります。

ネット検索活動時のポイント

①問題解決から逸れない
インターネットは気になった情報に流され、気が付いたら最初の目的から外れた検索を行ってしまうことがあります。所謂ネットサーフィンです。子どもも目的から逸れて学習問題と外れた内容を調べていることがあります。何について調べているのかを明確にしてから調べ活動を行うようにしましょう。解決できる情報を得たら検索活動は終わりにするよう促していくことも大切です。

②検索活動を行う前に伝えたい、先生の一言
「調べたいことが解決できるサイトを見つけよう。」
「読めそうだ。理解できそうだ。という自分に合ったサイトを見つけよう。」
「わからない言葉や読めない言葉は、その言葉の意味をさらに調べよう。」
「サイトの文を参考にしながら、クラスの友達にも伝わるようなわかりやすい言葉に直して、自分の言葉でまとめよう。」
「どのサイトの言葉を参考にしたのか、発表時に紹介できるようメモしておこう。」
※これらはインターネット検索に限らず、図書資料検索でも同様な指導を行うことができます。

イラスト/難波孝

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

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三井寿哉先生

〈執筆者プロフィール〉
三井寿哉●みつい・としや 東京学芸大学附属小金井小学校教諭。理科を中心に日々実践研究を行う。本学教育実習をはじめ、東京未来大学非常勤講師、姫路大学非常勤講師の教員養成にも携わる。理科おもしろゼミ研究会代表、NHK Eテレ『ふしぎエンドレス』作成協力委員、共著に『GIGAスクールに対応した小学校理科1人1台端末活用BOOK』(明治図書出版)、『小学校理科フローチャート型授業ガイド』(東洋館出版社)など。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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