自治を促す『一役プロ掃除当番活動』【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】⑨

連載
鈴木優太「子供同士をつなぐ1年生の特別活動」

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
子供同士をつなぐ1年生の特別活動

1年生の子供たちは、初めて集団活動を体験します。主体的・対話的な態度を育てるとともに、子供同士をつなぎ、よりよい人間関係を築きましょう。この連載では、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)や『教室ギア55』(東洋館出版社)などのヒット著者の鈴木優太先生が、小1「特別活動」のさまざまなアイデアを紹介していきます。

第9回は、一つの仕事を長期間担当する『一役プロ掃除当番活動』の提案です。

鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書)など、著書多数。

1週間交代で行う掃除当番の問題点

掃除当番を1週間交代する学級が多いようですが、慌ただしく騒がしい…そんな月曜日を毎週迎えてしまってはいませんか? これでは、掃除のやり方がおぼつかないばかりか、時間ばかりがかかってしまいます。そして、騒がしく掃除をしてもよいというムードを子供たちが学んでしまっている点が問題です。

学校での掃除の手順は概ね次の4行程です。

①運ぶ→②掃く→③拭く→④戻す

この4行程を1年間の中で満遍なく経験できれば、1週間交代にこだわる必要はないのです。

仕事を細分化し、同じ担当を長期固定する『一役プロ掃除当番活動』を提案します。

『一役プロ掃除当番活動』に取り組んでみよう

2か月間程度の長期間、毎日同じ担当場所を清掃する『一役プロ掃除当番活動』に取り組んでみましょう。

原案は教師が決め、出席番号順に名前を入れたものでまずは1週間お試しでやってみます。お試し期間後に話合い活動を経て表を修正し、『一役プロ掃除当番活動』を本格スタートします。長期固定だからとそのままにするのではなく、振り返り、柔軟に修正する営みを適宜設けていくことが大切です。

担当する掃除のやり方を熟練するので、1年生でも5~10分間で担当場所に黙々と取り組めます。時短でぴかぴかに掃除できるようになるので、「+α」のできることを考えて取り組むことも推奨していきます。

まずは、一役プロ当番表の原案を作成しましょう。Google スプレッドシートやExcelなどで学級の人数分の仕事を書き出します。

子供の名前を書き込む欄を作成するときに「プルダウン」の設定(Google スプレッドシートのプルダウンリスト作成方法)をしておくことがポイントです。 名簿から全員の名前をプルダウンのリストへコピペし、氏名と氏名の間を「,(半角カンマ)」で区切ります。このセルを他のセルへコピペすれば同じように「プルダウン」から子供の名前を選択できるようになります。

Google スプレッドシートで作成中の一役プロ掃除当番表。
Google スプレッドシートで作成中の一役プロ掃除当番表。プルダウン設定しているため、子供の名前「〇〇〇〇、△△△△、□□□□、☆☆☆☆、※※※※、@@@@@」が選択できるようになっている。

次に、一役プロ掃除当番表を端末から子供たちが各自で操作できるように共有します。誰が何の仕事を受け持つかを話し合って決めたら、自分が担当する仕事のセルの横の「プルダウン」から、自分の名前を選びます。子供たちが自分たちの手で作った一役プロ掃除当番表があっという間に完成します。

「この仕事に責任を持って取り組みます」という意思表明の意味から、分担表作りに参画することは大切です。

掃除検定テキスト集に学ぼう

清掃用具の正しい使い方や掃除の仕方を学ぶことができるテキスト集がインターネット上に公開されています。

特にお薦めなのが「高知県特別支援学校技能検定テキスト集(清掃)」です。写真、イラスト、そしてルビ付きなので1年生~6年生まで重宝します(職業教育の充実のために、特別支援学校に清掃技能検定を設けている自治体があります)。

2020年以降、コロナ禍の学校現場では、掃除の仕方や扱う用具を見直す動きが見られます。自在ほうきやぞうきんを使わなくなった学校もたくさんあります。こちらのテキスト集には、ダスタークロスや水拭きモップや掃除機の正しい使い方も示されています。様々な用具やその正しい扱い方を学べる点からも活用しない手はありません。

1人1台端末を使って、掃除検定テキスト集にアクセスし、望ましい掃除用具や掃除の仕方について、子供たちと一緒に見直すことも大切。
1人1台端末を使って、掃除検定テキスト集にアクセスし、望ましい掃除用具や掃除の仕方について、子供たちと一緒に見直すことも大切。

社会や家庭と結び付いたこれからの学校を考えたときに、清掃に使用する用具は何が望ましいのでしょう? 清掃で使う用具ややり方が変わると、必要な時間だって変わります。清掃活動が子供の心を育てる一面を担うことを鑑みながらも、取り組む時間や使用する用具を考え続けていくことが大切です。

子供たちだけで取り組めた経験が「自治」につながる

清掃活動はやることが明確です。そのため、「子供たちだけ」で取り組みやすい活動です。仕事を細分化し、同じ担当を長期固定する仕組みが「子供たちだけ」で取り組むことを促します。「子供たちだけ」で取り組めた経験は、学級経営の根幹を為す「自治」につながります。

落ち着いて清掃活動に取り組む経験を「毎日」積み重ねている集団は、自治的な風土が育まれていきます。「プロ」というマジックワードが、一層子供たちのやる気を促します。

無料グラフィックツール「Canva(キャンバ)」を使って、掃除のやり方動画を作るチャレンジ(連載「どの子も安心して学べる1年生の教室環境」第9回で紹介)も、「プロ意識」を育てることにつながります。

『一役プロ掃除当番活動』に取り組んでみましょう。

参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『日常アレンジ大全』(明治図書出版)

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