「係活動」の停滞期を打破する3つの実践【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】⑧

連載
鈴木優太「子供同士をつなぐ1年生の特別活動」

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
子供同士をつなぐ1年生の特別活動

1年生の子供たちは、初めて集団活動を体験します。主体的・対話的な態度を育てるとともに、子供同士をつなぎ、よりよい人間関係を築きましょう。この連載では、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)や『教室ギア55』(東洋館出版社)などのヒット著者の鈴木優太先生が、小1「特別活動」のさまざまなアイデアを紹介していきます。

第8回は、「係活動」の停滞期を乗り越える3つの実践『1分間いいことタイム』『ミニホワイトボード係コーナー』『やめマス』を取り上げます。

鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)など、著書多数。

必ず訪れる停滞期をどう乗り越えるかが「係活動」成功の秘訣

「なくても困らないけれど、あると学級目標達成に近づく仕事」が係活動です。

得意を活かそう!
好きを活かそう!
夢のある仕事にチャレンジしよう!

それが係活動です。

勢い勇んでスタートした係活動ですが…そうです、必ず訪れるのが停滞期です。 停滞期を打破する実践を3つ紹介します。

実践1:帰りの会で行う『1分間いいことタイム』

帰りの会で『1分間いいことタイム』を設けます(朝の会でもOKです)。

読んで字の如しです。机まわりやロッカーを整頓するもよし、持ち帰る物や明日の準備物を呼び掛け合うもよし、『ありがとうばん』(連載第3回)をするもよし、そして、係活動に取り組むもよしです。自分がいいと思うことに、それぞれが1分間取り組む時間です。

「学級のみんなのためになることを見付けて取り組もう!」と理想を掲げることは大切ですが、「時間」や「場」を設けて「経験」を重ねないことには、子供たちの力にはなっていきません。

このような「時間」や「場」をこれまで十分に確保していただろうか? と、市の特別活動研究会でこの実践を教えてもらい、私はハッとしたのです。

『1分間いいことタイム』。返却物を配る子、ロッカーを整理する子、道具箱を整理する子、次の休み時間の鬼ごっこを募る子など。

たかが1分間ですが、されど1分間です。毎日取り組み続けることで、自分がいいと思うことに進んで取り組む子供たちの姿が日常的に見られるようになっていきました。

帰りの会では、『1分間いいことタイム』の直後に、「みんなから」コーナーを設けることで、係からの連絡や発表が促されます。『1分間いいことタイム』が帰りの会にあるだけで、係活動が活性化するのです。

1分間「だけ」なので、今日からすぐに取り組めます。効果絶大です!

実践2:話合いが活発になる『ミニホワイトボード係コーナー』

子供たちが自由に発信や交流できる環境を設けることで、子供たちのいきいきとした活動を促します。そこで、『ミニホワイトボード係コーナー』を設けましょう。

【手順】
① A4サイズの紙をラミネートする。
②『曲板(まげいた)』(等間隔に穴の開いた鉄製のプレート)を掲示板に画鋲で固定しておく。
③ ①を『マグネットクリップ』で挟んで②に貼り出す。

※『曲板』と『マグネットクリップ』を使った詳しい実践は、感化を促す実物掲示のアイデア【どの子も安心して学べる1年生の教室環境 #1】をご覧ください。

『ミニホワイトボード係コーナー』に、思い思いの考えを記入する子供たち。
ラミネートした紙は「ミニホワイトボード」としてホワイトボード用マーカーで書き消しができます。取り外して自分の席で書くこともでき、移動も自由自在です。

『曲板』(DAISOでは「ステンレスフリーステー296㎜」)と『マグネットクリップ』は、100円ショップなどで手に入ります。ノートや厚みのある作品などの実物掲示ができる最強ギアです。

子供たちが画鋲を扱うことがないため、安全に自分たちの手で掲示ができます。レイアウトも自由自在なので、掲示板の所で立って書く以外にも、取り外して自席で座って書いた物を貼ることができるようになります。話合いも活発になり、アイデアに富む活動で教室が活気づきます。

以前は、係ごとの掲示スペースを教師が等しく区切っていました。しかし、実はそうした区切りを設けない方が、子供たちがコミュニケーションを取り合って、掲示板を自分たちで運営するようになったのです。「うまくやってみて」と見守り任せる心の余裕が教師の私にも生まれました。

実践3:『やめマス』でこれまでの係をやめ、新設や移籍を自由に

係活動はいつ「スタート」してもよいものです。そして、いつ「リスタート」してもよいものでもあります。学級開きや学期始めのタイミングで慌ただしくスタートする必要はありませんし、スタートしてからも係活動を活性化する手立てを子供たちと話し合い、工夫していける点が醍醐味なのです。

だから、停滞している係の仕事は思い切って…やめます!

『やめマス』という用紙を書くことでこれまでの係をやめて、いつ係を新設しても、いつ別な係に移籍してもOKとします。自由編成方式の係活動です。1つの係を継続することにも価値がありますが、得意や好きをいかした新しいチャレンジをすることにも価値があるからです。

『やめマス』の用紙。今の係をやめて、どの係を新設、または移籍するか。新しい係でどうしたいかを記入する。これまでの係とこれからの係のメンバーからサインを得て承認される仕組みに。
今の係をやめて、どの係を新設、または移籍するか。新しい係でどうしたいかを記入する。これまでの係とこれからの係のメンバーからサインを得て承認される仕組みに。用紙のデザインは、『やめマス』のネーミングにかけて、升のデザインを採用。こういう細かいこだわりも子供が喜ぶポイントだ。

教師が、アイデアの種まきをためらわないことも大切です。

係名のみを記した一覧表を示します。しかし、具体的な仕事内容までは教師からは明言しないことが肝です。子供たちが「あんなことをやってみたい!」、「こんなことをやってみよう!」と動き出すのを待ちます。

教師が提示する新設する係活動名の一覧例。ドラマ係、天気予報係、にがおえ係、しょうせつ係などの楽しそうな名前が並ぶ。
教師が提示する係活動名の一覧(例)。名前のみ記載し、内容については触れない。

「それ、係の仕事にしたら面白そうだね」と、教師は休み時間の子供たちの何気ない「遊び」をにこにこと眺めながら声を掛け、さりげなく背中を押しましょう。

また、学級の子供たちと一緒に上学年の教室を訪れ、先輩方の係活動の様子を間近で見学させてもらいます。百聞は一見にしかず、です。

子供たちが新たなチャレンジへと身軽に動き出せる仕組みや環境を整えることが、係活動の停滞期打破には極めて大切なのです。

係活動のネーミングは学級によって様々です。私は、学習指導要領の学級活動の内容(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」と結び付けて、「会社活動」として取り組んでいます。他にも、研究所活動やサークル活動やボランタリーサービスなど、「願い」によって様々な取り組み方があります。

この「願い」を子供たちと一緒に「実感」を伴って「振り返る」機会が重要です。「言葉のお給料」と「学級通貨」という仲間からの質的・量的なフィードバックが次の活動への起爆剤となる『振り返りお給料日』についての詳細は、拙著『日常アレンジ大全』(明治図書出版)をご笑覧ください。

参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『日常アレンジ大全』(明治図書出版)

イラスト/高橋正輝

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