「学習評価」を行ううえでの重要なポイントは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#12】

連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
「学習評価」を行ううえでの重要なポイントは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#12】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

「学習評価」は学びを創造するうえで重要

前回は、主に「学習評価」の4つの機能についてご説明をしてきました。そこで、その4つの機能を踏まえたうえで、「学習評価」が実は豊かな学びを創造するうえで、とても重要だということについて、お話をしていきたいと思います。

 評価規準をいかにシャープに言語化できるか

前回、「学習評価」には、「指導と評価の一体化」「説明責任」「自己評価能力の育成」「カリキュラム評価」という四つの機能があることをご説明しました。それらを踏まえたうえで、「学習評価」を行う際に最も重要だと思うのは、評価規準(注:下段欄外参照)を精度の高いものとして言語化するということです。

「学習評価」を行うために、教育に携わる者は評価規準を設定するわけですが、その規準がぼんやりしたものだと評価はあいまいなものになってしまいます。ですから、評価規準を一定程度、精度の高いものとしていかにシャープに言語化できるかどうかが、「学習評価」を行ううえで、とても重要なポイントになってきます。

当然のことですが、「評価規準」を明確に言語化して書けるということは、目の前の子供たちの学習状況を的確に判断することに寄与します。しかし、それだけでなく、授業づくりにも有効に機能するということが大事なポイントなのです。目の前で学習している子供たちを評価するときに、評価規準が詳しく言語化されていれば、「ああ、できているな」「ここが難しそうだな」などと、より的確に判断することができるのはお分かりいただけると思います。それは目の前の子供の学習状況の判断だけに使われるだけでなく、「こういう子供になってほしい」と具体的に描くことができれば、当然、それに向かった授業づくりになるはずです。それが、「単元づくり・授業づくり」の質を高めることにつながっていくのです。

 評価規準の準備がないままの単元や授業のデザインは難しい

それは、「単元づくり・授業づくり」の仕方でお話をしたときに、まずゴールイメージや授業の出口から設計していくということとつながるのがお分かりいただけるのではないでしょうか。ここで重要なのは、ゴールのイメージや学習の出口となる子供の姿を、言語化できるかどうかということです。言葉に書けるかどうかがポイントになります。頭の中で、いくらクリアにイメージできたと思っていても、他の人と共有もできませんし、自分自身も自覚しにくいものです。しかし、文字言語に表すことによって、自分自身が描いていたものがどういうものか明確に分かりますし、他者ともシェアできます。そこに、評価規準を明確に言語化することの意味があるのです。

これについては、逆のことを言う人もいます。子供のゴールを明確に描くと、子供たちをそのレールにはめ込もうとしてしまうというのです。そのために、白紙単元という考え方もありましたが、明確なゴールのイメージがないと、どうしても這い回ってしまう危険性があります。

やはり、ゴールなり、評価規準なり、めざす子供の姿なりが、言語化して明確に描かれているがゆえに、目の前の子供たちの学習の状況が、「あ、いいな」とか、「少しおかしいぞ」と判断することができるわけです。その判断ができるからこそ、単元や授業の修正や改善ができるのです。その意味では、真っ白な状態で何も評価規準の準備がないまま単元や授業を始めるのでは、判断ができないし、単元や授業のデザインも難しいものだと思います。

「学習評価」はプロセス的なものであり、「単元づくり・授業づくり」につながる

このように、ゴールの姿(や評価規準など)を描くことによって精度の高い授業になるわけですが、絶対に避けなければならないことがあります。それは、事前に描いたものが絶対的な唯一の解であると思い込むことです。これが非常に重要なポイントで、柔軟性をもってフレキシブルに単元や授業を進めていくことが大切なのです。

例えば、「今日の授業はこれでいいだろう。子供たちの姿はこうなるだろう」と思って授業に臨むわけですが、実際にやってみたら全然、違うこともあるでしょう。それは当然のことで、事前のゴールは先生という大人の思いで描いたものですし、一方で、学ぶ子供たちの状態も日々、変化します。そうなったときに、子供の状況に応じて柔軟に方向性を変えていくという姿勢をもち続けることが重要なのです。

先ほど、ゴールを明確に描くと子供を型にはめてしまうと考える人もいるとお話ししましたが、それはゴールを描くかどうかの問題ではなく、問題なのは、子供の実態に合わせずにゴールを無理に押し付けてしまうかどうかなのです。

つまり、しっかり事前にゴールを描いたうえで精度の高い授業を進めつつ、子供の実態によってはそのゴールに拘泥せず、柔軟にゴールやアプローチを変えていくことが大切なのです。教育を担う私たちがゴールを描くことは必須ですが、そのゴールが「~せねばならない」(=must)になってしまうと、学びが子供の実態に合わないものを押し付けることになってしまい、豊かさを失う危険性が生じてしまうのです。ですから、常に先生が、「描いていたものは状況によって変わるし、ひょっとしたら自分の考え通りにはいかないかもしれない」と、思っていられればよいのだと思います。

見取った子供の学びの状況に応じて、ゴールやアプローチを柔軟に変えることも必要。
見とった子供の学びの状況に応じて、ゴールやアプローチを柔軟に変えることも必要。

そう考えてみると、ゴールから構想していく「単元づくり・授業づくり」は、評価していくことの意味や価値、評価する行為の大切さに気付かせてくれるのではないでしょうか。実は、そう考えながら実践していくことが、常に単元や授業の改善にもつながっていくものであり、行きつ戻りつしながら、カリキュラムや計画の改善にもつながっていくのです。

前回お話をした通り、これまでの「学習評価」は、結果やプロダクト(生成物)というイメージにつながってしまいがちです。しかし、ここまでお話をしてきたとおり、「学習評価」はもっとプロセスを大切にしたものであり、「単元づくり・授業づくり」につながるということが分かっていただければ、先生方の評価に対するイメージも変わるのではないかと思います。

さて、では次回、「単元づくり・授業づくり」を豊かにする評価規準の設定の仕方について、具体的にお話をしていきたいと思います。

欄外注:「評価きじゅん」という言葉には、評価規準と評価基準という2つの表記があります。評価規準は一定の水準を示したもので、国が示している学習指導要領もこの評価規準になります。評価基準は階層化して設定されたもので、ルーブリックなどがそれです。

【田村学流「単元づくり・授業づくり」】次回は7月8日公開予定です。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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