何のためにを考える〈前編〉【伸びる教師 伸びない教師 第19回】

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栃木県公立小学校校長

平塚昭仁
何のためにを考える〈前編〉【伸びる教師 伸びない教師 第19回】

今回は、「物事に取り組むときに目的を考えること」を前後編に分けて紹介します。前編は、家庭訪問の目的を考えた出来事の話です。豊富な経験で培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする平塚先生の人気連載です。
※本記事は、第19回の前編です。

プロフィール
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)

栃木県上三川町立明治小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を歴任。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。

伸びる教師は、物事に取り組むとき「何のために」と考え、伸びない教師は疑いなく取り組む。

10秒を短縮する理由とは

先日、避難訓練で全校児童にこんな話をしました。

「今日の避難にかかった時間は〇分〇秒です。あと10秒減らせます。避難した時に『まっすぐ並んでー』って担任の先生に言われていたでしょ。あの時間を減らせると思います。体育の時にきちんと整列する練習をしているのは、こうした緊急時に素早く並べるようにするためでもあるんです」

避難の集合時に人数確認を10秒早く行えれば、万が一逃げ遅れた子供がいたとしても10秒早く助けに行くことができます。特に火災の場合はその10秒が命取りになることもあります。

体育ではこうした非常時も想定して、集団行動の中で素早く整列できることや的確に行動できることを指導しています。「運動会で集団行動するからいいや」とか「戦時中みたいであまり好きじゃない」等の理由で積極的に指導しない先生を見かけることがありますが、こうした「何のために」という視点をもつことが大切です。

イラスト

「何のために」という視点をもつ

この「何のために」という視点は、物事を判断するときの基準にもなります。

例えば、コロナ禍の中、学校行事等の見直しが図られていますが、本校では、そのひとつに家庭訪問が挙げられました。まずは、家庭訪問は「何のために」行っているのか、目的を確認しました。

1 家の場所を確認する。
2 通学路の安全確認をする。
3 保護者との情報交換等で子供の理解を深める。

次に、この目的を他の方法で達成できないか検討しました。

【家の場所を確認する】
「家の中まで入らなくても家の場所の確認をすることができる」
「地図、ネット上、カーナビでも確認ができる」
【通学路の安全確認】
「通学路の安全点検は、月に1度、下校指導の際に行っている」
「保護者にも年に1度通学路の安全点検をしてもらっている」
【保護者との情報交換等で子供の理解を深める】
「個人懇談で保護者と情報交換をすれば子供の理解を深めることができる」

最終的に、家庭訪問の目的は他の方法で達成できるという結論に達し、次年度からは個人懇談に替えることになりました。実際に家庭を訪問しないため大幅な時間的余裕が生まれました。

このように「何のために」という視点で、自分の仕事や授業、学校生活を見渡してみると、変えられることや新しいアイデアが出てくるかもしれません。

構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ

「何のためにを考える」〈後編〉へ続く

※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。

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