不登校の子どもが求めているものとは?【ギフ寺始動の秘密②】

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前回、知能が高く繊細なギフテッドは、「自分は“ふつう”じゃない」と、異質感を訴えて、学校に行けなくなる子も多いと伺いました。

そんな子ども達への支援について、ギフ寺の「住職」こと、ギフテッド・LD発達援助センター主宰の小泉雅彦先生にお話を伺いました。

全国から相談が寄せられるように

― ギフテッドに特化した支援は、どんな経緯で始められたのですか?

2014年に、北大で「読み書き困難を持つ知的ギフテッドの支援」という論文を発表した後くらいからでしょうか。全国の保護者から相談が寄せられるようになりました。

小泉先生の論文は、「北海道大学学術成果コレクション」で読むことができます。下記のリストには、論文へ直接辿り着けるリンクが貼ってあります。

小泉先生の論文紹介

  1. “軽度”発達障害を持つ子どもたちの支援 その3 : 北海道大学土曜教室の学び
  2. 軽度発達障害児への教育的支援 : 土曜教室における支援を通して特別支援教育を考える
  3. 読み書き困難を持つ知的ギフテッドの支援
  4. 認知機能にアンバランスを抱えるこどもの「生きづらさ」と教育

(北海道大学学術成果コレクションより筆者抜粋)

相談の目的は、主に4つ

― 「北海道大学学術成果コレクション」の「よく読まれる文献」で検索すると、小泉先生の論文は上位に入っています論文への注目度の高さから、保護者が切実に困っている様子を感じます

相談を寄せられる方の中には、関東圏や沖縄などの遠方から、北海道まで足を運んでくれるケースも複数ありました。 多くのケースは、他機関に行って診断やアドバイスを受けているため、ほとんどの方がセカンドオピニオンです。

2017年からは、相談シートを活用して相談に取り組んでいます。相談シートには必ず相談の目的を書いてもらっていますが、多くの保護者からの相談目的は、主に次の4つになります。

【小泉先生への相談の目的は4つ】

  1. 子どもの特性を理解し、必要な支援を知りたい
  2. このようなタイプの子どもの育ちを知りたい。将来のこと、など
  3. WISC-IVの結果の説明を、きちんと聞きたい
  4. 理解してくれる大人との出会い / 理解してくれる人に検査をしてほしい

(『ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法』より筆者抜粋)

保護者の方は、日々の子の言動に対して「なぜ?」「どうして?」という気持ちを抱え、子どもを理解しきれないもどかしさを抱えています。少しでも、子どもを理解し、支えるきっかけになればとの保護者の想いが伝わってきます。

子どもたちが求めているのは、「柔軟な関係性」

― 小泉先生の活動場所は、お住まいのある北海道だけですか?

コロナ前は、本州に呼ばれて講演をすることもありました。本州に行く際には、子どもたちとの活動を楽しむようにしていました。関西では嵐山でお花見をしたり、王子動物園(有馬温泉)に行ったり、関東では高尾山(高尾温泉)、日光東照宮にも行きました。今年(2022年)の5月には、東京スカイツリーに子どもたちと一緒に登った後、もんじゃ焼きを一緒に食べました。

いつの間にか小さなお友達も増え、関西や関東のメンバーが、私が支援に関わっている「ぷりずむ」(旭川学習障害児親の会)のキャンプに遊びに来てくれて一緒に登山をしたこともあります。

 なぜ、相談活動だけでなくアクティビティをされるのでしょうか?

最初の嵐山のお花見の時に、「花見という『ゆるい場』だからできることって、あるのかもしれないな」と、思ったんです。学校や相談の場では、なかなか子どもの本音は引き出せません。

子どもたちから求められているのは、「縦の関係」ではなく、時には横になったり、必要に応じて縦になったりする柔軟な関係性なのかなと感じます。

ギフ寺づくり

また、その時に「始動をする場所がないと、支援ができない」と、妙にこだわりすぎていたなという気づきもありました。一方で、子どもや保護者が行くところがなくなった時に、訪ねていける場所があると良いなという漠然とした気持ちもありました。

― 行くところがなくなった時…。ギフテッドが置かれている厳しい状況が伺われるワードです

ギフテッドの勉強会や相談会を重ねながら、少しずつ保護者や子どもたちとのネットワークが形成されるようになり、最初は登山からスタートして、保護者と一緒にボードゲーム大会に取り組むようになりました。

ボードゲーム大会の回を重ねたある日、ゲームを終えた後、ランチをとりに北大の学食に行った際に、食事を食べ終わった後も子ども達は秘密基地の話で盛り上がっていました。その時、子どもの一人が描いたのが下の絵です。

― 秘密基地の絵、ワクワクします

それぞれの部屋には持ち主がいて、中央下段の部屋には「このへやはいることがふかのうだ(なかまいがい)」と書かれていました。子どもたちは、仲間たちとの秘密基地(居場所)を求めていたのでしょうか。

小泉 : その様子を見ながら、子どもたちの関係性が育っているのを実感し、そこに寺子屋(コミュニティ)をつくる意味を感じました。それがギフ寺を立ち上げようと思ったきっかけです。

ギフ寺始動の話(全3回)
次回、「第3回 ギフテッドのコミュニティに行ってみた」の公開予定は、6月21日(火)です。 

小泉雅彦(こいずみまさひこ)
ギフテッド・LD発達援助センター主宰。ギフ寺住職。北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程単位修得退学。専門は特別支援教育、認知心理学。

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