「願いごと」と「合言葉」でインパクト大の3D学級目標【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】②
1年生の子供たちは、初めて集団活動を体験します。主体的・対話的な態度を育てるとともに、子供同士をつなぎ、よりよい人間関係を築きましょう。この連載では、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)や『教室ギア55』(東洋館出版社)などのヒット著者の鈴木優太先生が、小1「特別活動」のさまざまなアイデアを紹介していきます。
第2回のテーマは、「学級目標」です。「目標づくりの活動」の3つの手順から、子供たちの視覚にも心にも訴える3D掲示物の作り方までレクチャーします。
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書)など、著書多数。
目次
個人目標をつくってから学級目標をつくろう
「一人一人の自己実現(個人目標)を達成できる集団の道しるべ」が、「学級目標」です。
そのため、
個人目標をつくる
↓
学級目標をつくる
この順序で行うことが望ましいと考えます。
4月につくらないといけないというものではありません。何月につくってもよいものです◎ また、達成できた目標は何度でもアップデートしてよいものです◎
次の手順で、願いの込もった学級目標づくりにチャレンジしましょう。
「目標づくりの活動」3つの手順
個人目標と学級目標に共通する「目標づくりのコツ」は3つです。
①1週間前から告知する
②「願いごと」をなるべく多く出し合い共有する
③「選び」or「合言葉でまとめる」
まずは「目標」という言葉をしっかり教えます。その際に、「目標」よりも「願いごと」というキラーフレーズを用いた方が、1年生では親しみやすくアイデアが出やすいものです。
〇日(今年度の残りの登校日数)後に、どんな2年生になっていたい? 願いごとを、1週間後になるべくたくさん聞かせてくださいね。
このように、1週間前には遅くとも告知を始めましょう。
3日前、2日前、前日、当日の朝…アナウンスを続け、目標づくりモードの頭で本時を迎えます。
「目標づくりの活動」は、3つの手順で行います。
①要約までペアトーク
②出席番号リレー発表&教師は板書
※①~②を数回繰り返す
③目標を決定し、掲示物を作る
①要約までペアトーク
①『要約までペアトーク』(連載第1回参照)は、「ABCペア」(Aペア…隣の座席、Bペア…前後の座席、Cペア…斜めの座席)になって、聞き手と話し手に分かれて、10秒間×3人とペアトークを行います。
タイマーが鳴ったら、聞き手は、「つまり、〇〇さんの願いごとは☆☆ですね」と要約します。
短く、テンポよく進め、温かな拍手で聞き手と話し手を交替することがコツです。
②出席番号リレー発表&教師は板書
②『出席番号リレー』は、子供たちが出席番号順に呼名し合って、リレーのように、自分の願いごと発表していきます。『健康観察リレー』(連載第1回参照)の要領です。
子供たちは、一人1つ、テンポよく、全員が、次々と発表します。教師は、短い言葉で板書します。
「パスします」もOKです。出席番号末尾の子の後にリトライできますが、2回目もパスをしてもかまいません。最後の一人まで回ったら、全員が全員に拍手をして締めくくります。
2つの活動を2回、3回と繰り返しましょう。友達の考えを聞いて、よりよい考えに変わっていきます。パスをしていた子も友達の真似をして言えるようになっていきます。一人一人の願いに心を傾けて聴き合うのです。
③目標を決定し、掲示物を作る
個人目標は選び、カードや短冊などの掲示物を作る
①~②を繰り返した後、個人目標は「選びます」。そして、星型やハート型のカードや短冊などの掲示物を作ります。
一番ぴったりな願いごとを選びましょう。
板書されたたくさんの願いごとの中から、子供たちは個人目標を選び、一人一人がその場所に『名前マグネット』を貼ります。
板書を参考に、子供たちは短冊に書く挑戦をします。教師が転記してもかまいません。
完成した短冊を持って『出席番号リレー』で発表し、それを動画に撮影するのもおすすめです。短冊や動画は、学期途中や学期末の振り返りのときに見返すことで成長を実感できます。
学級目標は合言葉でまとめ、象徴的な掲示物を作る
教室に掲示している個人目標を書いたカードや短冊の前で、次のように子供たちに語りかけます。
一人一人の願いごと(個人目標)が達成できる1年1組ってどんなクラスかな? 〇〇なクラスという願いごとを1週間後に聞かせてくださいね。
学級目標づくりの当日は、個人目標を書いた短冊を黒板の半分に貼り出します。
『要約までペアトーク』と『出席番号リレー』を行って、「〇〇なクラス」というクラスへの願いごとを出し合い、教師が黒板のもう半分に板書します。ここまでは、個人目標づくりと同じ展開です。
「一人一人の願いごと」と「クラスへの願いごと」が黒板上に集まったら、教師は次のように問いかけます。
この願いごとが全部叶うような、1年1組のゴールの姿にふさわしい合言葉ってないかな?
「合言葉」というキラーフレーズを用いて、多様な「願いごと」を集約するのです。
例えば、「お弁当」という合言葉のクラスがありました。一人一人のいいところを認め合えるクラスにしたいからです。ほかにも。「思い出」とか「ニコニコ太陽」とか…楽しい合言葉を決めたクラスがありましたよ。
どんな合言葉になっても、込められた願いが子供たちの間で共有されていれば、ふさわしい学級目標として育っていきます。 願いが教室に満ち満ちている中でひらめき、決めた合言葉には魂が宿ります。
言葉を組み合わせた長~~いスローガンは避けましょう。印象に残らず、結果的に形だけの飾り物になってしまうからです。
収束場面では、瞬発力も大切です。
☆☆という意見が出ましたが、みなさんどうしたいですか?
教師はよき司会役のモデルとして、意図的指名や挙手指名を用いて、一部の子の意見も全体に問い返しながら、賛成意見を中心に話合いをまとめます。
何だかいい感じがしていますが、みなさん納得できそうですか? それでは、1年1組の学級目標は「〇〇〇〇」に決定します。拍手~!
掲示物は、全員で分担して作ります。マスコットキャラクターを作成するなど、子供たちからデザインを募集しましょう。
丸めた新聞紙をのり付けし、その上に色紙を包み込むように貼ることで、下記写真のように、平面の掲示物が「立体的」に変身します。キーワードやクラスのシンボルが華やかに印象付きます。
また、掲示物の上方部分を天井、下方部分を壁と「傾斜」をつけて掲示することで、飛び出してくる印象の掲示物になります。のり(接着剤)やテープ類を惜しまず、全員の力を合わせて頑丈に作ることで、1年間掲示し続けてもメンテナンスいらずです。
「3D」にすることでインパクト大です◎
「学級目標」を拠り所とした学級活動を展開していくことで、形だけの飾り物にはなりません。
参照:鈴木優太著『日常アレンジ大全』(明治図書)
イラスト/高橋正輝