#17 絶対になくてはならない大切な心【連続小説 ロベルト先生!】

連載
ある六年生学級の1年を描く連続小説「ロベルト先生 すべてはつながっています!」

前文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官/十文字学園女子大学教育人文学部児童教育学科 教授

浅見哲也

今回は、終業式のあと通知表を一人一人手渡しするシーン。夏休み、子どもも教師もほっと一息!ですね。

第17話 1学期終業式

ロベルト先生と青田君

「やったー!」

子どもたちに歓喜の声が上がった。夏休みに入る前の最終練習で、ついに長縄跳びは700回を超えた。1分間に100回ペースで7分間集中を切らさずに跳び続けることができた証である。

初めての記録285回の約3倍。子どもたちの力は本当にすごい。

そして、1学期の終業式を迎えた。子どもたちには、私から1学期の評価とも言える通知表を一人一人に言葉を添えて手渡した。

「青田浩くん、最初の自己紹介から始まり、名前の順でなんでも最初にやるのは大変だったと思うけど、いつも青田くんがよいお手本を見せてくれるから、みんなも助かっていると思うよ。(内緒話のような小さな声で)だけどね、一番勉強になっているのは青田くんなんだよ。そのことにみんなは気づいていないから、内緒にしておこう!」

「木村加奈子さん、長縄跳びが上手に跳べるようになってきたね。正直言って、先生はちょっと無理かな、なんて思ったこともあったけれど、加奈子ちゃんのがんばりにはびっくりしたよ。その調子で、何事も努力していこうね!」

また、学期の終わりという節目で、これまで1学期の子どもたちのがんばりを認めるために、皆勤賞、漢字博士賞、宿題努力賞など、ミニ賞状を作って表彰した。これは、子どもたちにとって、通知表ではなかなか評価しきれない真面目さを評価できる、言わば、努力の結晶の証である。

通知表やミニ賞状を渡し終わった時に、私は、子どもたちに伝えた。

「今、皆さんに通知表を渡しました。それぞれの教科に◎や○、△が付いていますが、これによって、皆さんの人間の価値が決まってしまうわけではありません。

たとえ勉強がよくできたって、人に挨拶ができなかったり、親切にできなかったりしては、何にもなりません。

ただ、勉強に対して、授業中に積極的に手を挙げたり、テストで高得点を取ったり、宿題などをきちんと期限を守って提出できたりした人は、通知表もよかったと思います。

特に一学期は、『真面目』をテーマにして取り組んできました。そして、勉強や運動、普段の生活の中で真面目さを発揮する子が増えてきました。宿題を毎日欠かさず提出したり、掃除をきちんとやったりできる子が増えています。

そして、真面目さの一つの証がミニ賞状です。賞状がもらえた人は、自分の真面目さを褒めてあげてください。

また、地道な練習の成果は、長縄跳びの記録にも表れています。この真面目さは、人には絶対になくてはならない大切な心です。

これからも、自分の真面目さを揺るぎないものにしていってくださいね。夏休みが自分の真面目さを試すよい機会にもなりますよ」

こうして、1学期の終業式を終え、約40日間の夏休みに入った。

正直に言うと、夏休みを楽しみにしているのは子どもたちばかりではない。教師もしかりである。毎日分刻みで子どもたちとともに過ごしている私たち教師にとっては、ふうっと、一息つける充電期間なのである。

ちょうど7月の国語で「短歌と俳句」を学習していた。

そこで一句…

「夏休み 何をするかと 考えて 思いにふけるが いちばん楽し」

作者 朝見呂部留都徹夜

次回へ続く


執筆/浅見哲也(文科省教科調査官)、画/小野理奈


浅見哲也先生

浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追求中。

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