クラスの雰囲気を良くするポジティブメッセージの具体例

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学級がぎすぎすしている――それは、教師が発するポジティブメッセージが足りないのかもしれません。まずは教師が手本を示し、スモールステップで子ども同士がほめ言葉を送り合う活動を増やしていくことが大切です。徐々に学級の空気が温かく変化することでしょう。

執筆/鳥取県公立小学校教諭・小川夕起子

小川夕起子●1960年生まれ。教員キャリアの3分の1は一年生を担任している。2016年に菊池省三先生のセミナーに参加して衝撃を受け、「ほめ言葉のシャワー」等の実践を追試している。

教室でのほめ言葉のシャワー

教室に溢れさせようポジティブメッセージ!

11月は、学習発表会や音楽会などの大きな行事がある学校が多いかもしれません。1年間の折り返しが過ぎ、新学期が始まってから日数が経っているので、「めあてを持って、頑張るぞ」という気持ちや、「教室を温かい言葉で溢れさせたい」という意識がだんだん薄れていってしまいがちです。ふと気が付くと、教師自身も「行事に追われている」「ついつい、子どもたちのできていないことばかりに目が向いてしまう」ことが増え、マイナスの言葉やメッセージを発信してしまっていないでしょうか。

プラスの言葉が溢れているか、マイナスの言葉が溢れているかによって、教室の空気は全く変わります。よく「言葉は人を育てる」と言われます。「言葉」を大事にしながら、成長に向かっていく、そんな教室を目指したいものです。

そのためには、まずは教師が、「大丈夫だよ」と一人一人を温かく受け止め、プラスの言葉をかけてあげましょう。子どもたちのよさや頑張りをほめて認めて、「よいこと」「価値あること」のプラスの見本を示していくのです。

子ども同士の横のつながりを大切にし、ポジティブなメッセージを伝え合うことで、教室の空気を変えていきましょう。そして、教室を安心できる場にしていきましょう。

教室に溢れさせたい言葉をみんなで考えよう

3月の修了式まであと約5か月。自分たちは教室の中でどんな言葉を使っているか、もう一度みんなで振り返ってみましょう。ポジティブなメッセージを交換するためにも、まず自分たちが普段生活の中で使っている言葉について考えていくことが大事です。アンケートをとったり、話し合ったりして、「教室に溢れさせたい言葉」「教室からなくしたい言葉」を、みんなで出し合いましょう。

小川学級の子どもたちが考えた「教室にあふれさせたい言葉」「なくしたい言葉」

まず、教室からどんな言葉をなくしたいか考えさせます。「ばか」「きらい」「あそばない」などの、心が悲しく痛くなる「ちくちく言葉」を教室からなくしたいという思いを持ちます。

そこで、次は「教室にどんな言葉を溢れさせたい?」と尋ねると、「言われて心が温かくなる言葉」「やさしい言葉」「言われると元気が出る言葉」「友達のことを思っている言葉」「にこにこ笑顔になる言葉」と、子どもたちは返してくれるでしょう。

では具体的にどんな言葉を溢れさせていきたいか、みんなで考えていきます。「ありがとう」「いいね」「だいじょうぶ」「がんばっているね」「すてきだね」「どういたしまして」「だいすき」など、心が温かくなるような「ふわふわ言葉」「プラスの言葉」をたくさん見つけようとします。

子どもたちに、教室に溢れさせたい言葉を黒板にどんどん書かせてみることもお勧めです。班ごとにチョークで書いたり、カードに書いて貼ったりしていきます。黒板一面が温かい言葉で埋め尽くされます。黒板いっぱいにプラスの言葉が広がっていきます。そうすることで、「こんな言葉が教室に溢れるといいな」という思いをしっかり持てるようになるでしょう。

最後に友達とペアになって、早速それらの言葉を使ってみましょう。自分たちが思いを込めた言葉を忘れず、常に意識できるよう、ベスト5を決めて掲示しておくのもよいですね。

教師から子どもたちへのポジティブメッセージ

プラスの言葉が溢れる教室にするには、まず教師から子どもたちへポジティブなメッセージを届けましょう。子どもたちの姿をしっかりと見て、その子の一瞬の動きの中からよさを見いだし、プラスの言葉にして伝えていきます。ほめて認めて励ましていきましょう。

きらりと光る子どもの姿を写真と言葉で伝えよう

まずは、子どもたちの様子をじっくり見て、「きらりと光る」行動を見つけることが大切です。メモしたり、写真に撮ったりしておき、黒板に写真を貼って、学級のみんなに紹介します。例えば、「みんなの目線が揃っていて、目力がありますね」「誰も気付かないような汚れを一人で一生懸命拭いていますね。一人でも頑張る力がありますね」「笑顔がいいですね。にこにこ笑顔力ですね」「○○さんから△△さんへの、優しさのリレーですね」などです。

先生から子どもたちへのポジティブメッセージ板書
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このように、どんなところが「きらりと光る」のかを教師が説明したり、子どもたちに考えさせたりします。そして、そこに写っている子どもたちにみんなで拍手を送ります。

子どもたちの成長が感じられる一瞬を捉えた写真や言葉を示していくことで、ポジティブな言葉、価値ある言葉が溢れる教室になっていきます。子どもたちの考え方や行動をプラスに導く言葉を、子どもたちの心の中に届かせるようにしていきます。

学級の足跡を残していく学級のあゆみの掲示にも、キーワードになる言葉を付け加えてみましょう。子どもが見せるきらりと光る行動を見逃さず、その行動を意味付け価値付けし、心を込めてほめるようにしていきましょう。

ほめ言葉を黒板メッセージで伝えよう

朝、子どもたちが登校してきた時、最初に見るのが教室の黒板です。そこで、担任からのメッセージを黒板に書いてみてはどうでしょうか。昨日の頑張りを写真や言葉で示したり、今日みんなに伝えたいことを一言書いたりしてみましょう。また、節目となる時にも、教師から子どもたち一人一人へのメッセージを送りましょう。

きらりと光るポイントを板書にする
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行事の前後などに行うと効果があります。黒板に学級全員の子どもたちのネームプレートを貼って、その下に一人一人のよさや頑張りを書いていきます。それには、教師が一人一人の子どもたちを普段からしっかり見ておく必要があります。教室に入り、先生からのメッセージを読んで笑顔になる子どもたち。できれば、書いて終わりではなく、朝の会などで、一人ずつ読み上げて、全員でその子に拍手を送りましょう。笑顔が倍増します。

子どもが見せる「きらりと光る行動」を見逃さず、教師が心を込めてほめるようにしていくとよいですね。どこの教室にもある黒板に、ちょっとした工夫を加えると、子どもたちもわくわくしながら登校してくるはずです。

連絡帳への一言メッセージ

日々の学校生活の中で毎日書くものに、連絡帳があります。宿題や持ち物、連絡を書きますが、最後に子どもたちが一言書くことを習慣にしてみましょう。

連絡帳に教師の心のこもった一筆を入れる

連絡の後に、今日の自分の頑張りを書きます。自分へのほめ言葉です。1~3文の短い文ですが、毎日書くことで、日々の成長の様子を振り返ることができます。保護者の方に学校での様子を知ってもらい、家庭での会話のきっかけにもなります。子どもが書いた後には、教師からの一言メッセージを朱書きします。たくさん書こうと思うと続かないので、短い言葉で励ましのメッセージを書いてみましょう。その一言が、子どもの心に響くのです。

時には、それに対する保護者の方からの嬉しいメッセージが返ってくることがあります。短いメッセージですが、毎日続けることで年間200のメッセージが残されることになります。一言メッセージ、続けてみませんか。

子ども同士で送り合うポジティブメッセージ

教師と子どもがつながるのが、主に一学期だとしたら、二学期は子ども同士をつないでいきましょう。そのためには、子ども中心の活動を増やしていくことがお勧めです。そして、子ども同士の、動きのある対話や話合いを通して、コミュニケーション力を高めていきましょう。

子ども同士の横のつながりをつくるために、ポジティブメッセージを交換し合う様々な場面を紹介します。

健康観察にひと工夫を「今日もよろしく」のメッセージ

毎朝、朝の会で行うことに「健康観察」があります。教師が名前を呼んだら、呼ばれた子は「はい、元気です」と返事をするのが、一般的な健康観察の光景だと思います。そこに、少しだけポジティブなメッセージを届けられるような工夫をします。

健康観察でみんなで「OK」のポジティブなメッセージを送る

名前を呼ばれた子が「はい、元気です」と言ったら、学級全員がその子の方を向き、その子の顔を見て手を叩きながらリズムよく「OK!」と反応します。「今日も元気に来てくれてありがとう。今日もよろしくね」の気持ちを込めて伝え合います。「はい、風邪をひいています」の時は、みんなで「早く元気になってください」と言います。欠席の友達がた時は、その子の家の方角を向いて、同じように言います。

ほんの一言付け加えるだけですが、同じ学級の友達に対する思いが変わってきます。一人一人を大事にすることを、朝から意識させていきます。
 
最後は、司会をしている日直が、健康観察の時によかった友達を紹介します。「○○さんはとてもよい姿勢でした」「□□さんは、友達の方にまっ先に顔を向けていてよかったです」というように紹介して、その友達に向けてみんなで大きな拍手を送ります。

帰りの会で今日の主人公に行う「ほめ言葉のシャワー」

「ほめ言葉のシャワー」とは、一人一人のよいところを全員で見つけ合い、伝え合う活動です。今日の主人公を決めて、シャワーのように「ほめ言葉」や「温かい言葉」を浴びせていきます。下記のように少しずつ段階を踏んで始めていきましょう。

第1段階
隣の席の友達に「~してくれてありがとう」「~を頑張っていたね」と言葉で伝え合い、握手をすることを続けます。
第2段階
班ごとに一人ずつ「今日の主人公」を決め、班の前に立ってもらいます。順番に班のみんながその友達のよいところ、頑張っていたこと、されて嬉しかったことなどを伝えます。
第3段階
一日一人の主人公を決めます。学級みんなでその一人の主人公のよさを見つけます。帰りの会で今日の主人公はみんなの前に立ち、学級のみんなは席順や自由起立で、主人公に「ほめ言葉」を伝えていきます。「友達のきらりと輝くよさを見つけよう」を合言葉に、伝え合います。

第3段階では、ほめられる主人公はほめてくれる相手をしっかりと見ながら聞き、最後に相手に「ありがとう」を言って握手をします。全員の「ほめ言葉」が終わったら、主人公はお礼と感想を言い、全員で拍手をして終わります。今日一日、その友達のことをよく見て、自分だけが見つけた「きらりと光る」友達のよさを具体的に伝えられるといいですね。

「ほめ言葉のシャワー」第1段階の様子。隣同士でよいところを伝え合い、握手して終える
「ほめ言葉のシャワー」第1段階の様子。隣同士でよいところを伝え合い、握手して終える

この活動は帰りの会に限らず、授業や活動の振り返りの時間に行うこともできます。

ほめ合う心地よさを経験した子どもたちは、日常のいろいろな場面でほめ合う活動をするようになります。

席替えの前の「ありがとうメッセージ」

子ども同士の横糸をつなぎ、ポジティブなメッセージが飛び交う場面として、席替えの前に行う「ありがとうメッセージ」の交換があります。隣同士や同じ班で生活したり勉強したりしてきた友達に「ありがとう」の気持ちや、自分の見つけたその友達のよさを、付箋などの小さいメモ用紙に書いて交換します。

席替え前に隣の友達と言葉のプレゼントを送り合う

子どもたちは「言葉のプレゼント」をもらって、お互いが温かい気持ちになります。交換する時も、ただ渡すのではなく、目と目を合わせて声に出してそのメッセージを読み、「ありがとう」と言って握手をしながら手渡しします。「○か月一緒に過ごした隣の友達、同じ班の友達との楽しくわくわくした思い出を大切にしましょう。そして、これからもよくしていきましょう」と教師からもメッセージを送ります。

そのカードはノートに貼って、もらった時の気持ちを書き留めておくのもよいでしょう

この活動を行った後、子どもたちからは「心が温かくなったよ」「友達ともっと仲良くなれるよ」「もっと友達のよいところを見つけたいな」と言う声がたくさん聞かれることでしょう。それが終わると、席替えをして新しい班の友達と新しい気持ちで再スタートします。

友達のノートに学ぼう

ポジティブメッセージ交換は、授業の中でも積極的に取り入れてみましょう。この時期、一年生はノートの使い方にも慣れ、長い文も少しずつ書くことができるようになっています。二年生は図や絵を描いたり、自分で説明を書いたりできるようになります。そこで、友達とノートを見合う時間を設けてみましょう。「算数ノート」「道徳ノート」など、見合うノートを決めて、自分の一番自信のあるページを開いて、机の上に置きます。自由に席を立って、みんなのノートを見て回ります。友達のノートの中から、「いいな」「すごいな」「分かりやすいな」「真似したいな」というノートを見つけ、ミニシールを貼ります。最後は全員が集合して、「わたしのおすすめの友達のノート」を紹介します。その時、お薦めのポイントも言えるとよいですね。ノートの持ち主と、紹介した子で握手をし、みんなで大きな拍手を送ります。

選ばれたノートをコピーして教室に掲示し、教師からどんな点がよいか朱書きのコメントを入れてもよいでしょう。

行事の後には、頑張ったことを伝え合おう

学習発表会などの大きな学校行事も、子どもたちを成長させる大きなチャンスです。「友達と協力する力」「大きな声を出す力」「諦めない心」「一生懸命する力」「思いやり力」など、行事を通してどんな力が付いたか出し合ってみましょう。

友達とペアになって、お互いが自分の見つけた「友達の頑張っていた様子」を伝え合う活動を入れると、より一層成長を感じられるようになります。活動の最後に、練習から本番までの自分の成長を作文に書く活動を取り入れます。保護者の方からも一言感想を書いていただくと、さらに大きな励みになります。

係活動で子ども同士のメッセージ・賞状・メダル

小川学級の子どもが作った賞状の一例と、音楽係がいつも大きな声で歌う子を表彰する

低学年の係活動というと、当番活動的な仕事が多いのですが、「子どもたちが主体となって楽しく創意工夫しながらクラスを明るくする」係活動を目指していくとよいでしょう。日々のほめ合う活動を生かして、頑張っている友達に賞状やメダルを送ったりする場面が生まれてきます。お楽しみ会のプログラムの中にもポジティブメッセージを送り合うような場面が組み込まれていくようになります。

イラスト/若泉さな絵

『教育技術 小一小二』2019年11月号より

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