ぬまっち流「学年末にボクが子供たちに伝えること」|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
子供の自主性を引き出す、斬新でユニークな授業・実践に注目が集まるカリスマ教師「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生。
今回は沼田先生が学年末にどんなことを子供たちに伝え、次の学年に送り出しているのか聞いてみました。
目次
世界一のクラスになった子供たちに、ボクが伝えること
ボクは新年度、始業式の日に子供たちに自己紹介した後、「このクラスを世界一のクラスにします」と宣言する。そして、一年間かけて世界一楽しいクラスを目指していろいろなことにチャレンジしていく。
そして三学期、世界一のクラスになった子供たちには、「このクラスは世界一だ。だからこそ、来年度はこのクラスを越える最高のクラスをつくってほしい」と伝える。
「いまはこのクラスが世界一のクラスだ。でもボクは来年度もっといいクラスをつくるし、その次の年はもっともっといいクラスをつくる。だから君たちもこのクラスを越えるクラスをつくってほしい。『四年生より五年生がよかった』『五年生より六年生がよかった』と毎年言えないとだめだ」と伝える。
子供たちには、どんどん人間としてレベルアップしてもらいたいからね。
ポジティブに生きるためのヒントを与える
ただし、クラスを巣立つ子供たちに、やみくもに「これからもがんばれ」と言って送り出すのは、ちょっと違うかもしれないと最近思うようになってきた。
子供がクラスの中でそばにいるときには、「がんばれ」と励ますし、がんばれない時にはサポートができる。でも巣立ってしまったら、いつもそばでサポートできるとは限らない。
だから「がんばれよ」と言うよりも、物事との向き合い方へのヒントを与えたいと思っている。
例えば、「人生はいろいろあるから、いいことばっかりではないし、悪いことは必ず起きる。でも、悪いことも見方を変えればいいことになることがあるし、それが次の成功の糧になることもある。だから、悪いことがあったら、いいことの始まりだと思うようにしよう」と伝えたい。
さらに、人は悪いところはすぐに目に入るけれど、よいところは”アタリマエ”になってしまっているので、意識しないと見えてこない。だからいろんなことがあっても、いろいろな人に出会っても、「よいところ」を見つけるようになってほしいと伝えるようにしている。
教師にとっても、「よいところ」を見つける視点は重要
「よいところを見る」視点は、教師にとってもとても重要だよね。
ボクは学年末になると、その年に自分が担任したクラスが今までで一番いいクラスだと思ってきた。「今年もすごくよい子供たちに当たってラッキーだな」と本気で思える。
でもそれは、過去と比べたりせず、毎年目の前の子供たち一人ひとりのよさに目を向けて、クラスのよさを引き出そうとしてきたからだと思う。
実は、2019年に初めて小一の担任になったときは、かなり不安だった。
それまでずっと中学年以上のクラスを担当してきたし、低学年では自分が今まで取り組んできた実践アイデアがすべて使えないと思ったから。
実際、クラスがスタートすると、ボクの指示はほとんど子供たちに通らないし、自分で考えさせて子供にプレゼンさせるなど、ボクが得意とする授業は全然できない。
初めはストレスもあったけれど、さまざまな工夫を凝らすことで、自分の教師としての引き出しが増えるし、どんどんクラスが成長していることもわかり、一学期の後半からは毎日がものすごく楽しくなってきた。もちろん、高学年と比べたらできないこともたくさんあるけれど、「一年生でもこんなにできるんだ」と自分にとってたくさんの発見があった。
そしてやはり三学期には、心から「世界一のクラス」だと思ったよ。子供たちと一緒に二年生に持ち上がりたいと思っていたのに、願い叶わず、がっかりしたくらい(笑)。
先生も、学年末に一年をふり返ると、反省することは多々あるだろうし、とてもよいクラスになったとしても、新年度の新しいクラスには不安を感じることもあるだろう。
でも大事なことは、自分が担任する子供たちを心から信頼すること。絶対に人間は成長できると信じること。そして、どんな時でも子供たちのよさに目を向けることだと思う。
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沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『板書で分かる世界一のクラスの作り方 ぬまっちの1年生奮闘記 』(中央公論新社)他。 沼田先生のオンラインサロンはこちら>> https://lounge.dmm.com/detail/2955/
取材・構成・文/出浦文絵