教師の「話す技術」をアップする古舘式トレーニング法【動画】
自分の「口癖」、知っていますか? 授業や学校生活の中での説明や指示は、子供たちにとって聞きやすく伝わる力を持っているでしょうか? 自らの体験に裏打ちされた教育哲学と再現性の高いスキルをTwitter(@YoshiJunF)で発信し、若手教師を励まし続ける古舘良純先生からの今回の提案は、言葉の力を最大限に活かして授業に役立てる「話し方」の訓練です。
目次
1. 話し始めるときに言いがちな4つの言葉
「はい」
「じゃあ」
「えーと」
「それでは」
今回ピックアップしたツイートは、私たちがつい多用してしまう「この4つの言葉を使わずに教師からの指示、発問、説明などをしてみませんか?」という内容です。
2. 話し方の訓練をしようと思ったきっかけ
これらの言葉を使わない話し方を訓練してみようと思ったのは、この4つが私自身の口癖だったからです。
数年前に自分の授業研究会のビデオを録画して見ていたときのこと。授業の内容よりも、自分の立ち位置や立ち方、しぐさ、振る舞い、それに加えて「はい」「じゃあ」「えーと」「それでは」というような口癖が気になりました。
3. 子供たちに要求するばかりではいけない
自分の話し方をビデオで見ながら、もちろん、「ああ、もっとこういうふうに話せばいいのになぁ」とか「もう少しわかりやすく説明できないかな」ということも考えたのですが、それ以上に、この話し方を一年間『聞いてくれている』子供たちはすごいな、と感じました。
日頃から子供たちに「話を聞くんだよ」とか「話を聞く姿勢を整えてね」と言っていますが、子供たちに聞く姿勢を促すと同時に、教師の側も話す技術を身に付けていかないと、子供たちにばかり要求して『聞いてもらっている』という状況が教室に生まれてしまいます。
4. 授業を録音
そう思った私は、そのビデオを見た翌日に、ボイスレコーダーで自分の授業を録音して帰りの車の中で聞いてみました。
意識はしているのですが、やはりすぐには変わらないもので、「え〜、じゃあ」「はい、えーと⋯」「じゃあ、次に⋯」というような説明の度に入ってくる言葉が見つかりました。
これらの口癖をもう少し減らせば、話自体もコンパクトになるし、子供たちにとっても聞きやすい説明や指示になるのでは⋯と考えました。
そこで、算数の授業だけでも一年間、自分の授業を録音してみようと思い立ち、毎日、毎時間、録音しました。
こうして、自分の授業や自分の話し方を客観的に聞き続けていくことで、日々修正、改善することができました。
5. 伝えたいことが明確に
このように、自分の授業の録音を一年間聞き続けたことによって、話し始めや途中に出てくる余分な言葉がだいぶ減ったように感じます。
話していても内容がクリアになっていくのを自分でも感じましたし、話したいことや伝えたいことが明確になっているので、話し方にも自信がついてきました。
6. 意識して使い分ける
実は、このツイートをしたとき、たくさんのご意見をいただきました。
「はい」「じゃあ」「えーと」「それでは」という言葉を、なぜ使ってはいけないのですか?
というようなご意見、ご質問です。
今回は、この4つの言葉を使ってはいけないという意味ではなく、「意識して使い分けたい」という気持ちでツイートしました。この4つの言葉が悪いのではなくて、この4つの言葉の持つ力や影響力を最大限に使いたいということです。
- 「はい」という言葉には、切り替えるためのメリハリを付ける意味があります。
- 「それでは⋯」という言葉には、子供たちと一緒に悩みながらどうしていこうかと思案する時間を共有する意味があります。
それなのに、普段から「はい、じゃあ」「はい、それでは」「えーと、それでは」というように乱発していては、いざこの言葉を使ったときにその効果が半減してしまうように感じます。
そのような意味で、この言葉自体を使うのがダメなのではなく、意識して意図的に使っていった方がよいのではないかと思ったのです。
私自身の口癖が主にこの4つだったため、この4つの言葉を自分の中でうまくコントロールして使えるようになりたい、そう思って訓練しました。
7. 日々改善していくことが大事
とは言っても、日常的に子供たちと教室で生活していく中で、ついついこの4つの言葉が出てしまうことはよくあります。でも、それ自体をダメだとは思っていません。
自分自身の癖を知り、その上で子供たちとどのように教室で時間を共有したいかを考え、自分の話し方や指示の出し方を日々、修正、改善していく心がけが大切だと思っています。
ぜひ、みなさんもご自身の授業を録音、録画してみてください。
振り返る中で自分自身の癖に気づいて修正、改善ができるとよいですね。
自分の話し方は大丈夫。そう思っていても、録音や録画を見て気付く「癖」が結構あるかもしれませんね! 客観的に聞いて日々改善していくことで、教室の子供たちはもちろん、あらゆる場面で相手にとって聞きやすく、言葉の力を上手に活用した話し方を身に付けていきませんか?
古舘良純(ふるだて・よしずみ) ●岩手県久慈市出身、北海道教育大学函館校出身、菊池道場岩手支部代表、バラスーシ研究会所属、共著『授業の腕をあげるちょこっとスキル』(明治図書出版)、平成29年度千葉県教育弘済会教育実践研究論文にて最優秀賞を受賞