教室の空気を変える「古舘式」9つの技【動画】
「みんなの教育技術」サイト内で毎月『つぶやききれなかったこと』を連載中の古舘良純先生。自らの体験に裏打ちされた教育哲学と再現性の高いスキルをTwitter(@YoshiJunF)で発信し、若手教師を励まし続ける古舘先生の動画が新たに加わりました! 今回はTwitterで反響の大きかった「教室の空気を変えるコツ」について、3つの動画で詳しく説明してもらいました。
目次
1. 教師のパフォーマンス要素
パフォーマンスと言ってもいろいろあると思うのですが、今回のツイートでは、
①声の大きさを1.5倍出す
②声のキー(高さ)を少し上げる
③ボディランゲージを使って子供たちに説明したり、指示を与えたりしてみる
ということを紹介しています。
小学校では、1時間目から6時間目まで、月曜日から金曜日までという時間の中で授業をしたり生活したりするわけですよね。
教師がずっと一本調子で、抑揚なく話していては、子供たちも緊張感が薄れて当然だと思いますし、授業の中で停滞感や、なんだか重くなっていくような空気ができて当たり前、仕方ないと思います。
「①声の大きさ×②高さ×③動き」でギアを上げる!
でも、授業をしていると、「ここは集中させたいな」と思う時間帯や、「ここからは1つギアを上げて子供たちと活動したい」という場面ってありますよね。
そうしたときに、教師のパフォーマンス要素として、『①声の大きさ ②高さ ③動き』に注意して授業を進めることで、教室の空気がガラッと変わるように思います。
たとえば、ニュース番組を見ていても、スポーツニュースに切り替わるときって、一気に空気感が変わるな、と感じませんか?
アナウンサーの「さあ、ここからはスポーツのコーナーです!」というような、ハイパフォーマンスがあってこそ、あの空気感が出来上がっていくと思うのです。
教室においても担任がその役割を担い、子供たちにパフォーマンスを駆使していくことで空気を変えていきたいと考えています。
① 声の大きさを1.5倍に
② 声のキー(高さ)を上げる
③ ボディランゲージを使う
⇒ ここぞ!というときに「集中モード」の空気感が作れる!
2. 緊張感を出す
ツイートの中では、
④ 端から順に全員指名
⑤ 数の指定(1分で3個書く)
⑨ ノートをチェックする
ということで紹介しています。
「④全員指名」で緊張感
授業をしていると、「あの子の考えでみんなの学びを深めよう」とか、「この子の意見からみんなで広げていきたいな」と思うときがありますよね。
でも、いわゆるそうした『できる子』の意見ばかりを拾いつないで授業を進めていくと、どうしても「あ、俺は関係ないな」とか「私には当たらないからいいや」というような、ちょっとしたネガティブな気持ちや空気感が教室に点々と生み出されることがあります。
そんなときに、端から順に当たっていくと思えば、「次は俺の番だな」、「私にも回ってくる!」というように、子供たちの中にちょっとした緊張感が生まれます。
そういった意味で、時々、『全員指名』を授業の中に組み入れると効果的です。
「⑤数の指定」で安心感
しかし、やっぱり『できる状態、言える状態』で子供たちに指名してあげることが必要条件なので、『数の指定』が重要になります。
「1分で3つ書きましょう」
「3分で5行書きましょう」
「全員で100個出そう」
というような、明確な数や基準を示すことで、子供たちはその数を求めてノートに向かうことになります。
ある程度数が書けていれば、いつ当たっても言える状態ができるので、子供たちも安心して発言することができます。
「⑨ノートチェック」で学習意欲をキープ
その上で、『ノートチェック』の予告をします。
「全員のノートを見るよ」
「ノートを回収するよ」
「先生が目を通すよ」
ということを伝えておけば、「ちょっと手を抜いてもいいかな」とか「やらなくていいや」というようなことにならず、子供たちの前向きな学習に対する意欲を継続させることができます。
このように、『④全員指名 ⑤数の指定 ⑨ノートチェック』というもので空気をピリッと緊張感のあるものにしていきます。
④ 全員指名
⑤ 数の指定
⑨ ノートチェック
⇒ 手を抜く隙がない空気感で、全員が前向きな学習意欲を継続できる!
3. 動きを出す
ツイートの中では、
⑥ 書いたら立つ
⑦ 3回読んだら座る
⑧ 授業中に拍手を10回する
の3つを紹介しています。
45分の授業の中で、子供たちが座りっぱなし⋯というのは、やはり非常にしんどいな、と思いますよね。
「頑張るぞ!」とか「よしやるぞ!」というような心情的な動きはあるのですが、そこに、実際に立ったり座ったりする動作を時々加えることで空気を変えていくことも必要なのでは、と考えています。
書き終わったら「⑥立つ」〜周りのペースが見える〜
たとえば、板書をして子供たちがノートに書く、そのあとの指示です。
もしかしたら多くの教室では、「終わったら姿勢良くして待ちましょう」、「鉛筆を置いて先生に顔を向けて待っていてね」とするかもしれません。
そこに少しアレンジを加えて、
「書いた人は起立して姿勢正しく待っていてね」
「終わった人は立ちましょう」
などの動き(立つ)を入れることで、子供たちも「おお、こんなに終わった人がいるんだ」とか、「早くやらなきゃな」とか、ある意味、緊張感のようなものが生まれてきます。
声を出してから「⑦座る」〜意識的に座学に入る〜
また、立ったらただ着席するのではなくて、
「みんなで読んでから座るよ」
「早口で5回言った人から座ろう」
という指示を出すと、なにか『座る』ということに対しての意識が学習に向かう空気を作っていくことがあります。
活動の節目に、『立つ』と『座る』を入れることで、教室の空気をある意味、強制的に動かしていくことができます。
活動の節目にも「⑧拍手」〜意識的に一体感を生み出す〜
また、『拍手』は、動きを出すことの中でも最も手軽で、空気を変えやすい方法の一つだと思います。
教師からのパフォーマンスや、促し、仕掛けではない、教室全体が一つになるような拍手というのは、空気がそこでガラッと変わっていくきっかけになると感じています。
だれかが素晴らしいことをしたら拍手をする、というのはもちろんですが、
「よし、ここまでよく頑張ったね!」
「よし、ここからまた一生懸命やっていこう!」
というような節目としての拍手というのも使うときがあります。
目安としては、「1日の中で10回以上拍手が生まれる教室にしたい」というような、数を自分の中で設定して拍手を促していくというのも、教室の空気を大きく変えていくきっかけになるのではないでしょうか。
⑥ 立つ
⑦ 座る
⑧ 拍手
⇒ 活動の節目で「心情的な動き」に「身体的な動き」を連動させると、意図的に学習に向かう空気が生まれる!
方法はいろいろ! 教師の「心構え」が空気を左右する
今回、教室の空気を変えるコツ、ということで9つの技を3ブロックに分けて解説させていただきました。
いかがでしたでしょうか?
もしかしたら、先生方の経験年数や性別、キャラクターによって「お、これは!」と響くものがあったり、「ん〜、これは⋯」というものがあったりしたのではないかと思います。
方法はいろいろありますが、大事だと思うことは、教室の空気を変えようとするなら、場づくりの多くを担っている担任教師が変わっていかなければ、教室の空気は変わらない、ということです。
パフォーマンスにしても、きっかけにしても、やはり教師がどのような心構えで教室にいるかというのが、その空気を左右すると考えています。
今回ご紹介したもの以外にも、多くのコツや様々なスキルが世の中にはたくさんあふれていると思います。ぜひ、先生方には、ご自分のキャラクターや性別、経験年数に合ったスキルやコツを掴んで、ご自身の教室に活かしていただけたら、と思っています。
動画初登場の古舘先生の「9つの技」、いかがでしたか? 大人でも集中力を継続するには気分転換や工夫が要りますよね。メリハリのある教室で過ごすことができれば、子供たちの学習意欲も記憶力も格段にアップしそうです! みなさんも教室の「空気」を動かしてみませんか?
古舘良純(ふるだて・よしずみ) ●岩手県久慈市出身、北海道教育大学函館校出身、菊池道場岩手支部代表、バラスーシ研究会所属、共著『授業の腕をあげるちょこっとスキル』(明治図書出版)、平成29年度千葉県教育弘済会教育実践研究論文にて最優秀賞を受賞