古舘式【授業づくりノート】のススメ

連載
古舘良純の「つぶやききれなかったこと」

岩手県公立小学校教諭

古舘良純

自らの体験に裏打ちされた教育哲学と再現性の高いスキルをTwitter(@YoshiJunF)で発信し、若手教師を励まし続ける古舘良純先生が、Twitterではつぶやききれなかった思いを綴る連載。
1時間で2学年分の授業を行っていた、多忙で困難をきわめた講師時代。その時の経験から、授業の見通しをたてるための【授業づくりノート】は古舘先生にとってルーティンであり、精神安定剤でもあると話します。

執筆/岩手県公立小学校教諭・古舘良純

古舘式【授業づくりノート】のススメのイメージ画像
写真AC

授業づくりノートは僕の精神安定剤

A5ソフトリングノートを用意する

ノート
古舘先生のノート

手帳を使っています。A5判のサイズです。その手帳の後ろにノートを挟み込み、一緒に持ち運びます。大きさが揃っているので、持ち物がコンパクトになります。(iPadに比べたら重いのですが…)

また、で説明しますが「1時間1ページ」で使います。B5やA4のノートで授業づくりをしたこともありましたが、時間と労力のバランスを考え、今はA5サイズのノートに落ち着きました。

ソフトリングなので、手帳に挟んだときにリングが手帳に合わせて変形し、フィットします。また、そのページを上にした状態で開いて置けるので、授業ごとにページを開き直す手間も省けます。

② 1週間の予定を書く

ノート
1週間ごとの予定を書く

ノートは1週間ごとに更新して使います。1ページに、「時間割表」のようなマスを書いて埋めていきます。必要に応じて「朝の活動」、「業間休み」、「昼休み」、「放課後の活動」も書けるようにしてもよいかもしれません。

提出物の締め切りなど、忘れがちな内容も書いておくようにします。子どもたちとの約束や、休み時間の学級レクなども書き込めます。

ノート下部には、「今週の指導内容」を簡単に書いておきます。「指導to doリスト」とし、学習の進度や見通しがもてるようにします。終わらなかった内容は次週に繰り越し、進度の調整を行います。

③ 1時間1ページを確保する

1時間1ページを確保!

1週間の予定を書いた次のページから、毎時間の授業づくりページとします。

「1時間1ページ」を先に確保します。
前もってページを確保しておくことが重要です。

「授業づくりをしよう」と思ってからページを作り始めるのではなく、ページを確保しておくから授業づくりに取り掛かりやすくなるのです。

そのページが埋まっていく中で、自分の準備が整っていく感覚です。日々を忙しく過ごし、授業づくりができずに白紙のまま時間が過ぎることもないわけではありません。

そんなときは、白紙のページを見て「来週は頑張ろう」と思うようにします。

まずは、授業づくりを習慣化し、授業づくりと向き合うためにも、「1時間1ページ」を確保してください。

④ 5時間×5日分のページに日付・時間・教科を書く

1時間1ページを確保したら、ノート上部に「日付」「○時間目」「教科」を書き込み、そのページを各教科の授業づくり用スペースとします。私は書いていませんが、必要に応じて「○/○時間目」や、「教科書〇ページ」などの情報があっても良いでしょう。

このとき、の1週間の予定を元にします。基本的に「凝らない」「ザックリ行う」「1色で済ませる」ようにしていますが、教科ごとにマーカーで色分けしたり、重要なポイントにカラーペンで線を引いたりすると、より見やすくなります。

その時間に使いたい教材がある場合は、そのページに必要なモノやプリントを付箋に書き、はみ出すように貼っておくと忘れません。工夫次第で準備物などの見通しも持ちやすくなります。

⑤ 本時の到達目標を書く

この時間の最後に、子どもたちが何ができれば良いか、何を理解できれば良いかを考えます。指導書にある言葉や、教師用教科書の言葉をヒントにしながら考えるようにします。できる限りシンプルに言えるようにします。

指導案を書くときに「導入」から書くことが多いかもしれません。「紙」の流れがそうさせてしまうので仕方がないことだと思いますが、「指導と評価の一体化」を考えるのであれば、指導案の一番下から考えるべきです。

⑥ 授業の流れを書く

到達目標からの逆算思考で考えます。

・子どもたちが「こうなってほしい」という姿をイメージする(⑤本時の到達目標)
・そのためにこんな活動をする
・その活動への導入を考える

というステップで考えます。 さらに、活動における「指示・発問・説明」などもイメージしておきます。その上で、学習課題やまとめを考えるようにすると、授業の流れに一本芯が通ります。

⑦ つまづきへの対策を書く

授業の流れは、あくまで全体をざっくりとイメージしたものに過ぎません。実際は、子どもたちの活動が活発になって時間が延びたり、思わぬ議論が起こったりします。同じように、子どもたちの活動が停滞したり、問題へのつまずきが起こったりすることもあります。

授業の中で、子どもたちがつまずくであろうポイントを見出しておくと、事前に手を打ち、回避できます。そのために、「自分で自分の授業を受ける」というシュミレーションをします。自分だったらという別視点で考えることで、授業におけるつまずきが見えてきます。

これらを、授業の流れの中に書き加えるようにします。家を補強したり、木に支柱を添えたりするイメージです。

⑧ 日々繰り返す

私は、講師経験があります。その勤務校は「複式」で低・中・高の3学級しかありませんでした。職員は用務員さんを入れて10名おらず、今はもう廃校になったほど小規模校でした。

先生方の校務分掌は「超」多く、出張が重なる日々でした。つまり、講師の私が「補欠授業」にたくさん入っていました。

2学年の教科書を同時に使い、四苦八苦しながら授業する日々が続きました。大学を出たばかりの私は必死にその時間の授業を考えました。1学年に対して半分の時間しか授業ができず、45分で2学年の到達目標を達成する困難さを感じていました。

しかし、1年間を終える頃には、なんとか1時間で2学年分の授業ができるようになっていました(授業と呼べるようなものではなかったと思うが…)。

しかも、教師不在の時間の子どもたちの活動をデザインできるようにもなっていました。「教師が教える授業」とは違う授業観を形成した1年間だったと感じています。

こうした経験から、授業づくりの基礎を自分なりに形成してきました。①〜⑦に書いてきたことは、あくまで私がやりやすいと思う「授業づくりのハウツー」です。

A5のスペースで授業づくりができるのも、日々繰り返してきたからです。到達目標が明確になるのも、複式を1年間指導してきたからです。

うまくいかないからと言って簡単に投げ出したり、違う方法に乗り換えたりするのではなく、まずは日々繰り返すことを習慣化し、自分(あなた)なりの授業づくりをルーティン化・身体化すべきです。

古舘良純先生
古舘良純先生

古舘良純(ふるだて・よしずみ) ●岩手県久慈市出身、北海道教育大学函館校出身、菊池道場岩手支部代表、バラスーシ研究会所属、共著『授業の腕をあげるちょこっとスキル』(明治図書出版)、平成29年度千葉県教育弘済会教育実践研究論文にて最優秀賞を受賞

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