平川理恵✕のもきょう(野本響子)教育談義レポート with 柴田大翔 #1~先生がいなくなっても、子どもたちは自律的に学べるか――探究学習について現場の先生と考える

小学校では2030年度に全面実施される次期学習指導要領。これからの学校教育のあり方について、様々な議論が進んでいます。一方で、制度や理念について語るだけでは見えてこない、教育現場の「今の課題」があります。そこで、平川理恵×のもきょう(野本響子)教育談義では、現役の小学校の先生をゲストに迎え、教育現場のリアルについて聞いていきます。今回のゲストは、首都圏にある公立小学校の現役教諭、柴田大翔先生です。
本記事は、2026年9月30日にVoicyで生配信された2本の「教育談義」(全3時間!)を、ギュッと濃縮してお届けするものです。音声でじっくり聞きたい方は、こちらからアーカイブをお聞きいただけます。▶ 教育談義・前半 ▶ 教育談義・後半
目次
「学校現場はどれぐらい変わってきた?」
平川 これまで教育についていろいろな議論をしてきましたが、やっぱり私が知りたいのは、「実際、学校では今、何が起きているんですか?」ということなんです。制度や理念を見ると、学校が変わっているように見えるけれど、実際はどうなのか? そこには、現場にしか見えないリアルがあると思うんです。先生たちは今、何に困っているのか。何を変えようとしているのか。逆に、「ここは変わってきたよ」ということもあるかもしれない。だから、実際に学校で子どもたちと向き合っている先生に、教育現場の「今」をズバリ聞いてみたいと思います。
柴田 めちゃくちゃ肌感覚で言っていいですか? 肌感覚で言ったら、急に大きな変革があったという感じはしないです。前の学校では、僕や長年その学校にいらっしゃった先生が、学習環境をデザインして、子どもたちが自分で学び方を選べるようにしていたんです。「じゃあ、探究的な学びが日常的に行われているか?」と問われると、学校や先生によって、取組の状況には違いがある段階だと感じます。
僕自身、今年度は担任ではなくて、理科専科をしています。子どもたちと授業ができるのは週3回で、時間もバラバラです。「担任だったら、もっとこうしたいな」というイメージはあるんですけどね。
今の学校に着任してまだ数か月なので、ここからどこまで広げていけるのか…。難しいな、というのが実感です。
のもきょう ICTも探究も、扱っていないということですか?
柴田 ICTは使っていますが、探究はこれから進めていくべき課題だと感じています。ただ、現在の勤務校では子どもの満足度は高くて、不登校は一応、ゼロです。着任してそれを聞いたときに、「すげえ、そんな学校あるんや!」と思いました。
のもきょう 探究的な学びはまだまだ。でも、子どもたちの満足度は高くて、不登校はゼロ。満足度が高いのは、なぜでしょうか?
柴田 先生方が、すごく手厚いんです。象徴的なのが、給食の時間に教室にいる大人の数です。今の学校は、どの学年も、担任と支援の先生、担任と専科の先生というように複数の先生が担当していて、多い場合は給食時間の教室に3人ぐらいの大人がいます。どの先生も子どもたちが大好きで、愛情深く、長い時間をかけて関わっている。だから、子どもたちの満足度が高いんだと思います。
のもきょう (Voicy生放送中なので)今、「心理的安全性を子どもたちが感じられているからでしょうか」とコメントが来ましたけど、そういうことですか?
柴田 それは大きいかもしれないですね。何かあっても、先生が自分の話を聞いてくれ、一緒に悩んでくれて、なんとかしてくれる。先生方が子どもたちに関わる姿を見ていて、そこを感じます。
「先生がおらんくなったら、自立して生きていけるんだろうか」
のもきょう それでも柴田先生は、学校を変えていきたいと思ってる。それはなぜ?
柴田 今の勤務校は、子どもたちに対してすごく愛情深く、手厚く関わっています。それは、とてもいいところだと思うんです。でも、「じゃあ、その子たちが、先生がおらんくなったら自立して生きていけるんだろうか?」と考えたときに、「おや? 自立という意味ではどうだろう」と疑問を感じてしまって。
大人に言われたことは素直にできる。でも、自ら問いを立てて、自分で考えていくという「生きる力」で考えると、どうだろうか。僕の中には、目の前の数字だけを取る教育じゃなくて、予測困難な社会を自分たちで生き抜いていける力をつけたい、という教育の軸があるんです。子どもたちには、これからの社会を幸せに生き抜いてほしい。だから、自分で考えることができる子どもたちを育てるために、学校を変えていきたいという気持ちがあります。
のもきょう おそらく探究学習の根本にあるのは、その考え方ですよね。自律的な学びができる人になってほしい、というのが最終的なゴールなのだと考えています。テストで良い点を取らせたいなら、教科書を覚えさせたり、試験対策をしたりしたほうが早い。そうではなく、生涯学習者を育てる。自分で学びを組み立てられる人になってほしい。そうであるなら、子どもの中にある「学びのエンジン」を大事にしたほうがいい。これは、教育哲学の違いだと思うんですよね。
教育哲学についてはコチラ。平川理恵✕のもきょう(野本響子)教育談義レポート#2~「いい教育ってどんなもの?」を考えるために大切なこと――一斉指導vs探究学習の二項対立を超えて
