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【小学校社会科】再生可能エネルギーは環境にやさしいの? 〜言説×議論でつくるこれからの社会科〜 【第1回】

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北海道教育大学附属釧路義務教育学校教諭

澤田康介

本連載では、社会で当たり前のように語られている「もっともらしい言葉や考え方」を「言説」と捉え、それを議論によって問い直す社会科授業を提案します。目指すのは、ある言説を否定したり、一つの「正解」を決めたりすることではありません。「どのような意味では当てはまるのか」「どのような立場や条件では当てはまらないのか」と考えることを通して、子どもが社会の見方を広げ、根拠をもって自分なりに判断できるようになることです。

これからの社会科教育で必要なスキルとは

社会科の教育では、社会的事象について「何を知っているか」だけでなく、「どのように社会を捉え、考え、判断するか」が、これまで以上に重要になります。2030年から全面実施される新しい学習指導要領に向けた議論でも、社会科の「見方・考え方」に【社会的な言説】、すなわち出来事や社会状況について、社会でどのように解釈され、語られているのかを読み解く視点が加わる方向性です。

この力を獲得するには、社会で広く語られていることをそのまま受け入れるのではなく、「なぜそのように語られているのか」と問い直す学習が必要です。そして、そこで重要な役割を果たすのが「議論」です。異なる資料や立場、考えを持ち寄って議論することで、子どもは一つの見方だけでは気づかなかった社会の姿に出合い、自らの考えを捉え直すことができます。

こうした学びは、教師が一方的に知識を説明するのではなく、どのような言説を取り上げ、どのような資料をぶつけ、何をめぐって議論させるのかといった新たな授業づくりのスキルが必要です。だからこそ、今から「言説×議論」の授業に挑戦し、その知見を蓄積していくことに意味があります。

言説と対象学年・単元

今回取り上げる言説は、「再生可能エネルギーは環境にやさしいのか?」です。

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、発電時に二酸化炭素をほとんど排出しないことから、地球温暖化対策として導入が進められています。そのため、「再エネ=環境にやさしい」と考える子どもも少なくありません。しかし、再生可能エネルギーの導入によって、森林の伐採や景観の変化、野生生物の生息環境への影響など、別の環境問題が生じる場合もあります。「環境にやさしい」とは、一体何を意味するのでしょうか。一つの言説をそのまま受け入れるのではなく、異なる資料や立場から問い直し、議論を通して自分の考えを捉え直していきます。

【対象学年・単元】
小学校第5学年「我が国の国土の自然環境と国民生活」(環境を守る学習)
の発展として位置付けます。

学習指導要領で重視される、社会的事象の特色や相互の関連、意味を多角的に考え、表現する学習につながる実践です。再生可能エネルギーを単に「環境によいもの」と覚えるのではなく、地球温暖化対策、森林、生物、地域の生活など複数の側面から捉えることをねらいます。

① 環境にやさしい発電方法はどれ?

まず、火力、原子力、水力、太陽光、風力などの発電方法を提示し、「この中で環境にやさしいと思う発電方法はどれ?」と問いかけます。子どもたちからは、太陽光発電や風力発電を挙げる意見が多く出てきました。

太陽光発電を選んだ人が多いね。どうして?

二酸化炭素を出さないから。

太陽の光はなくならないから。

火力発電より地球温暖化を防げそう。

そこで、発電時の二酸化炭素排出量や、日本が再生可能エネルギーの導入を進めていることがわかる資料を提示します。こうした資料から、「やっぱり再生可能エネルギーは環境にやさしい」と考える子どもが増えていきます。ここでは、あえてこの考えをすぐには否定しません。
最初から「再生可能エネルギーにも問題がある」と教えるのではなく、まずは資料を根拠として「再エネは環境にやさしい」と判断できる場面を設定します。

発電の種類を比較する

② 日本はもっと太陽光発電を増やすべき?

次に、日本のエネルギー事情に目を向けます。日本はエネルギー資源の多くを海外に依存しています。また、火力発電では石炭や天然ガスなどの化石燃料を使用します。そこで、「日本はもっと太陽光発電を増やすべきだろうか?」と問いかけます。

日本はもっと太陽光発電を増やすべきだろうか?

増やした方がいいと思う。二酸化炭素を減らせるから。

日本でもつくれるエネルギーだから、輸入に頼らなくて済む。

屋根だけじゃなく、使っていない土地にも設置すればいい。

ここまでの学習では、多くの子どもが太陽光発電のさらなる導入に肯定的な立場をとることが予想されます。

そこで、一枚の写真を提示します。森林を切り開いて、大量の太陽光パネルが設置されているメガソーラーの写真です。

森林を切り開いて設置されたメガソーラー
写真AC

この写真を見て、何か気づくことはあるかな?

木がなくなっている。

これって本当に環境にやさしいの?

ここで、授業の中心となる問いにつなげます。

「再生可能エネルギーは、本当に環境にやさしい?」

「再エネは環境にやさしい」という言説を教師が否定するのではなく、それまでの認識ではうまく説明できない事実を提示します。写真は、まず太陽光パネルの広がりが目に入るよう大きく提示し、少し間を取ります。森林が切り開かれていることに気づいた子どもから「えっ、木がない」「これも環境にやさしいの?」という声が上がれば、その驚きを中心の問いにつなげます。もし「たくさん発電できそう!」という反応に偏った場合は、「この場所には、パネルが置かれる前、何があったと思う?」と問い、設置前の写真や周辺の森林がわかる資料を追加して、土地の変化に目を向けさせます。「環境を守るための太陽光発電なのに、自然環境が失われている」という矛盾が、言説を問い直すきっかけになります。

③ 「環境にやさしい」って、誰にとって「やさしい」のか?

ここから、異なる資料を比較します。一方では、再生可能エネルギーによって二酸化炭素排出量を削減できることを示します。もう一方では、メガソーラーの設置によって森林や草原が失われる事例や、そこに生息する野生生物への影響を示します。すると、子どもたちの意見が分かれてきます。

地球温暖化を防ぐという意味では、環境にやさしいと思う。

でも、その場所に住んでいる生き物にとってはやさしくない。

森林を壊してまで太陽光パネルを置くのは違うと思う。

じゃあ、自然を壊さない場所につくればいいんじゃない?


ここで教師は、

同じ太陽光発電なのに、なぜ「環境にやさしい」とも「環境にやさしくない」とも言えるのだろう?


と問い返します。

執筆/北海道教育大学附属釧路義務教育学校 澤田康介

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