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新一年生あるあるトラブル対応術

2019/4/11

学校生活の全てが初体験の新一年生。そんな一年生にありがちなトラブルと、その対処法について、東京都江戸川区公立小学校主任教諭 佐々木陽子先生にアドバイスをもらいました。

新一年生イメージ
撮影/浅原孝子

登下校のトラブル編

「学校に行けない。学校に入る前に泣いてお母さんから離れない」

子どもは必ず慣れてくる。保護者の不安を取り除くことも大切

学校に行きたがらない子に対しては、担任が迎えに行くと本人も保護者も安心します。4月中はありがちなトラブルですが、数日経てば子どもが慣れて必ず解決します。泣いてしまって校門から学校に入れない子の場合は、保護者との連携が重要。よくあるのが、保護者も不安になり「子どもと一緒に授業を受けてもいいですか?」と依頼してくるパターン。子どもは別れる瞬間が辛いだけで、学校に入れば気持ちが切り替わるということを保護者にも理解してもらう必要があります。
「ご心配されるのは分かりますが、教室に入って他の友達が元気に遊んでいるのを見ていると、子どもは慣れてくるものです。逆にここで切り離さないと、気持ちを引きずってしまいます。ここからはお任せください」
とはっきり伝えましょう。教室に入ってからは、できるだけその子のことをほめてあげましょう。自分が認められていると思うと安心し、学校が好きになります。

「学校からの帰り道に迷ってしまう。もしくは、寄り道をする」

寄り道する女の子

帰り道は目印をしっかり確認させる

4月中は、学校からの帰り道が分からなくなる子が必ずいます。入学前に通学路を確認しているはずですが、保護者が一緒だと、子どもは安心感からあまり注意して周囲を見ないので、一人になると分からなくなるようです。保護者には、子どもが一人で帰れるよう、曲がる場所や自宅近くの目印をしっかり教えてもらうよう伝えます。また、迷ったら学校に戻って先生に聞く手段も伝えます。寄り道に関しては、してはいけないことを教えるとともに、「近所の人や、お店の人など、周囲の人があなたの行動を見ているよ」と話すと、伝わりやすくなります。

生活面のトラブル編

「時間が守れない等、学校生活のリズムがつかめない」

言葉で理解させるより感覚を刺激して生活リズムを覚えさせる

一年生に「時間を守りましょう」と言ってもなかなか伝わりません。低学年は言葉より感覚で動くので、音楽が有効です。「この曲が終わるまでに●●をやろう」と言うとがんばります。「●秒以内」とルールを決めるのもおすすめ。授業開始時間に教室に戻らない場合は、授業の冒頭に楽しいゲームをするシステムをつくると、ゲームがしたくて一生懸命教室に戻ろうとします。

「トイレに行くのをがまんしてしまう。間に合わずに失敗する」

手洗い場の写真

休み時間には毎回全員でトイレに行く

うんちやおしっこをがまんする子がいるので、4月は、休み時間に全員でトイレに行くようにします。さらに、うんちの絵本を読み聞かせ、「うんちは先生もするし、誰でもするんだよ。がまんする方がもっと大変だよ」という話をします。うんちをしにトイレに行くことは、恥ずかしいことではないという雰囲気をクラスにつくることが重要です。デリケートなことほど担任がオープンにすることで、コソコソ話で広がったり、失敗をからかうことが少なくなります。もし失敗した子がいたら、大げさにせずそっと保健室へ連れて行き着替えさせます。もしはやし立てる子がいたら、「誰でも失敗することがあるんだよ。君が同じように言われたらどう思う?」と相手の気持ちになって考えさせます。

「友達と仲よくできない。一緒に遊ぶことができない」

友達と遊ぶことを無理強いしない

一人遊び・鉄棒

友達と一緒に遊ぼうとしない子がいても、無理強いはしないことです。仲間外れは問題ですが、一人でいることが好きな子もいますただし、みんなと遊びたいのに、友達の輪になかなか入れない子もいます。新しい友達と遊ぶ楽しさを教えるためにも、先生が先頭に立ち、曜日と時間を決めて、クラスみんなで遊ぶといったシステムをつくるのもよいでしょう。

「友達にすぐに手が出てしまう」

やや大げさな例を示してなぜいけないのか想像させる

怒る男の子

低学年の子どもは、言葉で自分の気持ちを表現できず、すぐに手が出てしまいます。また、自分の衝動的な行動が大きな事故につながるかもしれないという想像ができません。そんな時は、「もしあなたの手がお友達の目に入ったらどうする? お友達は救急車で運ばれてしまうかもしれないんだよ」「あなたが押して、友達が倒れて頭を打ったら、大けがになって病院に運ばれてしまうかもしれないんだよ」など、少し大げさなケースを例に出して話し、想像させ、どうすべきだったか考えさせます。その上で「あなたには話せるお口があるのだから、手を出す前にお口で伝えよう」と伝えてあげるとよいでしょう。

「乱暴な言葉遣いをする」

乱暴な言葉を叱るより、よい言葉の語彙を増やす

子どもたちには「乱暴な言葉を使ったらダメ」と教えるよりも、「やさしい言葉でクラスをつくっていくんだよ」と伝えて、そのことを常に意識づけながらやさしい言葉を使っている子をほめ、価値づけるほうが効果的です。しかし、よい言葉ややさしい言葉とはどんな言葉なのか、さらにどのタイミングでどのように使ってよいか分からない子もいます。「ふわふわ言葉」「ちくちく言葉」といった表現で言葉にはいろいろな種類があることを伝え、「ナイス」「どんまい」「今日がんばったね」など、誰かが使ったよい言葉を掲示するなどして、よい言葉の語彙を増やしつつ、具体的に使い方を教えてあげることが肝心です。またよい言葉を使った子をクラスで表彰するのもよいでしょう。

「配付物のトラブル(なくす、提出を忘れる、保護者に渡すのを忘れる)」

学校でできることは限られるので、家庭との連携が必須

4月前半は、まだ連絡帳を書くことができないため、毎日学級通信を出し、配付物や提出物、スケジュールなどについてお知らせします。しかし、子どもたちはお便りにまだ慣れていないため、保護者に渡すのを忘れることもしばしば。「先生からお家の人への大事なお手紙なので必ず渡してね」と伝え、保護者には、お便りを入れる箱を用意するなど、帰宅後、提出物を必ず出すシステムやルールづくりをお願いしましょう

「給食が食べられない。慌てて食べて嘔吐してしまう」

最初は少量ずつ配膳し、食べられる量を把握させる

給食イメージ
撮影/浅原孝子

給食は楽しみにしている子がいる一方で、好き嫌いがある子にとっては、憂鬱な時間になることもあります。最初は少量ずつ配膳し、自分に合った量を把握させ、食べ切ることの大切さを教えるようにしましょう。少量でも完食すると「先生! 食べられた!」と嬉しそうに報告してくれます。その時は大いにほめてあげましょう。「食べ切った」という達成感を感じ、それを教師に価値づけされることで、食べられる量が増えていきます。また、低学年は嘔吐してしまうこともあります。「汚物処理セット」等で速やかに処理し、子どもたちには処理が終わるまで近寄らないよう伝えます。さらに、「体調が悪い時など、誰でも嘔吐することはあるよ」と、自分事として指導をすると、「汚い」と騒ぐ子がいなくなります

「善悪の区別がつかない」

先生が悪者になって例を出し、自分事として考えさせる

学校生活のルールに慣れないうちは、学校に持ってきてはいけないものを持ってきたり、友達のものを黙って使って返さなかったり、悪気もなくトラブルを起こすこともあります。善悪の判断がつかない低学年の子には、常に自分の身に置き換えて考えさせるようにしましょう。例えば、「先生があなたの大切なものを黙って取ったらどう思う?」「あなたが自分のものを隠されたらどう思う?」などと聞き、自分事として想像させると、低学年でも「自分がされたら嫌だ」「いけないことだ」と分かります。ポイントは、「あなたと同じことを、いまここで先生がしていいの?」と、先生が悪者になること。友達を例に出すと、「●●さんも数日前に同じことをしていた」などと、昔の事例を持ちだして、解決させたい問題のポイントがずれてしまうので、あくまで先生との対話として話しましょう

学習面のトラブル編

「授業中に泣いてしまう(自信がない、言いたいことが言えない等)」

泣かなかった瞬間を見つけ励まして自信をつけさせる

泣く男の子

指名されたのに、みんなの前で発言できずに泣いてしまうような子には、「落ち着いたら発言してね」と伝え、そっと見守ります。そして、泣くのをがまんしている瞬間を見逃さず、「よくがまんしたね」「がんばっているね」と励まし続けましょう。自分が少しずつ強くなっていることを自覚させ、自信をつけさせます。泣いた理由を聞く場合は、じっくり聞きつつも、すべて鵜呑みにしないこと。子どもを信じないのではなく、発達段階として、感情が高ぶると事実でないことを話してしまうこともあることを把握しておきましょう。

「先生の話や友達の発言を聞かず、すぐに話し出す」

人の話を聞くことはやさしさの一つだと学ばせる

誰かが発言している時は黙って聞くというルールは、一年生の早い段階で徹底させなくてはなりません。ルールを徹底させる工夫として、学級目標に、「やさしい心」といったキーワードを入れておくとよいでしょう。「友達の発言をしっかり聞くということは、その人を認めたり、尊敬するという意味でもやさしさなんだよ」という話をしておくと、おしゃべりをしたときに、「やめなさい」ではなく、「それはやさしさが足りないよ」と学級目標に即した指導がしやすくなります。

「授業中じっとしていられない」

子どもの集中力は長くても10分。体をいかに動かす授業をするか考える

低学年の子どもたちの集中力は、持続しても5~10分程度です。10分姿勢よく座っていられたら、それだけでほめてあげましょう。その上でメリハリのある授業計画が必要です。例えば、授業中、班ごとに黒板の前で発表させるだけでも、立つ・歩く・発言する、といった体を動かす動作が加わり、単調になりません。音楽の授業なら、歌いながら教室の中を歩いたり、音楽が止まったら友達とじゃんけんをするなど、体を動かす授業展開を考えます。じっとしていられない子の中には支援が必要な子もいます。その場合は、課題が半分終わったら折り紙をしてもよいなど、配慮として柔軟な対応をしましょう。

「整列や着替えなど集団行動のペースが遅い」

ゲーム感覚で取り組ませたり役割を与えたりする

集団行動が遅い場合は、ゲーム感覚で取り組ませると効果的です。例えば、「今日は早く並んだ人から整列しよう」と言うと、普段は整列が遅い子も早く並ぼうとします。音楽を使うのもよいでしょう。また、役割を与えるのもおすすめ。着替えの遅い子に、整列リーダーの役割を与えたり、「体育の最初にゲームをするから、ゲーム係になってね」と伝えると、ゲームの準備をするため早く着替えようとがんばるようになります。

「体育など、外の活動で興奮して騒いでしまう」

できるだけ指示や説明は短くして待ち時間を少なくする

好奇心旺盛で、興味・関心がすぐに移りがちな低学年。とくに周囲に刺激がいっぱいの野外授業では、なかなかじっとしていられません。ここでの重要ポイントは、説明や指示はできるだけ短く簡潔にすること。そのためには、活動内容の段取りをしっかり考えておく必要があります。体育では、授業の冒頭にリレー遊びをするなど、体力を使う活動を入れ、エネルギーを発散させてあげるとよいでしょう。もし興奮しやすい子が多いクラスの場合は、朝学習の時間に体育館や校庭を10周走るなどの工夫も有効です。とにかく朝たくさん走らせておくと、次の学習で集中できるようになります。

「先生と1対1の関係を求める」

放置すると崩壊するので根気よく指導を徹底する

クラス全体に話している途中に、「先生、私ね」「先生これはどうすればいい?」と個別に聞きに来るのが一年生の特徴。周囲の子の存在を忘れ、「先生と自分」の関係しか見えず、先生と1対1の関係を求めてくるのです。この課題は最初に徹底的に指導しなければなりません。授業中など教師や誰かの発言中に、「先生! 先生!」と言いに来る子がいたら、「発言が終わってからね」「言いたいことがあれば、手を挙げてあてられてから話しましょう」と毅然とした態度で伝えます。とても根気がいる仕事ですが、自分の言いたいことを勝手に発言する子を一度許してしまうと、一気にクラスが崩れていきます。若い先生ほど、ここで崩れてしまうことが多いので、「最初が肝心」と覚悟をもって対処しましょう。しかし、それでも先生と1対1でお話したいのが一年生。休み時間にはじっくり子どもたちの話を聞いてあげましょう。

取材・文/出浦文絵

『教育技術 小一小二』2019年4月号より

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