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【保育×教育対談 #1】子どもが自然と動き出す「遊び」起点のアプローチ|小学校の教室が変わる「保育の知恵」の活かし方

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 「保幼小の接続」や「多様な子供たちの主体的な学び」のあり方が見直される今、幼児教育の現場で日々実践されている「子どもが楽しみながら主体的に動ける仕掛け」は、実は小学校の学級経営をさらに豊かにできる宝の山でもあります。一瞬で心をつかむコール&レスポンスや、誰もが知る定番の遊び、言葉によらず自発的な行動を促す関わり方の技術など、日々の学級経営に役立つ知見や、それらの土台となっている保育ならではの子どもの見方や方法論を知ることで、教師のあり方もアップデートできます。

今回は、保育の知恵を実践して大きな効果を実感してきたという小学校教師の岩田純一先生と、「運動遊び」の研究者で保育者でもある堀内亮輔先生による特別対談をお届けします。「小学校側が保育の実態を知らない」という課題を解決し、真の保幼小の架け橋となる全3回の対談。低学年だけでなく、高学年の先生にもお読みいただきたい対話です!

対談:岩田純一(東京都公立小学校指導教諭)×堀内亮輔(東京女子体育大学 こどもスポーツ教育学科 准教授、保育士)

岩田純一(いわた・よしかず)東京都公立小学校指導教諭。平成30年度体育授業優秀教員(日本学校体育研究連合会)。東京都小学校体育研究会で正副部長を歴任。小学館「みんなの教育技術」で学級レクや体育の指導法を多数発信し、全国の教員から支持を得ている。

堀内亮輔(ほりうち・りょうすけ)東京女子体育大学 こどもスポーツ教育学科准教授。10年の保育士経験を経て乳幼児の運動遊びを研究。NHK『おかあさんといっしょ』等の番組監修や保育者研修講師を務め、子どもと共につくる運動遊びの普及に尽力している。

「遊びのネタ」の裏にある、目に見えない部分が大事!

 岩田:堀内先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。今日は非常に楽しみに参りました。

堀内:こちらこそよろしくお願いいたします。こうしてじっくりとお話しできる機会をいただき、本当にありがたいです。

 岩田:編集部からいただいている今日の対談の主旨としては、主に小学校教育の現場でも活かすことができる保育の遊びネタや、保育・幼児教育の世界における常識の違いのようなものについて、小学校側の視点をもつ私と、保育側の視点をもつ堀内先生とで語り合う、ということになっています。お互いの立場からざっくばらんに語り合い、小学校でも実践できる具体的な知恵やアイデアが出てくればいいなと考えております。

私自身、堀内先生からはいつも多くのことを学ばせていただいているのですが、学校の先生方の中には、保育の現場で実際にどのようなことが行われているのか、その知恵や知識に触れる機会がなかなかないという実態もあります。今回はそうした先生方にも広く伝わるように、お互いの共通認識を深めつつ、いろいろな角度から突っ込んだお話ができればと思っています。

堀内:ありがとうございます。本日の対談では、目に見える「遊びのネタ」だけでなく、その背景にある「目に見えない部分」についてもお話ししたいと思っています。つまり、保育者が子どもたちと関わる上で、一体どんなことを大事にしているのかという意図やまなざしのようなところですね。今日もまずはそこから話を始められたらと思っています。

  岩田:なるほど、具体的な手法の前提となる、目に見えない考え方についてですね。

堀内:ええ。その目に見えない部分、言い換えれば私たち専門職の「専門性」にあたる部分に触れずに、「こういうネタがあるよ」と具体的な遊びの引き出し例を紹介したとしても、その背景にある意図やまなざしが共有されなければ、十分に生かしきれないことがあります。

これは私自身が日々、園の現場に立ったり、あるいは様々な場所で研修の講師などを担当させていただいたりする中で、常々感じているところでもあります。ですので、今回は目に見えやすい具体的な「遊びのネタ」という要素とともに、「なぜそのネタをするのか」という目に見えない部分の意図やまなざしについてもセットでお話ししていく必要があるかなと思っています。

イラスト:髙橋正輝

指示命令の言葉と「遊び」の選択肢――日常の切り替えにおけるアプローチの違い

 岩田:今のお話は、まさに小学校の現場にとっても重要な指摘だと思います。私自身が知りたいと思っている最大のポイントも、幼児教育と学校教育との間にある子どもたちへの具体的な「働きかけの違い」にあります。

保育の現場であっても、小学校の現場であっても、目の前に子どもたちがいて、これから何か活動をするとか、こういう時間にしたいという、それぞれの教育的・保育的な「ねらい」をもって日々実践に臨んでいるという点では共通していると思います。しかし、何らかの活動を子どもたちにさせようとするときや、一定の目的に向かって子どもたちを活動に集中させようとするときに、小学校の先生が取る選択肢と、保育士さんが取る選択肢とでは、かなり違いがあるような気がしているんです。

堀内:選択肢の違い、ですか。

 岩田:ええ。例えば、子どもに特定の活動をさせるという場面に直面したとき、小学校では、ストレートに「これからこういう活動をするよ」と言葉で伝えたり、あるいは違うことをやっている子に対して「違うことはやらないよ」「こういう風にやるんだよ」というふうに、言葉の指示によって子どもたちを目的の方向へともっていこうとしがちです。しかし、保育士さんの場合は、その活動になかなか気が向かない子や、別のことに夢中になっている子どもたちに対して、直接的な言葉による働きかけ以外の、もっと別のアプローチの選択肢をたくさんもっているように見えるんです。

例えば、「じゃあ、まずはみんなで歌ってみようか」と始めてみたり、あるいはちょっと工夫を凝らして、子どもたちが自然と「おやっ?」とこちらを向くような、興味をひきつけるための仕掛けをしてみたり。そういった、遊びやリズムを介した多様な発想や引き出しが、保育の世界には豊かに存在していると思うんですよね。

一方で、小学校にはそういった「言葉による指示・命令以外の選択肢」というものが少ないように感じています。そのため、幼稚園や保育園、認定こども園で育ち、卒園してきたばかりの子どもたちが、小学校に上がった途端に、大きなギャップや負担が生じているのではないかと思うんです。

1年生の子どもたちは卒園してきたばかりですから、小学校でも最初は保育園や幼稚園で日常的に行われていたようなアプローチで入っていくことができれば、1年生のスタートがとてもスムーズに行くような気がしています。だからこそ、そうしたアプローチのすり合わせや、小学校の先生が保育から学べる選択肢について、ここで何か一緒に深めることができたら面白いかなと思っています。

堀内:ありがとうございます。今おっしゃっていただいたことは、本当にその通りだと思います。そして、例として挙げていただいた「歌を使う」といった関わりは、まさに子どもたちとの関係をつくっていくとき、もしくは一緒に「遊ぶ」時間を共有していくときに有効な一つの「引き出し」になると思うんですよね。こうした童謡や遊び歌といった文化的な「遊びの引き出し」を駆使するというのは、小学校の先生方でも、保育の実践から参考にして日々の学級活動に取り入れられることがあると思います。

 岩田:具体的には、どのような童謡や遊び歌が現場ではよく使われているのでしょうか。小学校の先生たちでもすぐにイメージできるようなものはありますか?

堀内:そうですね。私が園の現場などでよくやるのは、誰もが一度は耳にしたことがある『むすんでひらいて』という手遊び歌であったり、あるいは『おはながわらった』というような、親しみやすい童謡を使ったりします。また、私のオリジナルではありますけれど、『うさぎ、おさる、ことり』という、動きを伴うオリジナルの遊び歌を使ったりすることもありますね。それから、歌だけでなく、古くから親しまれている『だるまさんがころんだ』や『じゃんけん』といった伝承遊びなんかも、日々の活動の中によく取り入れています。

  岩田:その点について、ちょっと現場の実態に即して質問です。

例えば、小学校でよく起こる具体的な場面として、「授業の始まり」や「何かの活動への切り替えのタイミング」のときに、子どもたちが騒いでいて、なかなか静かにならないという状況があります。特に低学年の教室では、元気が有り余っていて、なかなか落ち着かない場面が見受けられます。そのときに、小学校の先生は、「はい、授業を始めるよ。静かにしなさい」「いつまでおしゃべりしているの?」「こっちを向いて」「おへそを先生の方に向けて」「背筋をしっかりと伸ばして」など、基本的に「言葉による指示」を出すことが多いです。これらは明確な指示であり、もっと言えば命令に近いメッセージでもあります。

一方で、保育園や幼稚園の保育士さんたちが、同じように何か次の活動を始めようとするときに、同じように子どもたちがにぎやかになっている場面に直面することもあると思うのですが、そのときに子どもたちの気持ちを向かせるために、「はい、こっち向くよ」というストレートな言葉を選択する保育士さんが多いのか、それとも何か言葉以外の選択肢から入るのか。そのあたりの、始まりの瞬間に、子どもを注目させるための保育士さんの「第一声」やアプローチについて、保育と小学校の現場での違いを含めて、ぜひ教えていただきたいです。

堀内:実は、その「にぎやかになっている子どもたちに対し、どうやって次の活動へと気持ちを切り替える支援をしていくのか」という点については、保育の現場であっても、やはり多くの保育者が日々悩んでいる共通の課題でもあります。ですので、保育の世界だからといって全員が遊びを通して関わっているわけではなく、やはり言葉によって指示的、あるいは命令的に「静かにしなさい」「こっちを見なさい」というような関わりを選択する保育者もいます。

その一方で、日頃から子どもたちと共感的な関係を築き、遊びの中でお互いの関係性を丁寧に作っていこうと考えている保育者は、やはりそのような場面であっても、指示命令の言葉を選ぶのではなくて、「遊び」という選択肢を選び、その中で子どもと関わっているように思います。そこは、個々の保育者の考え方によって分かれる部分でもあるので、小学校の現場における課題の構図とも、実はそれほど変わらないところがあるのかもしれません。

 岩田:なるほど、保育の現場でも全員が同じというわけではないのですね。ただ私の体感としては、小学校の場合はほとんどの先生が、まずは言葉の「指示」から入るのが日常になっている気がします。保育の現場では、そこまで指示命令ばかりというわけではないですよね。

堀内:そうですね、割合としてどちらが多いかと言われれば、保育の世界では「遊びを通して総合的に指導を行う」ということが、『保育所保育指針』や『幼稚園教育要領』などでも明確に示されています。ですから、少なくとも保育者養成の段階から「遊びを通した関わり」を学ぶ機会が位置づけられているという点では、遊びをベースに考える土壌があると言えると思います。

 岩田:例えば、保育士さんってピアノを弾きますよね。「このピアノの音が始まったら、これが次の活動が始まる合図だよ」というふうに子どもたちと約束がされていて、子どもたちもピアノの音を聞いた瞬間に「あ、次の活動へ切り替えよう」と思ったり動いたりする。あるいは、特別な道具がなくても、保育士さんが手拍子で「パン、パン、パン」とリズムよく合図を送ったら、子どもたちもそれを真似して「パン、パン、パン」と手拍子を返して、自然とこちらに注目が集まるような仕掛けがある。

そういった、子どもの身体感覚やリズムに訴えかけるような工夫は、小学校の先生よりも保育士さんの方が日常的に、そして上手に実践されている気がするんですよね。私のこの感覚は、保育の実際とズレていないでしょうか。

堀内:そうですね、確かにそういった手拍子や、ピアノを活用した関わりは、保育の現場で使われています。小学校の現場ではそういった関わりを取り入れている先生は少ないのでしょうか。

 岩田:小学校でもやっている先生はいますが、全体から見れば少数だと思います。例えば小学校だと、音楽科の先生がその指導技術を活用していますね。ピアノの合図で挨拶したり、学習道具を準備したりすることがあります。音楽やリズムは、気持ちよく集団をまとめたり、指示したりすることに役立つと感じます。

低学年の教室では、曲をかけて、「この曲が終わるまでに帰りの支度を終わらせるよ!」というような活用をしている先生もいます。それでもやはり、多くの教室では言葉での声掛けが中心ですね。

 堀内:なるほど。何と言えばいいのかな……。保育の現場で、例えば「今からお話をするよ」と子どもたちに伝えるとき、ただ単に言葉としてそのまま伝えるだけでは、子どもたちの気持ちがこちらに全く向かず、騒がしい状態が続くという場面は、もちろん私たちの世界でも普通にあります。そして、思わず「早くこっちを向いて!」と強い口調で言ってしまう保育者もいるように思います。

  岩田:やはり保育の現場でもそういう葛藤はあるのですね。少し安心したというか、親近感を覚えます。

堀内:ただ、良い関わりができている場面を振り返ってみると、一律に「はい、みんな今すぐ集合!」というようなやり方は選ばない。こっちが今から始めようとしている活動は「こんなに楽しいものなんだよ」ということを、まずは自分自身が楽しそうに遊びの中で表現し、遊びながら待つ、という感覚をもっているかもしれません。

 岩田:「遊びの中で表現し、遊びながら待つ」、ですか!

堀内:一斉に子どもたちをコントロールしようとするのではなく、楽しさの雰囲気を保育者のほうで作っていくようなイメージですね。

イラスト:髙橋正輝

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