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AIが一人一人の振り返りに自動でフィードバック!「=AI関数」を活用した「個別コメント・システム」の作り方

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子供たちが前のめりになる学級経営&授業アイデア
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自治的な学級をつくる12か月のアイデア
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宮城県公立小学校教諭

鈴木優太

あなたは、「=AI」(イコールAI)をご存じですか? 生成AI(Gemini)に装備されているこの機能を使えば、一人一人の子どもの振り返りに対して、即時に、全員に対して同タイミングで、適切なコメントを届けることができます。さらにそれらを評価や次の指導へと活かすことも可能になります。その画期的な「個別対応即時フィードバック・システム」の作り方をスモールステップで分かりやすく解説する必読企画です。

執筆/鈴木優太(宮城県公立小学校教諭)・大内秀平(宮城県公立小学校教諭)

はじめに

「今日の学習の振り返り、本当は一人ひとりにコメントをしたいけれど時間が……」

そんな悩みを抱えつつ、結局スタンプを押して返却するだけの「振り返りっぱなし」になってしまう。だったらそもそも「振り返らない」…という教室も、じつは少なくないかもしれません。

自分の言葉で学びを振り返ることは、思考の整理において非常に重要です。そこに適切なフィードバックが加わることで、子どもたちの気付きは広がり、学びは格段に深まります。

「理想はわかるけれど、現実的には難しい…」

毎日遅くまで学校に残って、一生懸命に赤ペンを握っている先生方にこそ、この提案をお届けしたいと思います。今回紹介する「=AI関数」を活用した自動フィードバック・システムが、現場の切実な声にお応えします。

1 振り返りをデジタル化せよ

最初のステップは、振り返りのプラットフォームを紙からGoogleスプレッドシート(↓)へと移行することです。1人につき1行を割り当てた名簿形式が、一覧性も高く最もシンプルに運用できます。

1人に1行の振り返りシート

紙からスプレッドシートへと移行することで、分かりやすく恩恵を感じられる点があります。それは、

自動で文字数をカウントしてくれるようになる

という点です。
そのために使うのが、「=LEN(数えたい文字列)」という関数です。「関数」と聞いて身構える必要はありません。暗記も不要です。「スプレッドシート 文字カウント」とWebで検索して、出てきた数式をそのまま数式バー(fxバー)にコピペするだけで準備完了だからです。

なぜ文字数を数えるのか。自分の書いた文字数が数字として見えると、「もっと書きたい!」という意欲に火がつくからです。結果として、学び方に対する実感や、次の振り返りをより良くするための気付きが表出する確率が大きく上がります。つまり、振り返りの「質」を高めるために、まずは圧倒的な「量」の発散が必要なのです。

定型文のようなかしこまった学習のまとめだけが振り返りではありません。「わかった・できた・楽しかった」だけで終わらない、子どもたちの生きた言葉を引き出すためには、こうした仕掛けが有効です。

Googleスプレッドシートであれば、端末の音声入力機能が使えます。実践してみると、低学年の子どもたちであっても、音声入力を活用することにより、驚くほどの量のアウトプットが可能になります。

これまで、このスプレッドシートを活用しつつ、次のようなフィードバックを行ってきました。

① 授業中にリアルタイムで相互参照する
② 次時に数名の振り返りをピックアップして紹介する

③放課後に読み返して学級通信に掲載したり、通知表所見に利用したりする

これらはどれも効果的な手法です。しかし、全員と個別にキャッチボールをする上ではどうしても限界があります。この「全員には返しきれない」という最後の壁を突破するため、いよいよここに「=AI関数」を組み合わせるのです。

2 =AI関数で、全員に個別のフィードバックを届ける

「=AI関数」を使えば、「全員には返しきれない」という壁を越えることができます。子どもたち一人一人の振り返りに対して、AIが個別のコメントを自動生成してくれるようになるのです。

入力する構文はとてもシンプルです。

=AI("プロンプト", セル範囲)
プロンプトを入力している画面


たとえば、次のように入力します。

=AI("小学生にもわかる言葉で,①良かった点を1つ具体的にほめる,②次につながる問いを1つ提示する,③否定的な表現は使わない,という条件でフィードバックを書いてください。", B2)

このように入力するだけで、B2セルに書かれた振り返りを読み取り、条件にぴったり沿ったコメントが瞬時に生成されます。

フィードバックのコメントが自動生成された画面

あとはオートフィル機能で、セルの右下の青点を下に向かってツーッと引っ張ってコピーするだけ。
たったこれだけの操作で、一括して全員分が完成します。30人全員に同じタイミングで適切なフィードバックが届く……。これまでの教室では物理的に不可能だったことが可能になりました。

セルの右下の青天を下に向かってドラッグ

                      ↓

あっという間に全員分のコメントが出来上がり!

=AI関数は、プロンプト(指示文)次第で出力を自在に操れます。つまり、教師の意図をそのまま反映することが可能です。

「理科の観察記録に特化した問い返しをして」

「自己評価が低い子には、特に励ます表現を使って」

「答えの正誤ではなく、試行錯誤したプロセスを具体的に肯定して」

「友達の意見を参考にしている記述があれば、その視点の広がりを高く価値付けて」

このような細かな調整も、プロンプトの書き方1つで自在にチューニングできます。
この最適なプロンプト自体をAIに生成してもらう「メタプロンプト」の技術をかけ合わせることで、その効果は最強になります。

もちろん、AIが出したコメントが、そのまま教師からの評価として子どもたちに受け取られるわけではありません。じつは子どもたちは、「これはあくまでAIからのフィードバックだから…」と割り切って、柔軟に受け取ってくれるのです。
もちろん初めは「生成AIがほめてくれた!」などと喜びますが、継続していくうちに変化が生まれます。

「今回はAIのアドバイスより、友達と考えたアイデアの方が良いかも」
「AIに頼らないで、自分で考えてみたいな」

教師は、このように自立に向かう子供たちの姿に学び、AIのフィードバックを「あくまで指導の一次対応」として活かす姿勢が重要です。
教師が全員分のAIコメントにサッと目を通すことで、「この子には自分の言葉で直接声をかけよう」「ペア活動で、人との壁打ちを意図的に設けよう」「ここは全体に少し補足しよう」といった見取りや判断をする際の精度が、これまで以上に高まるのです。
さらに言えば、今後、この即時性は授業の構造そのものも変えていきます。
これまでは授業の終末において学習を振り返ることが定番でしたが、これからは授業の「中間」で振り返り、AIのフィードバックを足場にして、子どもたちと後半の展開を考える――。そんな学びの姿もスタンダードになっていくかもしれません。

3 さらに広がる「=AI関数」の応用アイデア

「=AI関数」の可能性は、ただ個別にフィードバックを返すだけにとどまりません。プロンプトを変えるだけで、子どもたちの振り返りを「明日の授業づくりの素材」に変えることができます。

応用①|キーワード抽出により協働学習を仕組む

=AI("この振り返りの一番の『キーワード』を1つだけ抽出して", B2)
個別フィードバックのキーワードが抽出された画面

音声入力を生かして大量の文字が並ぶと、今度は「どこを読んだら良いかわからない」という新たな悩みも生まれます。そこで「=AI関数」を利用し、一人一人の振り返りからキーワードを抽出します。
さらに、キーワードの部分にソート(並べ替え)をかけます。 こうすることで、子供たち同士の「他者参照」が劇的にしやすくなります。 その後、同じキーワードを持つ子同士でグループを組んで深掘りし合ったり、あえて全く異なるキーワードを持つ子同士をペアにして意見をぶつけ合ったりします。
多様なペア活動や協働学習の仕掛けが、瞬く間にできてしまうのです。「=AI関数」を利用して、「思わず読みたくなる短いキャッチコピー」に変換するなどの工夫も楽しい実践です。

応用②|振り返りから「授業クイズ」をつくる

=AI("この振り返りで児童が抱いている疑問をもとに,次の授業の冒頭でクラス全員に投げかける『4択クイズ』を1問作成して。", B2)

「〇〇さんの疑問から、今日のクイズを作りました」

授業の冒頭でそう伝えるだけで、子どもたちは「自分の声が授業をつくっている!」と実感します。
振り返りの目的は、「次の学びをよりよくすること」です。次時の導入で、前時の振り返りが自然と活かされるこのような仕掛けを通して、子どもたちの参加意欲は目に見えて髙まっていきます。

応用③|ルーブリック評価の補助

=AI("この振り返りが,以下のルーブリックのどのレベル(A〜C)に該当するか判定し、アルファベット1文字と理由を簡潔に出力して。 【ルーブリック】 A: 既習事項と結びつけて、自分なりの考えを書いている B: 授業で学んだ事実を正確に書いている C: 授業の感想のみを書いている", B2)

膨大な記述を1つずつ目視で振り分ける教師の手間を、大幅に削減することができます。
「なぜその評価なのか」という理由も同時に出力することで、評価のブレを防ぐ客観的な指標となります。ルーブリック評価の自動化は、元の振り返りシートとは「別のシート」にコピーして行うのがおすすめです。
そうすることで子どもの目に評価のアルファベットが触れないようにできます。このような配慮により、安心して率直な振り返りを書ける環境を守ることができます。

応用④|前回との比較で「成長」を可視化する

=AI("前回の振り返り(C2)と今回の振り返り(B2)を比較し,知識がつながった部分や視点が豊かになった部分を1つ見つけて,『〜という見方ができるようになりましたね』という形で承認・評価して。", B2:C2)

参照範囲をB2:C2のように入力すると、B2とC2の2つのセルを同時に読み込むことも可能です。
「前回と比べてどう変わったか」を他者(AI)から具体的に言語化してもらうことで、子ども自身が自らの成長をハッキリと実感できます。点数ではなく、「見方・考え方の変容」を価値付けるアプローチです。

4 利用環境について

2026年3月末現在,Googleスプレッドシートの「=AI関数」を利用するには,「Google AI Pro for Education」などのライセンスが必要です。

「課金していないと使えないの?」
「うちの学校では使えないのでは?」

このように感じる先生も多いかもしれません。

しかし、状況は大きく変わろうとしています。Googleは、これまで一部のライセンス限定だったGemini機能を順次拡大していくと発表しました。つい先日もGoogleスライド上でGeminiが使えるようになるなど、日進月歩でアップデートが進んでいます。標準機能として誰もが利用可能になる日は、もうすぐそこまで来ています。

また、「Google Workspace Labs」に登録すれば、環境の制限にかかわらず、個人のアカウント等でAI機能を無料で試すことも可能です。「まずは自分で触ってみたい」という先生は、ぜひLabsへの登録を検討してみてください。

この実践がもたらすのは、単なる業務の効率化ではありません。振り返りを起点に、学びの質そのものが変わるのです。

①子どもたちが振り返りを書く
② =AI関数が全員に即時フィードバックを届ける
③教師がAIのコメントと合わせて、個別・全体の傾向を把握する
④ 見取りをもとに、本時や次時の手立てを調整する

この4ステップの循環が、これまでにないスピードと精度で回るようになります。生成AIは、決して教師の仕事を奪うものではありません。むしろ、「この子にどんな言葉をかけるべきか」を深く考えるきっかけを与えてくれる心強いパートナーです。

「AIがある前提で、子どもたちとどう関わるか」へと思考をシフトする時期に来ています。完璧なプロンプトを作ろうと身構える必要はありません。まずはAIを、「優秀な副担任」として迎え入れてみてください。

テクノロジーが担えるところはテクノロジーに思い切って任せ、教師にしかできない「目の前の子どもとの生きた関わり」に時間と労力を注ぎ直す。
「=AI関数」を通して、共に新しい時代の教室をつくっていきましょう。


鈴木優太(すずき・ゆうた)先生プロフィール
宮城県公立小学校教諭。1985年生まれ。2013年より教育サークル縁太会を主宰し、アイデアに富む教育実践と学びの場づくりに定評がある。最近著に『クラス全員が「聞ける」「話せる」!ペア活動図鑑100』(学陽書房・3月31日発売予定)があり、『教室ギア55』(東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)はベストセラーを記録。みんなの教育技術では5年にわたり連載を担当、現在は「子供たちが前のめりになる学級経営&授業アイデア」を連載。

大内 秀平(おおうち・しゅうへい)先生プロフィール
宮城県公立小学校教諭。1994年生まれ。文部科学省の在外教育施設派遣として、シンガポール日本人学校に3年間勤務。探究的な学びを軸に、総合的な学習の時間やICTを活用した授業づくりに取り組んでいる。Google認定教育者。共著に大野睦仁・鈴木優太編『どの教科でも通用する授業づくりのワザだけ集めました。』(明治図書出版)、阿部隆幸編『学級経営DX  60のエピソードで示すデジタル活用の実践』(学事出版)などがある。

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