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失敗しない「水泳指導、安全のための基本」完全ガイド(準備万全チェックシート2種類付き)

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学級経営「失敗しない」完全ガイドシリーズ
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埼玉県公立小学校教諭

紺野 悟

6月〜7月、水泳指導が始まります。今回は、安全確保を軸に学習環境を整える方法を、埼玉県公立小学校の紺野悟先生がガイドします。声の通らないプールサイドで声を張り上げたりマイクを使ったりしていませんか? むしろそれは危険な状態——地声でも子供たちが教師の指示に意識を向ける指導法、いざというときに人命救助が最短で最優先される合図の出し方を伝授します! トラブルを防ぐ着替えのポイント、安全管理のための授業タイムテーブル、組織的に安全な場をつくる教師の役割分担、それに加えて指導の「目標・内容・評価」の項目リストから、見学の児童が学習者として参加できる方法まで完全網羅。万全の準備で水泳シーズンを迎えましょう!(ダウンロードして使えるチェックシート2種類付き)

執筆/埼玉県公立小学校教諭・紺野悟

多面的に安全を確保する、水泳の学習環境づくりの方法を伝授します

いよいよ水泳の季節になりました。水泳の学習は事故が多い単元です。 毎年、どの学校でも、6月から7月にかけて、合計で10時間程度で計画、実施されています。学年まとめて授業することも多く、3人から5人の先生で100人余りの子供たちの安全を見守りながら授業を行います。 今回は、そんな水泳の授業について、指導の基本の基本を解説します。

なお、本記事では、 主に安全を確保する方法、学年で指導するときの役割分担、危険なく、かつ効率の良い学習環境を整える手立てを説明していきます。

泳力を伸ばす指導など、水泳指導については「みんなの教育技術」でたくさん紹介されていますので、そちらをご覧ください(下記リンク参照)。それでは早速見ていきましょう。

《参考》「みんなの教育技術」で紹介している水泳指導記事
水泳の学習は何から始めればいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #24】
プール授業を楽しくする水慣れ呼吸法! ~続・水泳初歩指導~
低学年の子を楽しく水慣れさせる水泳指導のポイント
苦手な子もぐんと上達!楽しく安全な水泳指導のポイント
泳げない子も水泳好きになる「ダンススイミング」のすすめ
グレーゾーンの子も安心できる!小学校の水泳指導の方法
プールや海の事故防止に関する記事6本まとめ(着衣泳ほか)

水泳指導の危険

水泳学習には多くの危険が潜んでいます。起きる可能性がある事故、けがには次のようなものがあります。

水泳で起きる事故・けが・トラブル
《水泳で起きる様々な事故の危険》
  • 溺れる
  • プールに落ちる
  • プールサイドで滑って転ぶ、頭を打つ
  • 水中で頭同士、顔面をぶつける
  • 水着がなくなる
  • タオルを巻いたまま階段で転ぶ
  • 教室で全裸で走り回る

これらに加え、複数の学級が集まっていることにより、水を掛け合って遊んでしまい、滑って転ぶなどの対人トラブルがきっかけとなる場合もあります

これらのように、他の単元では起こらないものが起こる可能性があります。様々なところに気を配り、安全に気をつけて実施したいものです。

水泳指導の基本原則

①笛は緊急時にとっておく

プールは、教室よりも大きな空間であり、野外であることが多いです。声が届きにくく、騒がしくなりやすい空間です。しかしあえてホイッスルは使いません。

ホイッスルは緊急時にとっておきます。

ホイッスルが鳴る=全員速やかにプールから出て、黙って並ぶ。

これは、何よりも大切な命を守るための手立てです。もしも溺れている子がいた場合、1秒でも早くプールから出す必要があります。

埼玉県のホームページには、「心停止状態になってから除細動を開始するまでの時間が1分遅れるごとに、生存率は7~10%低下します。」と書かれています(※)。つまり、1秒でも早く処置にかかる必要があります。

そんな緊急時を知らせる合図をホイッスルを鳴らすことだけで子供たちに伝えることができたら、助かる可能性はグッと上がります。

授業の中で使いたい気持ちも分かります。ですが、我々教師が授業中に出せる音は、ホイッスルか声しかありません。水泳は命の危険が高い種目である以上、いちばん音が出るホイッスルを緊急時に利用することの方がメリットが高いと言えます。

※《参考》AEDで命を救うために知っておいていただきたいこと(埼玉県ホームページ内)

②ハンドサインで指示をする

では、指示はどのように出すのでしょう。ズバリ、「ハンドサイン」「地声」です。

《水泳ハンドサイン》(イラスト提供:イラストAC)

【ハンドサインの例】

1:プールサイドに立つ
2:座って足を入れる
3:バタ足
4:自分に水をかける
5:入水して前を向く
0:スタート

目が悪い子がいて、ハンドサインが見えない場合もあるので、指導者は手を動かしながら、「指を変えましたよ!」とアピールしながら数を出していきます。動作でなんとなく伝わります。また、見えなくても、集中していれば隣の動きに合わせて動くことができるので伝わります。

何より安全に水泳の授業を行うための、視線を集めて集中する空間を作るには、見えない人もいるデメリットより、静かに、しゃべらなくても伝わるハンドサインの方がメリットが高いのです。 

③地声で話す

では、ハンドサインで伝えられない指示はどうしましょう。

ズバリ、地声でやります。
マイクでしゃべらないと声が通らないなら、そのまま水泳の授業を進める方が危険です。騒がしくて、話を聞いていない可能性があるからです。

確かに場が広くて声が通りにくいです。だからこそ、よく話を聞こうと意識する必要があります。教師も端的に明確な指示を出そうと意識します。

こうしてお互いに歩み寄ることで、授業が成立します。子供たちがよく聞こうとする、教師は伝わりやすい声、分かりやすい話し方をするよう努力する——この関係は当たり前のようで、マイクや様々な道具によって失われているようにも思います。せっかくなので、水泳の時間くらい、静かになるのを待って、自分の声で穏やかに指導してみましょう。案外、聞いてくれますよ。これを繰り返すことで、先生の声が聞こえるようにする=静かになって聞くようになります。

にぎやかな状態に対して、大きな声でふたをするより、静かにしてから話す方が伝わりやすいからです。

④教師の役割分担

緊急時の対応マニュアルがどの学校にもあると思います。教師の役割分担は、それだけではなく、水泳の準備から終わりまで組織的に取り組んでいきます。なぜなら、水泳の授業時間だけでなく、着替えの場面でもトラブルは起きやすいからです。

例えば、着替えの場面では、4人はこのように仕事を分担します。


執筆者:紺野悟(こんの・さとる)
埼玉の教育サークル clover 代表。イベントを数多く企画・運営し、価値ある教育情報を広めている。共著『全単元・全時間の流れが一目でわかる!社会科 6 年 365 日の板書型指導案』(明治図書出版)他多数。

イラスト/Remi ISHIZUKA

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