プリントの配り方:低学年でもできる速く確実な方法とは?
小学校のプリント配付、とくにプリントに慣れていない低学年のクラスでは、思わぬハプニングや時間のロスなどが生じてしまうのではないでしょうか。そこで、毎日配るべきプリントを速く確実に配るための秘訣を、初任者研修も担当する鈴木夏來先生に解説していただきます。
執筆/神奈川県立総合教育センター指導主事・鈴木夏來
まずは、あなたが日頃行っているプリント配付方法について、教えてください。次の項目で該当するものをチェックしてみてください。
3つ以上チェックがついた方は要注意です。実は、私がはじめて一年生を担任したとき、すべてに該当しました! 「このままではいけない。なんとかよい方法を探りたい」と試行錯誤の末に生まれた、プリント類配付のアイデアを紹介しますので、参考にしてみてください。
目次
A、責任者が配る
プリント類を配るときに何より大切なことは、責任者がいることです。責任者不在とは、例えば列ごとにプリント類を配る場合、1枚取ったら後ろに回していくようなケースです。この場合、次のようなことになりがちです。
▼「あるあるトラブル」事例
- 配られたプリントを読み入ってしまい、後ろに回すことをつい忘れる子がいる
- 「早く回せ」と後ろの子とトラブルになる
- 後方を確認せず手を離したため、プリントが床に落ちる
- 落ちたプリントを誰が拾うか言い合いになる
- 欠席の子の席にそのままプリントを置く
- 欠席の子の席でプリントの流れが止まる
- 家庭実数の場合、「もらわずに後ろに回すこと(=スルー)」が難しく、ついもらってしまう
- 最後まで届くのを確認していたら、最前列でもらった子が課題を終えていた
これらを防ぐには、責任者方式がおすすめです。
1、「列貫通配付」
列で1人責任者を決め、その子が列の必要数を担任まで取りに来て配ります。家庭実数や欠席の子のことも配慮して、責任を持って配ってもらいます。
2、「グループ配付」
班や話合いの机並びになっているときに有効な配り方が、グループ配付です。班長や副班長など班の責任者が、「3班です。5枚ください」と担任まで取りに来て配ります。
このように責任者方式にすることで、担任は一歩も動かず、プリントや手紙を正確かつ迅速に配ることができます。
B、第三者にも分かりやすくする
1、家庭実数は、第三者が分かるマークで表示
一年生の子どもに家庭実数の意味を理解させるのは大変です。やさしく説明して家庭実数の人に挙手させてみたものの、気がつけば、手紙が足りなくなり、職員室に予備をもらいにいくようなこともしばしば。このような場合は、「お家(うち)マーク」がおすすめです。
机の上の名札のそばや、机の前面などにこのマークを貼っておくだけです。 「お家マーク」を机に明示することで、家庭実数を「見える化」しています。本人はもちろん、第三者が家庭実数の手紙の必要について、容易に判断することが可能になります。
2、山折り&表題で検索スピードアップ
手紙・プリント類は、山折りにして連絡袋に入れるよう指導しましょう。文字や表題が見えるので、学校でも家庭でも、取り出す際、回収の際の検索スピードが上がります。“見えるようにしてしまう”ことが、子どもたちの習慣となります。
3、欠席した子の引き出しを机の上に出す
欠席した子どもがいる場合、欠席の連絡袋は下校時まで担任が預かっていることが多いので、子どもたちはそれまで手紙類を連絡袋に入れることができません。
その代わりに、机の引き出しを机上に出して、手紙類を入れさせます。カゴの代わりになり、床に手紙類が散逸するのも防ぎます。最後に担任や保健係が、連絡袋に連絡帳と一緒に入れるなどして取りまとめます。
また、この方法は、お家マーク同様、第三者が把握できるのでとても便利です。仮に担任であるあなたがいなくても、代わりの誰かが、欠席した子の手紙類を漏れなく揃えることができるということ。そこが引き出しシステムの最大の長所です。
C、「干物型配付」で、種類や順番を明示
連休前や週末には、学級通信・予定表・学校便り・チラシなど、多くの手紙類が配られます。種類・大きさが異なる複数の手紙を、すばやく、かつ正確に配付するアイディアもあります。例えば、週末に次のプリント類を配付するとします。
- 学級通信「なかよし」
- 学校だより「〇小だより」
- 宿題「ひらがなプリント」
- 献立表「給食だより5月号」
- 給食の支払い領収書(個人名入り)
- チラシ「水族館割引券」
- ベルマーク通信
- チラシ「サッカー教室のご案内」
- 学年通信「ひよっこ」
数えてみると、なんと9枚も! 「忙しい週末に、どうしてまとめて配るかな?」「一年生に手紙を配るのがどれだけ大変か、管理職はわかっているのだろうか?」と、ボヤきたくもなります。しかし、こんなときこそ、一年生担任の腕の見せどころです。
1 全員分と家庭実数分を仕分ける
まずは仕分けです。学校からの手紙は、クラス全員分のものと、家庭実数分(お家マーク)のものがあります。家庭実数分を誤って配付してしまうと、後で数が足りなくなって回収したり、職員室に取りに行ったりと一苦労です。ですから最初の仕分けがとても大切なのです。
A 全員に配付する=クラス全員分の枚数がある
B 家庭実数に配付する=クラス全員に配ると足りなくなる
上記の9枚は、次のように仕分けることができました。
A 全員に配付する
・学級通信「なかよし」
・宿題「ひらがなプリント」
・学年通信「ひよっこ」
・チラシ「水族館割引券」
・給食の支払い領収書(個人名入り)
B 家庭実数に配付する
・学校だより「〇小だより」
・献立表「給食だより5月号」
・ベルマーク通信
・チラシ「サッカー教室のご案内」
2 配る順番を決める
次に、配る順番を決めましょう。配ると同時に説明が必要なものは、先に配るのが基本です。チラシ等は後回し。配付するプリント類について、次のように並べ替えました。
▼配付順番(例)
- A学級通信「なかよし」
- A宿題「ひらがなプリント」
- A学年通信「ひよっこ」
- B学校だより「〇小だより」
- B献立表「給食だより5月号」
- Bベルマーク通信
- Aチラシ「水族館割引券」
- Bチラシ「サッカー教室のご案内」
- A給食の支払い領収書(個人名入り)
3 マグネットクリップで掲示する
何を配るのか、口で言っても一年生にはなかなか伝わりません。なので、ひと目でわかるように、同じものをマグネットクリップなどで挟んで、黒板に貼っておくとよいでしょう。配られたプリントの種類について、色や形、大きさで一年生は見分けます。
4 手紙に番号を振る
黒板に掲示したプリント類には、さらにチョークで番号を振っておきましょう。「〇小だより」というよりも、「4番の手紙」のほうが確実です。子どもも「先生、4番の手紙が足りないので、もう1枚ください」というように、こちらに伝えるのが容易になります。具体的な番号によって、伝達ミスによる誤配付のリスクを摘んでいくのです。
5 誰が配付の責任者か明示する
数種類のプリント類を、それぞれ誰が配るのか、黒板に明示します。チョークで責任者を記しておきましょう。私の場合、班長と副班長に交互に取りに来てもらいます。班長は「は」、副班長は「ふ」と省略して黒板に表記。「くばリーダー」が配るのであれば、くばリーダー1号と2号を設け、「く1」「く2」などと黒板表記しましょう。
なお、個人名の入った給食の領収書は、番号順に取りに来させたり、手の空いている子に配らせたりします。「未納」の領収書など、配慮が必要な場合は、担任が渡しましょう。
「干物型配付」の声かけ例
上記イラストのように黒板に掲示すれば、プリント類の配付はほとんど終わったようなもの。多くの声かけは要りません。次のようにして、順番に取りに来させましょう。
「本日のお手紙はなんと、9枚もあります」
「1番、学級通信。班長さんおいで」
「次、2番、宿題。副班長さんお願いします」
「5番、献立表。お家マーク。班長さんどうぞ」
というように、1番から順に、班の代表者に取りに来させます。班長や副班長は、次のように担任に声を掛けます。
「1番を5枚ください」
「5番はお家マークなので、2枚ください」
担任は、班長や副班長が言う番号の手紙を枚数分数え、渡していきます。家庭実数の数や、欠席者の数を気にせず、スピーディーに配ることが可能です。
慣れたら、学級委員に委任
プリント類の配付に慣れてきたら、最終的には学級委員に任せてみてもよいでしょう。上記のように黒板に掲示し板書したり、プリントの枚数を数え班長・副班長に渡したりと、一連の配付を任せてみましょう。
イラスト/川野郁代
『小一教育技術』2016年5月号より