「片足踏み切り―両足着地」を習得する効果的な教材って何? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #62】

連載
使える知恵満載! ブラッシュアップ体育授業

小学校教諭

平川 譲
使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業

走り幅跳びの「助走から片足で踏み切って、両足で着地する」という動きを難しいと感じる子は、一定数存在します。今回は「片足踏み切り―両足着地」を楽しく身に付けるために効果的な、低〜中学年向けの教材「川とび」を紹介します。

執筆/群馬県公立小学校教諭・栗原章滉
監修/筑波大学附属小学校教諭
 体育授業研鑽会代表
 筑波学校体育研究会理事・平川譲

1.場の設定

下の図のような場を設定します。単元のはじめは助走のスタート位置を3m程度にします。踏み切り位置はラインで示すのではなく、ベースを置きます。ベースにすることで、踏み切り位置がより分かりやすくなります。ゴム紐を「川」に見立てて約50㎝おきに配置します。ゴム紐の「川」をとび超えるので「川とび」です。1本目のゴムはベースから1〜1.5mとします。詳しい場の設定については#23<走り幅跳びの授業 学習の場やマネジメントはどうしたらいいの?>をご覧ください。

図説1 場の設定

2.行い方と運動のポイント

⑴ 行い方

最初は合図でスタートする(慣れるまでは教師が安全確認してから合図するとよい)
助走して、ベースを踏んで片足で踏み切り、両足で着地する
ベースはどこを踏んでもよい(ベースよりも先につま先が出ていてもベースを踏んでいればよしとする)
着地したら砂場を横切らず、まっすぐ進み、正面から砂場を出た後に回って戻る
前の人が砂場から出たら次の人がスタートする

⑵ 運動のポイント

① 助走の距離を3m程度として、踏み切りをしっかりと合わせる
② ベースを強く踏み切る
③ 空中では体を「く」の字にする
④ 膝をやわらかく曲げて両足で体を「ん」の字にして着地する

空中姿勢を「く」の字、着地姿勢を「ん」の字と表現することで、子どもたちが動きをイメージしやすくなります。

図説2 空中姿勢と着地姿勢

3.活動の流れ

⑴ ゴムを踏んでみよう

最初は1m、または1.5m地点にゴム紐を1本張り、そのゴムを越えるのではなく、両足でちょうど踏めるように跳びます。いきなり越えようとすると勢いがつきすぎてしまったり、片足で着地したりしてしまうことがよくあります。まずは短い助走でとにかく片足でベースを踏み切って両足で着地することを意識させましょう。うまくいかない場合には、砂場から助走位置に戻る際に、3〜5歩走って、片足踏み切り、両足着地を繰り返すように指導します。
踏み切りと着地ができているか確認するために、#2<体育の学習班>を利用して、跳ぶ班と判定する班に分けます。判定する班は、ベースの脇で踏み切りの判定と、ゴム紐の横で着地の判定をします。合図は「アウト・セーフ」と声を出したり、「○・×」を手で作ったりするようにしましょう。「アウト」や「×」の失敗の判定は、優しく伝えるように指示するとよいでしょう。踏み切りと着地の両方ともセーフであれば成功です。4〜5分程度で交代し、何度も繰り返し跳べるようにしましょう。

⑵ ゴムを越えてみよう

活動に慣れてくると「もっと遠くに跳びたい」という声が上がってくるので、より遠くに跳ぶことを目標にします。ゴム紐を斜めに張り、近い方から遠い方にかけて得点が大きくなるようにします。こうすることで、目標をもって取り組めますし、個に応じて場が選択できるようになります。

⑶ 何本目まで跳べるかな? 

次に、ゴム紐を3本程度張り、何本目まで跳ぶことができたかで得点化します(→#32「どの子も達成感を味わえる川跳び・走り幅跳びの授業は、どうしたらいいの?」参照)。
高い点数を取ることができている子どもを観察させ、動きのポイントを確認しましょう。空中姿勢で「く」の字ができていること、着地の時にしっかりと膝を曲げて「ん」の字ができていることなどを確認し、意識して取り組むように指導します。
活動していると、遠くに跳ぶために助走距離を長くして、歩幅が合わなくなるということがよく見られます。助走は5〜10m程度に制限して、確実に踏み切りが合うように指導しましょう。

図説3 場の設定のパターン

⑷ 記録の足し算

授業の最後には自分の最高得点を記録します。また、班やクラスの得点を合計して毎時間記録することで、クラス全体の成長を実感することができ、意欲を高めることもできます。 詳しくは#17「運動の記録を活用するにはどうしたらいいの?」をご覧ください。

4.まとめ

「片足踏み切り―両足着地」は何度も繰り返すことで、確実に身に付いていきます。どこまで跳べたか得点化することで、飽きずに楽しみながら技能を身に付けることができます。ぜひ、「川とび」を行ってみください。

【参考文献】
筑波大学附属小学校体育研究部(2017)『1時間に2教材を扱う「組み合わせ単元」でつくる 筑波の体育授業』明治図書出版
木下光正(2009)『とってもビジュアル!筑波の体育授業・低学年編』明治図書出版

イラスト/佐藤雅枝

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執筆
栗原 章滉
群馬県公立小学校 教諭
1996年、群馬県伊勢崎市生まれ。運動が得意な子も苦手な子もみんなが楽しめて、「できるようになった」という成果を実感できる体育授業を目指し、日々研鑽中。


平川譲教諭

監修
平川譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。


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