「S字フックで掃除ロッカーを整理整頓」自治的な学級をつくる12か月のアイデア#10

連載
自治的な学級をつくる12か月のアイデア

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
連載「自治的な学級をつくる12か月のアイデア」執筆/鈴木優太

子供たちが主体的に学び合い、話合い活動を通して自分たちの力で問題を解決していく、そんな学級をめざしたいもの。この連載(月1回公開)では、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)などの著書をもつ鈴木優太先生が、自治的な学級をつくるための授業や特別活動のアイデアを紹介します。第10回は、S字フック、ビニールテープ、つづりひもを活用した掃除ロッカーの整理整頓術です。

執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太

同じ規格のS字フックを多めに用意しておく

教室の掃除ロッカーを開けてみてください。日頃の子供たちの清掃活動の取組が最もよく見える場所です。子供たちの手で清掃用具を整えられる環境になっているでしょうか?

美しい掃除ロッカーのためのポイントはたった一つ。「S字フック」です。

S字フックを利用して整理整頓された掃除用ロッカー

S字フックの
数が足りない…。
歪んでいる…。
大きさがばらばら…。

上記のような理由から、雑然としてしまっている掃除ロッカーが学校には実に多いもの。一度、校舎中の掃除ロッカーを見てまわってください。特に、廊下や特別教室が鬼門です。

掃除ロッカーの「S字フック」は事務職員に相談し、同じ規格で十分な数を購入してもらいましょう。

滑り止めのコーティングがしてある「S字フック」(下の写真参照)もあります。身長の低い低学年でも掛けやすいのが特徴で、100円ショップなどでも手軽に手に入ります。

「S字フック」を統一するだけで、掃除ロッカーが見違えるように美しくなります。子供たちがほうきを「掛けて戻す」ようになるからです。自在ほうきを丁寧に扱うようになり、日頃の所作が激変した子もいます。清掃用具が整っていると、整った気持ちで清掃活動に取り組むことができるのです。環境が人を育てる良例です。

同色のビニールテープを貼るだけで「掛けて戻す」が身に付く

「S字フック」とそこに掛ける掃除道具に同色の「ビニールテープ」を貼ります。

「掛けて戻す」という意識が子供たちに身に付くアイデアです。

S字フックとそこに掛ける掃除道具に同色のビニールテープを貼るだけ。これだけで掛けて戻すが抜群に身に付く。
S字フックとそこに掛ける掃除道具に同色のビニールテープを貼るだけ。これだけで掛けて戻すが抜群に身に付く。滑り止めのコーティングがされているS字フックを使用。

しかし、大切なことがあります。「掛けて戻す」が習慣化したら「ビニールテープ」を外すことです。

自転車に乗れるようになったのに、いつまでも補助輪を付け続けることはありません。必要がなくなったものは、惜しまずなくしていくことがとても大切です。

このように、「ゴール」を思い描いて取り組み始めることが教育実践では極めて重要です。例えば、1か月間限定と期間を決めて子供たちと取り組みましょう。本物の力を育てることが私たちの使命です。

そして、付け焼き刃の効果の薄い実践にしないためには、「S字フックに掛けるのは、何のため?」を子供たちと考えることです。

自在ほうきが美しくそろった掃除ロッカー

ほうきは毛先が床に着いたままにすると、毛が痛みやすくなってしまいます。道具を長持ちさせるためにも、ぶら下げ収納が欠かせないのです。

そして、ぶら下げたほうきの下に、バケツまで収納できます。掃除ロッカーの収納力を最大限に引き出すことで、掃除がやりやすくなるのです。

また、ほうきの毛先にアライン線(見えない線=別名:整列線)を感じるため、私たちは美しさを感じ、気持ちよく清掃活動に取り組めます。

「S字フック」が揃っていることの利点や、清掃道具を掛けることの理由を子供たちと共有します。「何のためだと思う?」と尋ねてみましょう。子供たちはけっこう言えるものです。納得した子供たちは真剣に清掃活動に取り組みます。

S字フックに掛けられない道具には「つづりひも」を活用

学校現場におけるぶら下げ万能アイテムが「つづりひも」です。

ほうき類は様々な種類があり、つづりひもを通さないと「S字フック」にぶら下げることができない柄もあります。

本来「つづりひも」は、書類を束ねるための道具です。ぶら下げて使用するには、そのままでは長過ぎます。今すぐ、「ぶらつかないつづりひも」に改造しましょう。

S字フックに直接掛けられない道具には、つづりひもを通して掛ける。短く「ぶらつかないつづりひも」にすることがポイント。
S字フックに直接掛けられない道具には、つづりひもを通して掛ける。短く「ぶらつかないつづりひも」にすることがポイント。

つづりひもは「短く」結びます。上の写真の輪っか部分は2~3cm(指2本分)です。書類を束ねる本来の使い方では、結ぶ、ほどくを繰り返します。ぶら下げて使用する場合はほどくことはありませんから、余分なひもはハサミで切り落とします。「ぶらつかないつづりひも」にするこのひと手間で、収納時の安定感が大きく増します。見た目もスマートです。「S字フック」と同じ理由で、長さはぴったり揃えます。

しかし、あえて、「ぶらつくつづりひも」を重宝してきた理由もあるでしょう。それは、1つのフックにいくつも重ねてぶら下げられるからです。フックの数が十分でない場合に有効でした。……であるならば、前述したようにフックの「数」を増やしましょう! 事務職員に今すぐ相談です。

フックと掛ける物は「1対1」が原則です。余分な清掃道具が多過ぎることも、掃除ロッカーを子供たちの手で管理しきれない要因になってしまっています。

掃除道具=つづりひもという、「つづりひもバイアス」にとらわれていたかもしれない先生は、ぜひ掃除ロッカーを眺めながら考えてください。

つづりひもがないほうが、実はすっきり収納できる清掃用具もたくさんあります。通さないとぶら下げることができないものにだけ、つづりひもは使用しましょう。ひもがぶらぶらしていないだけで、掃除ロッカーを開けた時の印象は大きく変わります。

ロッカーの形状や収納する道具に応じてS字フックと取り付け式のフックやつづりひもを使い分けよう。
ロッカーの形状や収納する道具に応じてS字フックと取り付け式のフックやつづりひもを使い分けよう。

掃除ロッカーを美しく保つカギは、「S字フック」が握っています。開けた瞬間に、掃除をする気持ちがくじかれてしまう残念な掃除ロッカーではいけません。子供たちの手で管理できる掃除ロッカーが、掃除に取り組む子供たちを育てます。


鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。

参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)、多賀一郎監修、鈴木優太編、チーム・ロケットスタート著『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク 』(明治図書出版)

【鈴木優太先生 連載】
子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)

【鈴木優太先生 ご著書】
教室ギア55
「日常アレンジ」大全
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク

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