【木村泰子の「学びは楽しい」#20】「不登校約30万人、前年度比2割増で過去最多」という事実と、あなたはどう向き合いますか?

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木村泰子の「学びは楽しい」【毎月22日更新】

大阪市立大空小学校初代校長

木村泰子

2022年度の小中学校の不登校児童生徒数は、過去最多の約30万人だったとの調査結果が報告されました(2023.10.公表)。今回は、この現実に私たちはどう向き合うべきかを一緒に考えていきます。(エッセイのご感想や木村先生へのご質問など、ページの最後にある質問募集フォームから編集部にお寄せください)【 毎月22日更新予定 】

執筆/大阪市立大空小学校初代校長・木村泰子

イラスト
イラスト/石川えりこ

「不登校」を当たり前にしてはいけない

苦しんでいる子どもに対し「不登校」という失礼極まりない言葉をつきつけ、児童生徒数の減少が続く中で特例校や受け皿をどれだけつくっても、「不登校」の数は増加し続けています。この子どもの事実をどのように考えますか。

そのうちに、学校に来ている子どもの数のほうが少ないという信じられない現象が起きてしまうのではないかと危惧します。子どもを主語に現在の学校の当たり前を問い直し、すべての子どもの学習権を保障する学校づくりが急務です。

学校は「子どものために」と指導していますが、子どもの事実はそうではない結果が生じているのです。「不登校」は学校の当たり前ではありません。学力や生活指導やルールや学校の評価などではなく、「人権」を視点に子どもの事実を真摯に受け止めると、学校が変わらなければならないことに気づくはずです。

学校が何よりも優先するのは子どもの「人権」です。

ある子どもと先生のメッセージから

1人の子どものメッセージを紹介します。

学校という牢獄に通うということ

何も悪いことをしていないのに刑務所行きだと言われること

「みんなと同じようにして学校にいなさい」と言われること

ほとんどの人にとって学校が刑務所でないからこそ気軽に言えること

当事者からするとありのままの自分を真っ向から否定される場所

「人に迷惑をかけるな」「周りと同じようにしなさい」

ありのままの自分でいることの罪を償えと言われているような

暗くて重いプレッシャーを背負いながら、学校に通い続けることがどれだけ難しいか 

そのストレスはなにも学校に行かなくなったからといって消えるものでもなく

一人一人の意識から変わっていかないとしんどい子はいなくならないと思う

(2022.11. 高2)

この子のメッセージは全国の「不登校」のレッテルを貼られている多くの子どもたちの思いを言葉にしているように感じます。みなさんはどのように受け止めますか。

次に、読者の方が「子どもを主語」に学びの改革途上の職員室の困り感を届けてくださいましたので、紹介しましょう。

ここ4、5年で学級の子どもの様子が一気に様変わりし、これまで数十年かけて積み上げてきた自分の授業や指導が通用しないことを受け入れ、0からやり直さなければと思いました。

自分の力に限界を感じ教員をやめようとも思いました。しかし、ちょっと支援を変え、自分の考え方を変えて子どもに接すると、子どもたちがなにかしら変わってくれることも実感し、今一度ふんばってみようと思いました。特別支援の重要性を感じ、昨年度からは特別支援学級を持っています。

今年度異動して新しい勤務先に行くと、昭和の指導と言いますか、まだこんなことを? 子どもが納得して守っているか? 本当にさせなければいけないこと? と思うことがたくさん。子どもたちは教室から飛び出す、かんしゃくを起こす、寝転がる……。

年齢的に学校全体を考えて動く立場にあり、新しい職場でどうにかしてとの圧を感じるものの、「すべきことをちゃんとさせなければ!!」との風潮に異議を唱えることが難しく、少しずつ子どもを主体にシフトをと意見していますが、自分の学級の子どもとの授業も大切で、それにも可能な限りの時間をさき、力不足を毎日感じています。

どうしたら職員の意識を変えられるか、実践に向かってもらえるか、よきアドバイスをお願いします。

2006年の大阪市立大空小学校の開校時に、まったく同様の困り感をもちました。しなければならないことをさせようとすればするほど子どもは教室から飛び出す、暴れる……。まるで同じでした。これまで培ってきた指導力って何なのだろうと、ベテランの教員たちはやめたくなるくらい困りました。

そんな時、1人のベテランが「これまでの指導力って、子どもを洗脳する力やったのかな」とつぶやいたのです。彼女の言葉はその当時のベテランと言われる教員たちに突き刺さりました。もちろん、私自身も同様でした。そこから、学びって子どもを変えることではなく、自分が変わることなんだと腑(ふ)に落ちた気がします。

1人でやらなくてはと思っていた私たちが、1人でできる仕事ではないと自覚しました。そこから職員室の大人たちが手をつなぐようになりました。「困る子」だからちゃんとさせなくてはと指導していた私たちが、子どもを主語に問い直すことが当たり前になったのです。「困る子」ではなく「困っている子」と気づいたのです。困っている子が困らなくなる学校を、子どもの周りの様々な大人のチーム力でつくろうと、「みんなの学校」づくりが始まりました。

「ルール」を守る子どもではなく、「ルールをつくる」子どもに

大人の意識を変えることは難しいです。意識が変わらなくても行動を変えればよいのです。

先生の言うことを聞く子どもを育てる時代ではありません。子どもは理不尽だと思っているのです。理不尽なことを我慢して行動させるのではなく、理不尽なことを問い直し行動できる子どもが育たなければなりません。「ルールを守る子ども」ではなく、誰もが安心して学び合える学校をつくるための「ルールをつくる子ども」が育つために学校があるのです。誰一人置き去りにしない社会をつくる大人になるために、学校での学びがあるのですから。

気づいていない先生たちがいるのが、まだまだ日本社会の学校現場では当たり前なのです。「人権」を視点に日々の大人の言動を問い直すことが急務です。子どもの事実に学ぶ大人がガンガン行動すればいいのでは!!

〇「不登校」前年度比2割増、過去最多という事実を真摯に受け止め、子どもの「人権」を視点に学校の当たり前を問い直そう。
〇誰一人置き去りにしない社会をつくる大人になるために、「ルールを守る子ども」ではなく、誰もが安心して学び合える学校をつくるための「ルールをつくる子ども」を育てていこう。
〇学びとは、子どもを変えることではなく、自分が変わること。子どもの事実から学び、自らの行動を変えていこう。

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※木村泰子先生へのメッセージを募集しております。 エッセイへのご感想、教職に関して感じている悩み、木村先生に聞いてみたいこと、テーマとして取り上げてほしいこと等ありましたら、下記よりお寄せください(アンケートフォームに移ります)。

 

きむら・やすこ●映画「みんなの学校」の舞台となった、全ての子供の学習権を保障する学校、大阪市立大空小学校の初代校長。全職員・保護者・地域の人々が一丸となり、障害の有無にかかわらず「すべての子どもの学習権を保障する」学校づくりに尽力する。著書に『「みんなの学校」が教えてくれたこと』『「みんなの学校」流・自ら学ぶ子の育て方』(ともに小学館)ほか。

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