作品展や参観掲示におすすめ!アボリジナルアート
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クラスには、絵を描くのが得意な子どもと、苦手な子どもが当然います。また、最後まで丁寧に取り組む子どもと、丁寧な作業を続けるのが苦手な子どももいるでしょう。今回は、そんな個人差を埋める「アボリジナルアート」を紹介します。どの子どもも熱中して取り組むことができて、素敵な作品に仕上がること間違いなしです!
指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。
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目次
【1】アボリジナルアートとは
アボリジナルアートを知っていますか? 百聞は一見にしかずです。まずは、子どもたちが描いたアボリジナルアートをご覧ください。(2022年度4年生の1学期に取り組んだものです。保護者の了解をもらって紹介いたします)
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いかがですか? テーマも、構図も、色使いも個性が出ていると思います。
アボリジナルアートは、オーストラリアの先住民族、アボリジナルピープルが伝統的に作っている、たいへん美しい芸術がもととなっています。アボリジナルピープルの文化は、現存する文化の中で最古のものだと言われており、世界中のアートコレクターからも人気を集めているそうです。
アボリジナルアートの最大の特徴は、ドットペイント(点描)です。子どもたちが図工の絵を描くときに使う「点々塗り」(点描)の技法も、アボリジナルアートが起源とも言われています。
【2】準備物
- 絵の具
- 綿棒
綿棒は普通サイズと、大きいサイズを用意しましょう。大きいサイズの綿棒だと、点の大きさも大きくなるので、点描が楽です。 - 四つ切りの色画用紙
黒色・紺色・黄土色・水色・茶色・薄黄色がおすすめです。絵具に水をほとんど混ぜず塗るので、黒色などの濃い色画用紙が映えます。自然をイメージした、茶色系(土)、青系(空や海、川)の色画用紙もおすすめです。子ども一人ひとりがどんな動物を中心に描くかによって、背景となる色画用紙も子ども一人ひとり変わってきます。それも個性が出て、楽しくなります。
【3】指導の手順
❶解説動画と制作動画を見せて、見通しをもたせる
子どもたちに、いきなり「今から、アボリジナルアートを描くよ」と言っても、アボリジナルアートが何のことだか分からないでしょう。そこで、前述した「アボリジナルアートとは」の内容を話すとともに、YouTubeを見せて、アボリジナルアートの具体的なイメージをもたせました。
ワンロード:市原展トレイラー – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Xs1e19krbCg
先ほど紹介した、私の学級の子どもたちの作品を見せるのもいいと思います。私は、「アボリジナルアート」でキーワード検索して、作品例として様々なアボリジナルアートを子どもたちに見せました。
そして次に、どうやって描くのかが視覚的に分かる動画を見せました。
【誰でも簡単!】絵具と「あるモノ」を使ってアボリジナルアートを作ろう! – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=kuDru17ZjEY
クラスには、不安傾向の強い子どもや、自信をもちにくい子どもがいるかと思います。上の2つの動画を見せて見通しをもたせることで、安心して活動することにつながりました。
❷描きたい生き物を決めて、デザイン図を描く
アボリジナルアートでは、生き物や、海や山などの自然が描かれます。子どもたちには、動物を中心に描くように言いました。動物だったら、昆虫でも、魚でも、鳥でもなんでもいいと思います。どんな動物を描くかは、子どもたちに任せましょう。
絵画指導によっては、クラス全員の子どもたちに同じ対象物を描かせることもありますが、ここでは、子どもたちに描きたい動物を考えさせます。一人ひとり描く動物が違うので、子どもの個性が一層出やすくなります。
描きたい動物が決まったら、デザイン図を描きます。
デザイン図
- 八つ切り画用紙を4等分した紙に描く
- 紙の向きは、縦でも横でも構わない
- 鉛筆で描く
- 早く終わった子どもには、色鉛筆で塗らせて時間調整をする
次の写真は、デザイン図と完成作品です。
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❸4つ切り画用紙に描く
クラスの半分ぐらいの子どもがデザイン図を描き終えたら、四つ切り画用紙に描くようにします。
鉛筆で下描きをしてもよいし、直接、綿棒で点描してもOKです。
そして、「綿棒で点描しながら、始めの構想から、どんどん構図や色使いを変えていってもいい」ということを伝えました。そのときそのときの直感を大切にして、描き進めていきます。
下の2枚の写真をご覧ください。デザイン図と完成作品は、構図も色使いも全然、違っています。(画用紙の向きも縦から横に変更しています)
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作品を描き進めるにあたって、私が毎時間、子どもたちに伝え続けたことは、次の3つだけです。
- ていねい
- ぎっしり
- 濃く(水を混ぜない。混ぜてもほんの少しだけ)
上の作品のトカゲは、意図的に下地の黒画用紙の色を残しています。まわりが点描で塗られているから、この黒色のトカゲが際立っています。
でも、単に点描をするのが面倒くさいからという理由で、下地の色画用紙の色を残してしまうのは、とても残念です。
「先生、終わりましたー」と言って子どもが持ってきた作品を見ると、ほんの少し点描しただけ、ということがあります。そんな場合は、めあての「② ぎっしり」を子どもに伝えるようにします。
ただ、この「ぎっしり」は、あまり言いすぎるのもよくありません。
真面目な子どもは、「画用紙の全面を点描で塗りつぶさないといけない」と思ってしまうのです。そう思ってしまうと、作品を完成させるのにとても時間がかかります。何より、義務感や強制感をもってしまうと、楽しくありません。この「ぎっしり」についての言葉がけは、子どもたちの特性を配慮することが必要です。
完成までの過程
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<目立たせたいところは、輪郭線を点描する>
子どもたちの作品を見て気づくかと思いますが、目立たせたいところ(生き物)は輪郭線で点描しています。濃い色で塗っている場合は、白色などの淡い色で縁取りしています。
ただ、縁取りするかしないかは子どもに任せました。子どもが描きたい作品のイメージを大切にしたいからです。「〇〇しなければならない」と子どもが思ってしまうと、意欲が下がってしまいます。
【4】アボリジナルアート制作の3つのメリット
❶塗り進め方も、子どもそれぞれでよい
先の制作過程の写真は、全体的にまんべんなく塗っていくタイプでした。下の写真もそうです。
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この塗り進め方の他に、一つひとつ集中的に仕上げていくやり方もあります。次の写真をご覧ください。
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どのように塗り進めるかなど、教師が逐一、指示しなくてよいところも、アボリジナルアートの魅力です。どこから塗るか、どんなふうに塗り進めるかを決めるのは、子どもの感覚次第です。
「描く内容」だけでなく「描く過程」も自由度が高いところが、アボリジナルアート制作の魅力の一つです。教師の逐一指導による「やらされ感」がとても少なくて済みます。
❷得意・苦手の個人差が出にくい
綿棒ではなく筆で点描をすると、個人差が大きく出ます。絵が苦手な子ども目線で考えると、個人差が出る理由は、次の3つです。
- すぐに仕上げたくて、ものすごく大きな点で塗ってしまう。
- すぐに仕上げたくて、点描をせずに、べた塗りをしてしまう。
- 絵の具に水を混ぜすぎて、せっかく点描しても、点描で塗ったところ同士がくっついてしまう。
綿棒で点描すると、上の3つの課題が解消されました。綿棒だと、綿棒の大きさでしか点描できないからです。べた塗りもできません。水を混ぜないので、塗ったところ同士がくっついてしまうこともありません。
❸早く仕上がった子どもの時間調整がしやすい
たくさんの子どもたちがいる教室だと、どうしても、早く作品が仕上がる子どもとそうでない子との時間差が生じます。「もう少し、ここ塗ってみたら?」などとアドバイスをしながら完成を引き延ばすこともあるのですが、限界があります。
早く描き終わった子どもに別の課題を用意するのですが、困ったことが起きることがあります。まだ作品が完成していない子どもが、別の課題をやっている子どもを見て「いいな~! 自分もやりたいな~」と羨ましがって、作品を適当に仕上げてしまうのです。子どもらしいと言えば、子どもらしいのですが……。
そこで、作品が完成した子どもは、まだ頑張っている子どものお手伝いをしてもいいことにしました。(もちろん、作品を描いている本人の了解をもらってからです)
筆で塗る場合だと、筆のタッチで、あきらかに本人とは違う塗り方になってしまいますが、綿棒の点描だと、ほとんど同じ塗り方になります。
「ここは、茶色でお願い♪」
「じゃあ、ここは青?」
「うん、ありがとう♪」
など、楽しく会話しながら描くことができ、より早く完成につながることにもなりました。
出来上がった作品を見て、その「アートっぽさ」あふれるカッコいい出来栄えに、子どもたちもテンションが上がるかも! アボリジナルアート、ぜひ取り入れてみてくださいね♪
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松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ 横井智美