小学算数「構造的板書」の工夫とコツ(図形の面積/プリント学習の時間)

特集
樋口綾香&樋口万太郎夫妻が解説! 国語・算数 伝わる板書のルール

香里ヌヴェール学院小学校 教諭兼研究員

樋口万太郎

スッキリした分かりやすい構成で、子どもたちに伝わりやすい板書の書き方を目指す本シリーズ。今回は、小五の算数の「図形の面積」をテーマにして、 樋口万太郎先生(京都教育大学附属桃山小学校教諭)に、 複数の考え方を関連付け、比較しやすくするための構造的板書について解説していただきます。特別編として、プリント学習の時間の板書についてのご紹介もあります。ぜひご参考になさってください。

樋口万太郎先生
樋口万太郎先生 撮影/水本克美(桑島写真スタジオ)

算数スキル1:意図的にスペースを空けて描く&考え方を並列に並べる

2つのポイントを組み合わせています。1つ目は「意図的にスペースを空けて描く」です。

単元「図形の面積」

計算の仕方、図形の面積の求め方といった「仕方・求め方」について考える授業では、多様な考え方がでてきます。この授業でも4つの考えがでてきます。この授業では、①~④の順番で考え方がでたとします。しかし、下の板書では①~④を順番通りには描いてはいません。

平行四辺形の形の求め方 構造的板書
平行四辺形の形の求め方を考えよう(クリックすると別ウィンドウで大きくなります)

①の考えを交流したのち、2つ目の考えとして②の考えを聞いたときに、①の横にスペース(考えが1つ描けるぐらいのスペース)を空けて、②の考えを描いています。意図的に描いています。①と④は図形を移動し、長方形にして面積を求めるという同じ考え方です。こういった同じ考え方は遠くよりも近くに描かれているほうが、子供たちは2つの考えを関連づけながら考えやすくなります。もし3つ目の考えを聞いたときに、④の考え方がでてきた時には、もちろん①の横に描きます。

構造的板書のよさは、関連づくことです。関連づくことは深い学びには欠かせないことです。

そして、もう1つは「考え方を並列に並べる」です。今回のように多様な考え方がでてくる授業ではとても有効な描き方です。

多様な考え方がでてくる授業の最後に、「は(はやく)・か(かんたん)・せ(せいかく)な考え方はどれだろう」と聞いて、子供たちに考えさせる授業がありますが、子供たちは一生懸命に考えてきています。だから、先生がそう言ったとしても、自分の考えが1番だという思いをもち、「は・か・せ」を考えないかもしれません。

新たな問題に取り組んだときに、自分の考えでは通用しないということに気づき、他の考え方で考えてみようとなるほうが大切です。

私ならこの場面では、「は・か・せ」ではなく、「この4つの考え方で共通していることは何?」と言います。そうすることで4つの考えを比較しあい、これまでに学習してきた正方形・長方形の面積や三角形の面積を使えば、求めることができるということに気づかせたいからです。(教科書によっては、三角形の面積はこの後の学習の場合もあります)。このとき、考え方を並列に並べておくと子供たちが比較しやすく、関連づけやすくなるのです。

その上で、①~④の考えを自分で選択した上で練習問題に取り組ませます。

算数スキル2:1時間の流れがわかるように

特別編「プリント学習の時間」

樋口学級で行っているプリント学習の取り組みを紹介します。私はプリント学習を行うときにも板書を使用します。このときの板書は、普段の板書とは違い、フローチャートのようなものを描き、子供たちが1時間のプリント学習の流れがわかるようにします。

プリント学習のフローチャート 構造的板書
プリント学習のフローチャート(クリックすると別ウィンドウで大きくなります)

樋口学級では、全員が常に同じプリントで同じ問題を解いているということをしません。40人学級なら40通りの学力差、得意なところ・苦手なところがあります。なので、自分のペースで進むことができればいいと考え、取り組んでいます。ただし、早くプリントができたからといって、読書は認めていません。

① めあてを作る

プリント学習をするときには、まず自分自身のめあてを作ります。めあてはひとりひとり違っていて構いません。めあてはノートに書いておきます。めあてを交流してもいいでしょう。授業の最後に、このめあてを達成できたか、ひとりひとり振り返りをします。

② 共通プリントに取り組む

全員が取り組む共通プリントを配付し、次のルールを確認してから、取り組ませます。

  • 3人もしくは4人1組のグループを作っておき、グループ仕様の机配置にしておく。
  • 答え合わせは教室の後ろや横に掲示している解答を見て、自分たちで行う。
  • 分からないときには、分からないと言う。
  • 教えるときは、答えや考え方を言うのではなく、考えるためのきっかけを作ってあげる(ヒントを言ってあげる)。
  • 先生に聞きにきてもよい。

③ プリントを自分で選択して取り組む

②が終われば、自分が苦手としている内容のプリントを3枚の中から子供たち自身に選択させ、取り組ませます。

④ ゴール達成後

③での3枚のうち1枚プリントができればゴールですが、このゴールは全員が到達してほしいゴールです。その上で、早く終わった子は③の残り2枚のプリントをするのか、アナザーゴールを目指すのか、他の子のサポートをするのかを自分で選択させ、取り組ませます。読書を認めていないのは、読書をする暇がないほど、人それぞれすることがあるからです。また、自分が今行っているところにネームプレートを貼っておきます。他の子のネームプレートを見て、サポートしたりすることができます。


『小五教育技術』2018年10月号より

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