小5国語「だいじょうぶ だいじょうぶ」板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は、物語文の「だいじょうぶ だいじょうぶ」です。本単元の目標は、「人物の思いが聞き手に伝わるように工夫して音読すること」です。音読が目標となる授業においても板書は大切です。それは、板書した内容によって子供たちの思考が揺さぶられ、音読の表現方法に影響することが考えられるからです。音読が中心となる授業においての板書の工夫を紹介します。

監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/大阪府公立小学校教諭・岡本美穂

 

教材名 「だいじょうぶ だいじょうぶ」(東京書籍)

単元の計画(全4時間)

1 4年生までに学習したことを振り返り、学習の見通しを立てる。
2 「だいじょうぶ だいじょうぶ」という言葉に込められた思いを想像し、どのように音読すればよいかを考える。
3 音読を聞き合い、感想を伝え合う。
4 音読の工夫について交流し、身に付いた力をノートにまとめる。

板書の基本

本単元では、「人物の思いが聞き手に伝わるように工夫して音読すること」が目標で、子供一人一人が、「『だいじょうぶ だいじょうぶ』はこんな感じで音読したらどうだろう」「このように音読すると、おじいちゃんにぴったりくるかな」ということを大事にして音読を繰り返し、試行錯誤することで、人物の思いを想像していくことを大切に取り組みます。

4月の初めの段階の授業では、「友達の意見を聞き合いたい」「友達と話し合いたい」と子供たちから思えるようにしていきます。そこで、音読を中心に取り組むことを大事にしています。

音読を通して、
・自分の成長を実感することができる
・音読を通して教材との対話ができる
からです。

音読を通して想像していく中で「登場人物の様子や気持ちを表すには、どのように音読すればよいだろう」と自分自身と対話を行うことができます。そして、音読中心の国語の授業であっても、「板書」は行うようにします。板書した内容によって、子供たちの思考が揺さぶられ、「音読」の表現方法が変化することもあるからです。音読が中心となる授業においての「板書」について考えていきます。 

板書のコツ(2/4時間目導入)

小5国語「大造じいさんとガン」京女式板書の技術 板書
2/4時間目導入の板書

板書のコツ①

題名である「だいじょうぶ だいじょうぶ」と板書します。この時、教師もだまってゆっくり書くことで、自然に「だいじょうぶ だいじょうぶ」と読み始める子供もいるかもしれません。そういう姿は大事に受け止め、最近この言葉を使ったどうかを子供たちに聞きます。そして、みんなで音読します。

まずは、1人で読むことを求めるのではなく、一斉音読にするのがポイントです。1人で読むというのは、集団がまだでき上っていない4月では、子供たちにとって緊張感があるものとなるからです。

そして、一斉音読した後に、子供たちにもノートに題名を書くように伝えます。そして、作者も板書し、それをノートに書くように伝えることで、今回の「物語文」の授業が始まることを意識させていきます。

また、題名や挿絵を基に物語を予想していきます。その後、範読します。「どんなお話だと思うか」を予想することによって、物語を読むことが楽しみになったり、自分の予想したことと実際の物語との共通点や相違点を比べたりしながら読むことができます。

板書のコツ(2/4時間目前半)

2/4時間目前半の板書

板書のコツ①

めあて「言葉にこめられた思いを考えよう。」と板書します。その際、ノート指導も行います。この時期は、ノート指導も丁寧に行うようにします。ここでの「丁寧なノート指導」とは、教師が先に書いたものを「ノートに写しましょう」というものではなく、具体的に文字を1文字ずつ確認しながら「先生と同じ早さで書きましょう」という指導です。それが「学びの証拠」、つまり教師の話を聞いていた証拠として学習の履歴となるのです。そして、そのノートを残していきます。

「教師の話を聞いて行動すると成長する」と子供が思うようになることで、教師の話をよく聞くようになり、子供たちはより伸びていくのです。だから、特に、4月は「めあて」も教師が大事に板書していきます。

板書のコツ(2/4時間目後半)

2/4時間目後半の板書

板書のコツ①

めあてを書いた後に「だいじょうぶ だいじょうぶ。」と板書します。そして「この物語の中に何回この言葉が出てきましたか?」と発問すると、数え出す子供たちの姿が見られるはずです。そこで、教科書に線を引きながら、子供たちと確認すると、全部で6回だということが分かります。

そのときに、「この6回は全部同じですか?」と発問します。この発問は、国語が得意な子供にも、あまり得意でない子にも、同じように考えて発言できるような内容になっています。つまり、子供たちがどんなことでも「言っていいんだ」と自信をもって国語の授業に向き合える土壌づくりの時間になることを求めているのです。

この時間を大切に積み重ねていくことで、日に日に発言できる子供が増えていくはずです。それは、自分の意見を言うことに価値がある、ということに気が付くからです。子供の心の開放となるのが、全員が同じように考えて発言できるような内容の発問だと考えています。学級全員の意見を大事に受け止める姿勢を、教師がもっていることが大前提となります。

板書のコツ②

6つの「だいじょうぶ だいじょうぶ。」を比較して気が付いたことを板書します。そして、この気付きを「音読」で表現していくように伝えて音読に取り組みます。すると、同じ言葉であっても少しずつ違った音読になっていきます。それが、音読を通して登場人物の様子を想像していくことにつながります。

 

構成/浅原孝子

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