小6 国語科「詩を朗読してしょうかいしよう」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「詩を朗読してしょうかいしよう」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小六 国語科 教材名:詩を朗読してしょうかいしよう(光村図書・国語 六)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院准教授・茅野政徳
執筆/千葉大学教育学部附属小学校・青木大和

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、お気に入りの詩を選び、それを朗読して紹介することを通して、詩の全体像を自分なりに解釈して読むことで、読書として様々な詩を楽しめることを目指します。
また、詩から感じたことや考えたことが相手に伝わるように工夫しながら朗読する力の育成をねらいます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

音読と朗読にはどのような違いがあるのでしょうか。
学習指導要領には、「音読は、文章の内容や表現をよく理解し伝えることに重点がある。」「朗読は、一人一人が思ったり考えたりしたことを、表現を高めて伝えることに重点がある。」と書かれています。さらに、「朗読は、読者として自分が思ったことや考えたことを踏まえ、聞き手に伝えようと表現性を高めて、文章を声に出して読むことである。」としています。つまり、音読は、文章理解のために音声化するのに対し、朗読の場合は、自分が考えたことが聞き手に伝わるように音声化をするということがわかります。
今回は「詩を朗読してしょうかいしよう」という言語活動を位置付けました。書かれていることを理解するために音声化するだけではなく、自分が読み取ったこと(感じたこと)を聞いている人に伝わるように音声化する必要があります。
「〈ぽくぽく〉」「動物たちの恐ろしい夢の中に」「うぐいす」の三つの詩の中からお気に入りの詩を選び、紹介していきます。詩を朗読して紹介する様子を撮影し、詩集の読書経験が少ないことが予想される5年生の友達に見てもらうようにします。5年生は、来年同じ学習をしますが、5年生段階から詩への親しみをもつことを期待できることや、6年生になって学習した際、「去年6年生に紹介してもらった詩だ」というように、見通しをもって学習することができるため、5年生を相手とすることは効果的であると考えます。
児童がお気に入りの詩を紹介する際には、自分の好きな表現やその表現の工夫と効果に着目してお気に入りの理由を説明し、暗唱するようにします。
この学習をきっかけに詩集を教室の本棚などに置いておき、児童がいつでも読めるような環境にしておくことで、児童の読書の幅がより広がることが期待できます。
また、朝の会や帰りの会の日直の役割の一つに「今日の詩」などを新たに設け、日常的に詩に触れることで、児童が詩に対して親しみをもつことが期待できます。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 音読と朗読の違いの理解

これまでの学習で、「○○音読発表会をしよう」などの言語活動を経験してきた児童も多いことでしょう。今回の学習では、詩を朗読することが言語活動として位置付けられています。児童の中には、この音読と朗読の違いを正しく認識できている人数は必ずしも多いとは限りません。そこで、まず音読と朗読の違いについて調べるように促すことから始めます。
すると、児童は、「音読:書かれた文章を、声を出して読むこと。」「朗読:人に聞かせるために、文章などを、声に出して読むこと。」と意味の違いに気が付くでしょう。
ここで、焦点を当てるべきは「人に聞かせるために」という文言です。「人に聞かせること」を意識化できると、児童は「この詩の魅力を聞いている人に伝えるためには…」と見通しをもって思考しながら教材に触れ、朗読することができるでしょう。ここでは、児童が音読と朗読の違いをより理解できるように、音読は文章理解のためであり、朗読は自分が思ったことや感じたことを伝えるためであることを補足しましょう。そうすることで、児童は文章に対する自分の考えを明確にしようと見通しをもって読むことが期待できます。
また、紹介を聞いた相手の反応を見て、「この紹介では伝わっていないかもしれない。」と課題を見出し、粘り強く学習に取り組むことができると考えました。

〈対話的な学び〉 学級内での鑑賞会

朗読の場合は人に聞かせる必要があるため、聞き手の存在は必要不可欠です。また、自分が感じたことと読み表しているものが合っているかを判断するためには、客観的な視点が必要です。友達が自分の朗読を聞いて、どのように感じたのかを知ることで自分の考えを広げたり深めたりすることができるでしょう。
学級の児童同士で鑑賞し合う際には、あえてお気に入りの詩として選んだ理由は紹介せずに朗読のみを聞き合い、何を工夫して朗読しようとしているのかを話し合うようにします。
そのことで、聞き手は発表者が何を工夫しようとしているのかを注意深く聞くようになりますし、発表者は聞き手に自分の工夫を理解してもらえるように朗読すると考えました。

話合いの最後にお気に入りの詩として選んだ理由を話すように促し、朗読の仕方についての改善点や良かった部分を話し合うようにします。
上記の方法で鑑賞をし合う場合は、できるだけ違う詩を選んだ児童同士で行うことが望ましいです。同じ詩を選んだ児童同士だと自分が感じたことが優先されてしまい、友達が工夫した部分を見つけづらくなってしまうことが予想されるからです。
同じ詩を選んだ児童同士で鑑賞を行う場合は、選んだ理由を紹介してから朗読するようにし、注目した表現が違うことで朗読の仕方がどのように違うかを児童が考えられるようにします。
また、同じ表現に注目していても朗読の仕方に違いがあることを児童が発見できるようにすることで、考えが広がったり深まったりすることが期待できるでしょう。

〈深い学び〉 詩に日常的に触れられる環境の設定

本単元をきっかけとし、日常的に詩に触れられるような環境を設定していきます
今回教材として扱う八木重吉、川崎洋、武鹿悦子の詩集や、動物を題材とした詩、オノマトペのある詩や言葉のリズムが豊かな詩などを教師があらかじめ選び、教室に設置した詩集コーナーに置きます。
児童は休み時間などに自由に読んでよいこととし、お気に入りの詩があったら付箋を貼れるようにします。帰りの会などで、日直の役割として「詩の紹介」を設け、紹介したい詩を朗読できるようにします。これは、必ず行うのではなく、あくまで日直の児童が紹介したいと感じたら紹介できることにするのが望ましいです。
このことで、児童は詩に親しみをもつことができ、自分が感じたことが伝わるように朗読するという知識やこれまでの経験を相互に関連付けながら深く理解することができたり、自分が抱いている思いや考えを基に創造したりすることができると考えました。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)朗読の様子を撮影

自分の朗読を児童が客観的に捉えられるようにするために、朗読している様子を動画で撮影するように促します。そのことで、自分では工夫しているつもりでも客観的に見てみると、うまく伝わっていないことに気付いたり、より工夫する必要がある部分を見つけたりすることができると考えました。

(2)掲示板アプリを活用し、朗読の様子を他学級や他学年と共有

詩を朗読して紹介する場合、紹介したい相手と対面して朗読するのが一般的です。そうすることで、読み手は相手を意識して朗読することができますし、聞き手は臨場感をもちながら聞くことができます。一方で、複数の相手に紹介する場合、読み方がその場によって変わってしまったり、紹介活動が作業的になってしまったりすることも考えられます。
そこで、紹介する様子を動画で撮影、そのデータを掲示板アプリ(MicrosoftTeamsGoogleClassroomなど)に投稿し、聞き手がいつでも聞けるようにします。
また、聞いた人は感想をコメントで残せるようにし、読み手は自分の朗読が相手にどのように聞こえているのかを読めるようにします。
このように動画データを共有することで、同じ朗読を複数の人が視聴し、感想を伝えることができるため、読み手の児童は自分の朗読についての改善点を見つけることができ、自分の工夫が相手に伝わっていることを自覚できます。
紹介活動には時数を要します。他学年や他学級に朗読を聞かせる場合には、想定していた時数を超えてしまうおそれもあるでしょう。
その点、掲示板アプリで動画データを共有すれば、紹介の時間を短縮できるうえ、幅広い学年や学級の友達に試聴してもらえ、朗読への感想を聞くこともできます。

6. 単元の展開(2時間扱い)

 単元名: 詩を朗読してしょうかいしよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 学習の見通しをもち、三つの詩の世界の全体像を具体的に想像して、詩の特徴を捉える。

・第二次(2時
② 選んだ詩の特徴やテーマを意識して、自分が感じたことが伝わるように詩を朗読する。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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