小1プロブレムの課題と解決策!保幼小の連携を進めよう

東京都公立小学校校長

清水弘美

保幼小の連携には課題が山積みされているという現状があります。そこで、学校法人八王子学園なかよし幼稚園・清水弘美園長が保幼小の連携を考えるためになかの幼稚園・高橋詩子園長と共に「保幼小コネクトラボ」研究会を立ち上げました。

清水園長は、小学校校長を長年務め、特別活動の研究も深め、22年度、同幼稚園の園長になり、小学校と幼稚園の両方の視点をもっています。22年9月28日、同ラボのキックオフ研究会が開催され、清水園長が講演を行いました。その講演をダイジェストで紹介します。

コネクトラボトップ清水先生写真

日本の教育は何のためにするの?

日本の教育は、簡潔に言えば、「人格の完成」と「社会の形成者」を育てる2つの目的があります。「人格の完成」とは、私のよさ、「社会の形成者」とは、私たちの役割と簡単に言い換えることができます。

学習指導要領では、育成すべき資質・能力を3つの柱で示されています。3つの柱とは、「知識・技能=何を理解しているか、何ができるか」、「思考力・判断力・表現力等=理解していること・できることをどう使うか」、「学びに向かう力 人間性等=どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」。それらを育成します。もう少し具体的に言うと、図1のように認知能力と非認知能力を育てるということです。

認知能力と非認知能力の図版
図1

認知能力と非認知能力はお互いに影響し合いながら、共に伸びていくのです。

社会情動的スキルは特別活動の視点

非認知能力は社会情動的スキルと言われ、特別活動で養っていくことができるのです。では、社会情動的スキルとは、どのようなものでしょうか。それは、図2のような力を言います。

社会情動的スキルの図版
図2

社会情動的スキルは、「社会参画」「自己実現」「人間関係形成」といった特別活動の視点でもあるのです。

小学校での特別活動は、保育園・幼稚園での普通の活動に当たります。それは「子供たちが主体的に選択できる活動」なのです。小学校での特別活動を充実させることによって、保育園・幼稚園での活動が生き、小1プロブレムの課題解決につながっていきます。

小学校で聞こえる子供たちの心の声

保育園・幼稚園から小学校へ入学した子供たちの心の声を紹介しましょう。

子供たちの心の声
・やりたくないことをなんでしないとならないの。
・時間が決められている。
・間違えると「違う」って否定される。
・思い付いたことを話すとだめ。
・いじわるする子がいる。

このようなことが要因となり、学校に行きたくなくなる子供が出てきます。

「どうして学校へ行きたくないの?」と子供たちに聞くと、「学校では何をするか、全部先生が決めてしまう。自分で決めたいんだ」と子供たちが言います。

学校に行きたくなくなる子供たちの要因の1つに、小学校と幼稚園の異なる環境があげられます。

小学校と幼稚園は異なることだらけ

清水園長は、長年、小学校の校長を務めていたため、幼稚園の園長になって驚いたことがあります。

幼稚園の園長になって驚いたこと
・子供たちが教室に入っているのに、勝手に外で遊んでいる子がいる。
・給食の時間がずれる。
・職員室で遊んでいる。
・子供たちはやりたいことだらけ。
・「いや!」が通る。
・言葉が通じない。

子供たちを叱ることも、言葉で説得することもありません。それなのに、なぜ予定通りに教育活動が行われるのでしょうか。
それは、

・子供たちが教室に入っているのに、勝手に外で遊んでいる子がいる。→遊びきれば戻ってくる。
・給食の時間がずれる。→子供の活動に合わせている。
・職員室で遊んでいる。→だめな理由がない。
・子供たちはやりたいことだらけ。→子供がやりたくなるしかけを工夫する。
・「いや!」が通る。→「どうしたらいい?」と聞く。
・言葉が通じない。→リズムと模倣で進める。

ということです。

「遊び」の意味するもの

また幼稚園と小学校では「遊び」という言葉に対する認識が異なります。

幼稚園の遊び
・幼児の自発的な活動としての遊び。
・学びの中心の遊び。
・時間を忘れて夢中になる遊び。
学びの基本 重要な活動

小学校の遊び
・遊んでいるだけ。
・遊んでいないで勉強しなさい。
・時間があるから、ちょっと遊んでいいよ。
余暇 気晴らし 価値の低いもの

幼稚園で意味する「遊び」というものをもっと見直してみましょう。

プレイフルな教育が小1プロブレム解決の糸口に

子供たちが学びたいと主体的になるのは、プレイフルな教育が大切になります。プレイフルとは、ワクワク・ドキドキする心の状態で、そのような教育が小1プロブレム解決につながるのではないでしょうか。

プレイフルな教育とは
×勉強は必死になって行う苦しいもの。→〇みんなで夢中になってワイワイと楽しみながらするもの。
×唯一の正解に向かっていくもの。→〇答えのないものに向かっていくもの。
×教師に言われたことができるようになるもの。→〇自分たちで考えたことを実現できるようになるもの。
×みんなと同じペースで学ぶもの。→個々のペースで取り組むもの。

「べき」ではなく、「たい」からはじめましょう。

小学校がプレイフルになるための条件は次のとおりです。

1 安全・安心の保障
2 多様性の尊重
3 工夫の余地
4 ワクワク・ドキドキできる
5 意味が感じられる
6 夢中になれる

どうしたらプレイフルな学びが実現するでしょうか。

それは、

・大事なのは必然性
・黄金のフレーム[FIDS](Feel, Imagine, Do, Shareの頭文字で、やりたい、どうする、やってみる、楽しかったを繰り返していく)……Feel(願い)が大切で、解決してみたい、つくってみたい、やってみたい、工夫したい、喜ばせたいという気持ちを子供たちがもつしかけをすることが、意欲につながる
・子供が主体的に学び、I CANと言えるような一連の活動

が重要になってきます。

小学校のプレイフルな学びによって、保育園・幼稚園の学びと連携がとれ、小1プロブレムの課題解決につながっていくのではないでしょうか。

清水園長の講演の後、会場の参加者が、「つかむ」→「探る」→「見つける」→「決める」という特別活動の手法を活用して、話合いを行い、充実した研究会となりました。

◎「保幼小コネクトラボ」研究会について詳しく知りたい方は、なかよし幼稚園までお問い合わせください。→なかよし幼稚園 (nakayoshi-kinder.ed.jp)

なかよし幼稚園園長・清水弘美

清水弘美先生プロフィール写真

清水弘美(しみずひろみ)
学校法人八王子学園なかよし幼稚園園長 創価大学教育学部非常勤講師
公立小学校教諭、公立小学校副校長、公立小学校校長を歴任。2022年、現職。全国学校行事研究会会長、東京都学校行事研究会会長、小学校学習指導要領解説特別活動編作成協力者などを務める。世界で取り組まれている子供たちの主体的な活動であるDesign for Changeの活動にも力を入れる。主な著書に『台本選びから演技指導・演出法まで 学芸会の指導~成功への道筋~』『特別活動でみんなと創る楽しい学校』(以上、小学館)など。

取材・文・撮影・構成/浅原孝子

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