小1国語「いちねんせいのうた」京女式板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は「いちねんせいのうた」です。これは、詩を声に出して読み、楽しむことをねらいにしています。それには、声に出して読むことが、楽しいと思えるように導くことが大切です。そのため、最初はクイズのように、考えさせたい言葉を隠して、知りたい気持ちを膨らませるような板書の工夫をしています。

監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子

 

教材名 「いちねんせいのうた」(光村図書)

単元の計画(全2時間)

1 詩を視写したり、お話を想像したりする。
2 詩を声に出して読み、楽しむ。

板書の基本

詩に親しみをもたせるように丁寧な板書を心がける

教材「いちねんせいのうた」の学習内容は「こえにだしてよもう」です。板書の役割は、詩「いちねんせいのうた」を声に出して読むことが、楽しいと思えるように導くことです。そのために、工夫したことは次のとおりです。

①詩の全体を丁寧に板書することです。子供も、ノートに詩を書き写す活動をします。ひらがなの字形が崩れる時期ですので、文字を丁寧に書くことも、指導内容として大事にしています。

②子供に考えさせたい言葉を大事にするために、最初の段階では、考えさせたい言葉が出てくる行は書かないようにしました(カードを貼る)。クイズのような面白さがあり、知りたい気持ちになるようにしました。

③板書が途中でも、ノートを音読させ、正しく書けているかどうかを確かめる時間を設けました。声に出して読むたびに、読むことに自信をもつ子が増えていきました。

〇読むこと、書くことが楽しいと思える板書に仕上げる

「勉強が楽しい」と思えるように指導をすることが1年生担当教師の仕事です。板書は楽しいことを実現する要因をもっています。

まず、最初の音読で、理解したはずの詩を読み合うことの楽しさを感じさせるようにします。文字としてしか読めなかった子供たちです。初めは、「い・ち・ね・ん・せ・い・の・う・た」と読んでいた子が、「いちねんせいの うた」としっかりと読めるようになったのは、板書を写すという活動の効果です。

また、「ぼくもかく・わたしもかく」の文を力を込めて読んでいく過程で、詩からイメージしたことが、空想ではなく、自分でもやってみたいという気持ちにさせるのです。意欲をもたせるカードの活用でもあります。繰り返し、読む・書くという活動は、イメージを広げ、教室からとび出して、自分でも「あおいそらのこくばん」に書きたくなる気持ちにさせます。

板書のコツ(1/2時間目前半)

小1国語「いちねんせいのうた」京女式板書の技術 板書
1/2時間目前半の板書

 板書のコツ①

「いちねんせいのうた」を音読したあと、ノートに書き写すことを指示します。1学期の初め、ひらがな指導をしたときのように、1文字ずつ書かせます。書くときの姿勢や鉛筆の持ち方も確認しながら板書していきます。1行を書き、その都度、声に出して読ませます。

板書のコツ②

色画用紙の短冊5枚を用意しておきます。「いちねんせいの一」「いちばんはじめの一」の部分カードを貼ります。「ぼくも」「わたしも」は色違いのカードを貼ります。

すでに、詩を覚えている子が、「知っている」と得意になって種明かしをしたがります。「だまって先生の言うとおりにすると、いいことがあるよ」と次の活動に期待をもたせるように指示することが大事です。「知っている」という子の指導は、1年生では留意することが必要になります。

板書のコツ(1/2時間目中盤)

小1国語「いちねんせいのうた」京女式板書の技術 板書
1/2時間目中盤の板書

板書のコツ①

カードにはどんな言葉が入るのだろうという期待をもたせて、さらに「声に出して読む」という活動を続けます。「あおいそらの こくばん」は、音読では、息をすることが難しいので、「あおい・そらの・こくばん」というように文節で読ませると、すらすらと読めるようになります。

板書のコツ②

「そらの こくばん」に注目をさせて「うでを のばし」「ちからを こめて」とつなぎ、「かく」へ導いていきます。空の黒板ということが子供の心に溶け込むように指導するのです。「うでをのばし」「ちからをこめて」はどの子にも想像できるということではありません。しかし、想像できる子もいます。その子をまねて、みんなで動作するという方法があります。想像が広がらない場合は、教師が上手なお手本とそうでないお手本を示します。「どちらが好きですか」と問いながらイメージを広げていくようにします。

板書のコツ③

「空の黒板に書きたいね」と働きかけ、書きたいことを発表させます。「だれでも書いていいのですよ」と言いながら「ぼくも」「わたしも」を板書します。「ぼ・く・も」「わ・た・し・も」のひらがなは、1年生にとって書き順の間違いが多い「も」があり、書きにくい「わ・ぼ」があります。ノートに丁寧に書かせるようにします。

音読では「おひさま みてる」「かぜが ふく」をしっかりと読ませるように指導します。

板書のコツ(1/2時間目後半)

小1国語「いちねんせいのうた」京女式板書の技術 板書
1/2時間目後半の板書

板書のコツ①

「いちばんはじめの一」に注目させます。3枚カードが同じ色ですから、同じような言葉が入ることを指導します。「いちばんはじめの 一」は、元気が出る言葉です。「いちねんせいの 一」「いちばん はじめの 一」を音読させます。

「ぼくもかく わたしもかく」と、つなげて、音読をさせます。

板書のコツ②

繰り返し音読を行っていると、すらすらとなめらかに読めるようになります。

気持ちにかかわる発言を求めると「わくわく」という言葉が生まれます。「まっすぐ」を考えさせると「うでを のばし」「ちからを こめて」に注目します。

「ぼくも」「わたしも」からは、「運動場でやりたい」という気持ちが膨らみます。

大事なことを、詩に書き込み、板書を整えていきます。

板書のコツ③

気持ちが高まったところで、次の時間は、運動場で勉強することを予告し、期待をもたせました。本時の仕上げの音読は、自分が青い空の黒板に向って「いちねんせいの 一」「いちばんはじめの 一」を書いているような気分で音読をさせました。

 

次の写真は2/2時間目の授業場面です。本時で「青い空の黒板」に書きたいと気持ちが膨らんでいる子供たちとグラウンドで音読を楽しみました。グラウンドで音読していると、もっと高いところで音読したいとの声が聞こえてきました。そこで、屋上に上がり、音読を楽しみました。

グラウンドで音読を楽しみました
屋上で音読を楽しみました

 

構成/浅原孝子

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