研究授業参観のポイント|優れた教師はこの位置からここを見る!
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他の先生の授業を見させてもらうのは、自分の授業に役立てられるヒントを得たり、さまざなな課題に気づいたりできて、授業の質の改善にとてもよい手法です。とはいえ、授業の見方次第で、その授業から何を感じ何を学び取れるかが変わってくるのではないでしょうか。
学校取材歴二十余年。これまで1000以上の授業を取材してきた、『教育技術』の教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之さんが、授業力アップに役立つ授業の見方・とらえ方を解説します。

目次
合唱指導で、子どもをどう並べてますか?
先日、ある県が優秀教師として認定している音楽の先生にお話をうかがった時、「合唱指導は各学級の担任の先生に任される場合が多いけれど、子どもの並び方ひとつをとっても知らない先生が大半」と、話してくださいました。もちろん、先生方を責めているのではなく、しっかり教えられる機会があってしかるべきだ、というお話でした。
合唱時の並び方については、背の順などではなく、音程の確かさや声の大きさ、声の質、等に合わせて、パートごとに並び位置を考えるのだそうです。
授業をどこから見るのが正解か
さて、この合唱指導と同様に、本当は教わった方がよいのに大学でも現場でもなかなか教えてもらえないことがいろいろあるような気がします。そのひとつが授業の見方ではないでしょうか。
先生方は、研究授業等で、他の先生の授業を見学に行った時、どこから授業を見るのが正解だと思いますか? 研究授業等では、後ろから見ている先生が多いのですが、「前方から見るべき」なのです。それは何故だか分かりますか? まず、ご自分なりに理由を考えてから続きをお読みください。
さて、前から見る理由は新学習指導要領をきちんと読んでいれば即答できますよね。

これまでの学習指導要領は、「何を学ぶか」を中心として記述されていました。しかし、新学習指導要領では、3つの資質・能力の育成を目標とし、「主体的、対話的で深い学び」のある授業を求めています。その、「主体的、対話的で深い学び」をするのは、まさに子ども自身なのですから、子どもの姿を見なければ、その授業のよさも課題も語れないのです。
もちろん、先生方は教師ですから、「教師がどう働きかけるか」ということに目がいくのは当然のことです。しかし、その教師の働きかけも、子どもの姿、あるいは子どもの変化を通してしか議論できないわけです。
例えば、どんなに構造化された美しい板書が残っていても、授業の途中から意欲を失う子どもが何人もいたら決して良い授業とは言えないはずです。あるいは、どんなに素晴らしい発表をする子が何人もいたとしても、その子たちのノートに記された意見が、最初の自力解決の時と、学習の振り返りの時とで変化がなかったらそこに学びはないのです。
もちろん、1時間の授業ではなく、単元を通して資質・能力を育むよう文部科学省も説明しているわけですから、1時間の授業の様子だけで性急に授業の評価はできません。しかし、子どもの姿を通して授業を語ることこそが、求められる学習をつくる上で必須のことだからこそ、教室の前方から子どもの姿を見ることが基本というわけです。