管理職の叱責が厳しくて、落ち込んでいます【現場教師を悩ますもの】
「教師を支える会」を主宰する『現場教師の作戦参謀』こと諸富祥彦先生による連載です。教育現場の実状とともに、現場教師の悩みやつらさを解決するヒントを、実例に即しつつ語っていただきます。
目次
【今回の悩み】管理職の叱責から立ち直れずにいます
管理職から言われるに悩んでいます。私がとった保護者対応について、校長に親からクレームの電話が入り、校長室に呼び出されて𠮟られました。子供のクラスでの状況を分かってもらおうといくら説明しても伝わりません。
「20年も教師をしてきて、もっときちんとした対応が取れる人だと思っていた」という言葉が頭に残って、傷つき、教師失格ではないかと悩んでいます。今日も涙が出ました。でも、分かってもらおうとすることを諦める、ことをやってみようと思います。
(小学3年生担任・40代女性、教員歴:20年)
原因を自分に帰属させない
この校長とは相性が合わないようですね。保護者からのクレームが来た時に対応は二つに分かれます。 校長のやるべきことは、担任の先生に伝えることはもちろんですが「一緒に考えること」です。
この保護者は、単なるクレーマーである場合も多いでしょう。子供自身が学級を荒らしていて、自分の非を認められなくて先生の非として保護者に訴えている場合もあります。その子供の言うことを真に受けて、そのまま校長に訴えてくる保護者も多いです。さらに保護者から来たクレームを校長が真に受けて「なぜ私の手を焼かせるんだ」と すべて担任に押し付けてしまうケースも少なくありません。
コンサルテーションが校長の役割
学級担任を呼んで、これからどうするべきか一緒に相談に乗る。コンサルテーションが校長のなすべきことです。叱責しかしないのであれば「私に面倒をかけさせるな」と言っているのと同じです。それは学級担任を下請けのように見ているからです。自分を責めすぎず「この校長とは相性が合わないんだな」ぐらいに受け止めてはいかがでしょうか。
校長から叱られて、直ちに自分に問題があると考えるのは早計です。むしろ校長をアセスメントすることが大事です。何か問題があったら担任を叱ればいいんだというタイプの校長なのだと理解をすることも必要です。管理職は選べませんから。
相手や自分を相対化する切り替えの姿勢で
学校の先生方の「認知のくせ」として、真面目で自分を責める傾向があります。何でも私がダメだから……と考えてしまいます。だからうつ病になりやすいのです。それを防ぐためにも、仲間と話して、管理職を相対化できればいいですね。管理職にも問題があることは少なくないのです。
だからこそ自分だけで抱え込むのではなく、同僚にもそれとなく話してみるとよいです。何か派閥を作ろうというのではなく、あくまで自分の感じ方、捉え方を客観的に捉えることが大切です。
諸富祥彦●もろとみよしひこ 1963年、福岡県生まれ。筑波大学人間学類、同大学院博士課程修了。千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表を務め、長らく教師の悩みを聞いてきた。主な著書に『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『図とイラストですぐわかる教師が使えるカウンセリングテクニック80』『教師の悩みとメンタルヘルス』『教室に正義を!』(いずれも図書文化社)などがある。
諸富先生のワークショップや研修会情報については下記ホームページを参照してください。
https://morotomi.net/
取材・文/長尾康子