不登校が多様化していて、どう理解すればいいですか?【現場教師を悩ますもの】

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諸富祥彦の「現場教師を悩ますもの」
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「教師を支える会」代表

諸富祥彦

「教師を支える会」を主宰する『現場教師の作戦参謀』こと諸富祥彦先生による連載です。教育現場の実状とともに、現場教師の悩みやつらさを解決するヒントを、実例に即しつつ語っていただきます。

【今回の悩み】様々な事情がある不登校児をどう理解すれば?

国の調査では、不登校の児童が過去最多だとか。私の勤務校にも不登校児童が何人かいますが、中には「コロナ感染が怖いから、自主休校させる」と保護者の判断で長期欠席する子もいれば、オンライン授業で教室に顔を出せるようになった不登校の子もいて、一体「不登校って何だろう?」と思ってしまいます。

登校しなくてもオンラインで出席になるなら、教師や学校の役割って何なのでしょうか。先生はどのようにお考えですか。
(小学校教諭・ 6年生担任・40代、教職年数:22年目)

変わりつつある不登校の概念

私は不登校の支援を専門としていますが、ご相談の先生と同じ思いを持っています。オンラインで姿を見せればいいのであれば不登校はなくなります。素晴らしいことです。不登校はない方がいいですから。でも学校の先生としては、子供たちが学校に来てくれないと寂しいですよね。

ただ、子供の立場からすると、オンラインで顔を出せば、この後も参加しようという気持ちになれるし、出席日数にカウントされるのであれば、それは素晴らしいことです。

地域によっては不登校の子供専門の公立学校ができています。授業はどこで受けてもいいと最初から決まっています。家で学ぶのか学校で学ぶのかを選べるのです。だんだんそういう時代になってくるかもしれません。授業を学校で受けなければいけないというのが、道理として通用しなくなる時代です。

同じ仕事をするのに、なぜ在宅勤務ではだめなのか、という大人の課題と同じです。在宅勤務が認められる以上、学習においてもみんなでやらなければいけないことは別にして、「家で授業を受けてもいい時代」になってきました。半分ぐらいの生徒が家で授業を受けることを選んでも、そんなに悪くはないでしょう。

私も心理学のワークショップを、ハイブリッドでやっています。半分Zoom 、半分現地です。結構うまくやれていますよ。ですから小学校の先生くらいの技量があれば、ハイブリッドな授業もできます。ちょうど今過渡期で、不登校の概念が変わりつつあるのです。

オンラインをきっかけに登校できることも

オンライン登校のいい面もあります。あるクラスで子供たちがホームルームの話合いをしていた時のことです。多数決で何かを決めようとしていた時に、タブレットでつながっていた別室登校の担当の先生が「この子も一票があります」と言って、子供がオンラインから「はい」と手を挙げたんです。ちょうど、賛成と反対が同数で、その子の挙手で結果が決まりましたから、クラスは大拍手でその子のオンライン参加を歓迎したといいます。

そのようなことがきっかけで学級に戻れたりするものです。ですから、オンラインをフルに活用して、学校に来られたらいいね、くらいのスタンスでいたらいいのです。

不登校の概念は今後確実に変わっていくでしょう。自宅から接続して出席できれば、そのうち不登校という概念すらなくなってしまうかもしれません。ですからこの先生が疑問を持たれたのはいいことです。むしろ不登校に対する見方を変えていくチャンスです。

20年以上教師をやってきて、登校の見方を変えろというのはなかなか厳しいかもしれません。徐々に見方を変えていけばいいのです。過渡期を経験した人だからこそ「昔は不登校っていうのがあって、みんな学校に来なければならなかったんだよ」という語り部になれるかもしれません。

不登校対応はチームで当たるのが鉄則

文科省の調査でわかったことの一つに、不登校のきっかけの30%が学級担任だという結果があります。ですから、特に小学校の対応で気をつけていただきたいのは、チームで支援をすることです。

「チーム学校」があらゆるところで言われているように、今や教育相談もチームで行うのが常識です。なのに、多くの小学校に「教育相談部会」がない。あってもきちんと開いていない小学校が非常に多いです。

最低でも月に1回は校長がリードして開いてほしいのです。各学年の報告をして、教室に入れない子供や自宅にいる子供の対応を、学級担任個人ではなく部会で決めてください。

今の小学校の不登校対応の課題は、「ほかの先生に面倒かけるから、家にいなさい」というような指導を、学級担任がしてしまうことです。教室にいるのか自宅にいるのかという二者択一を迫りがちなのです。

中学校では教室に入れなくても「別室登校」という選択肢が当たり前にあります。しかし小学校の学級担任の先生は、どうも自分の恥のように思ってしまうのか、個人でそういう選択肢を出さない(出せない)ことが多いのです。

部会で「教室に入れなくても、学校には来られるのなら別室にしましょう」と判断した子供は、別室で対応すればいいのです。そういう選択肢を出していくことで、子供の将来が変わってきます。別室に来られる子供は、何かのチャンスで普通に教室にも入れるようになります。

子供の人生に関わることなので、担任個人の判断に委ねるのではなく、ぜひ部会で集団で決めるようにしてください。

連続欠席3日目の家庭訪問がポイント

「連続欠席3日目で家庭訪問を」と私は呼びかけています。3日目の子がいたら誰が家庭訪問をするかを、部会で決めることです。できれば定期教育相談会などの時に、子供自身が選んで、「2人きり」で話したことのある先生がいいでしょう。

部会が開けない時は教育相談の中心にいる先生が決めてください。学級担任に決めさせないことです。不登校のきっかけが学級担任かもしれないのに、家まで来たら登校したいとは思わないはずです。それより、その子とうまく関係を作れている先生は誰なのかを部会で把握しておき、その先生が家庭訪問をするのがいいのです。

そのためにも4月~5月の定期教育相談の面談は、すべての子供が、自分の選んだ先生とするのがいいのです。実際このやり方をすると、小学校でとても評判がいいです。

複数の教員で子供をケアする雰囲気を作っておくのがとても重要なことです。子供から見れば当たりはずれなく、安心して先生と関われることになります。どの小学校でもそうしたチーム対応のシステムを構築することが求められています。


諸富祥彦

諸富祥彦●もろとみよしひこ 1963年、福岡県生まれ。筑波大学人間学類、同大学院博士課程修了。千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表を務め、長らく教師の悩みを聞いてきた。主な著書に『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『図とイラストですぐわかる教師が使えるカウンセリングテクニック80』『教師の悩みとメンタルヘルス』教室に正義を!』(いずれも図書文化社)などがある。

諸富先生のワークショップや研修会情報については下記ホームページを参照してください。
https://morotomi.net/

取材・文/長尾康子

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