ICTが本当に苦手で授業に苦心しています【現場教師を悩ますもの】

連載
諸富祥彦の「現場教師を悩ますもの」
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「教師を支える会」代表

諸富祥彦

「教師を支える会」を主宰する『現場教師の作戦参謀』こと諸富祥彦先生による連載です。教育現場の実状とともに、現場教師の悩みやつらさを解決するヒントを、実例に即しつつ語っていただきます。

【今回の悩み】タブレット授業が苦手で、指導計画の意欲がわかない

1人1台のタブレットを活用することが今年度から始まり、学校を挙げて「授業で使うように」との方針で動いています。じつは私はコンピューターが苦手で、どうもついていけません。
「やらなければ」というのは頭ではわかっているのですが、指導計画を立てる気持ちがわいてきません。他の先生と比べて、教師としての力が足りない、劣っていると感じてできない自分に悩んでいます。

(小学校教諭・5年生担任・48歳)

楽しくできそうな実践例の模倣から

小学校を訪問すると、教室でICTを活用している先生と、そうでない先生の落差が激しいのをよく目にします。なぜこれほど違うのか、ある小学校で管理職の先生にたずねてみると「うーん、やっぱり得意・不得意があるんですよね」との答えでした。たしかに個人差はあると思います。けれども、だからといって「やる気が起きません」などと投げている場合ではないのです。

コロナ禍で社会全体のデジタル化が進みました。リモートワークが普及し、買い物も打合せも飲み会もオンラインに移行しました。苦手だといって避けていたら、この先、仕事だけでなく生活全般が不便になる可能性だってあります。

かくいう私もパソコンやデジタルが本当に苦手です。本を書くときは最終的には紙で出力して校正をしているぐらいです。でも、Zoomは大学の授業で必要ですから、若い人にも頼りつつ、見よう見まねでなんとか使えるようになりました。すると私生活や取材でも活用するようになり、便利になってきたのです。この連載の編集部とのやりとりにもZoomを活用しています。

ご相談の先生も、苦手意識を払拭するには、どんどん使って慣れていくしかないです。ICTに関しては誰もが初心者です。変にプライドを持つ必要はありません。「若い人に聞く気になれない」などという気持ちは捨てましょう。

どうしても若手に頼りにくければ、インターネットそのものに頼りましょう。今やICTを活用した授業の実践例や指導計画例は、この「みんなの教育技術」をはじめ、いろいろなウェブサイトに掲載されているし、本や雑誌もたくさん出ています。ネットで「授業 ICT活用」のようなキーワードで検索すれば、多くの情報にアクセスできます。

まずは、そこで紹介されている実践事例の真似から入っていいのです。「これなら自分にもできそうだ」「自分も楽しいし、子どもたちも楽しめそうだ」というものを選び、模倣から始めて、慣れたら自分なりのものを組み立てればいいのです。

みんなの教育技術
「備えあれば憂いなし!オンライン授業・ICT活用術」特集はこちら

ICT活用は逃げ切れない

今回ご相談の先生は、もともと授業に自信がない、指導案作成に苦手意識を持っている方かもしれません。そこにICTという課題が降ってきたので、ますます授業が嫌になってしまったのかもしれません。だったらなおのこと、これを機会に勉強しましょう。ICTを使っても授業や子どもたちの学ぶことが劇的に変わるわけではないのです。

定年までに10年以上あるわけですから「なんとか逃げ切れる」ものでもないですよ。インターネットで情報を集め、ちょっとずつ真似をし、どうしてもわからないところは若い人に頼りながら、できることから始めましょう。そんなに難しいことではないですよ。土日に少しずつパソコンに触れることから始めてほしいと思います。レッツエンジョイ!ですよ!


諸富祥彦●もろとみよしひこ 1963年、福岡県生まれ。筑波大学人間学類、同大学院博士課程修了。千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表を務め、長らく教師の悩みを聞いてきた。主な著書に『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『図とイラストですぐわかる教師が使えるカウンセリングテクニック80』『教師の悩みとメンタルヘルス』教室に正義を!』(いずれも図書文化社)などがある。

諸富先生のワークショップや研修会情報については下記ホームページを参照してください。
https://morotomi.net/

取材・文/長尾康子

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