頼れる先輩が異動してしまうようで、相談できる人がいません【現場教師を悩ますもの】

連載
諸富祥彦の「現場教師を悩ますもの」

「教師を支える会」代表

諸富祥彦

「教師を支える会」を主宰する『現場教師の作戦参謀』こと諸富祥彦先生による連載です。教育現場の実状とともに、現場教師の悩みやつらさを解決するヒントを、実例に即しつつ語っていただきます。

【今回の悩み】職員室内で頼れる人を見つけるにはどうすれば?

新任のときからお世話になっている先輩が、そろそろ異動かも……という噂が聞こえてきました。学校内でいろいろなことを相談できる相手がこの先輩しかいません。

来年度からどうしたらいいか戸惑っています。職員室の中で頼りになる人を見つけるにはどうしたらいいですか? 自分からどんなふうに他の先生に話しかければいいのかわかりません。

(小学校教諭・ 3年生担任・20代、教職年数:4年目)

何でも聞けるのは20代の特権

正直に「私、こういうことで困っているので教えていただけませんか」。そう言えるのは20代の特権です。「何でも聞ける」のは若いからこそです。普段から見ていて温かそうな先生、否定しなさそうな先生に自分から声をかけてみましょう。

「この人は否定しないな」「いろいろと教えてくれそうだな」「頼ってくる人をサポートするのが好きそうだな」という匂いのする人がいますよね。 普段から職員室の様子を見ていると、わかるはずです。

そして、声をかける前に「人間を見る目」を鍛えた方がいいですね。まずは、他の先生がどうしているかを観察することから始めてみてください。あの先生は、あの先生にこんなふうに相談に乗ってあげているんだ、とよく観察することです。

友達や恋人を作る時もそうですね。優しそうな人だなとか温かそうな人だな、と思って声をかけてみたら、良好な関係が築けるということがよくあります。他の人にどうしているかを見て、最初の一歩を踏み出しましょう。

受け身ではなく自分から声をかける勇気を

もしかしたら、この相談の先生は普段の人間関係が受け身で、相手から何かをしてもらうことに慣れてしまっているのかもしれません。だとすると、プライベートな人間関係にも響いてくることです。

「自分から誰かに声をかける練習」をしておく方が、職業生活でも私生活でもメリットになります。自分から声かけをする練習をしてみませんか。まわりの対応を見て、大丈夫そうな人を見つけましょう。

ちょっと頼られた瞬間に、一瞬、けげんな表情になるのは誰でも同じです。その10分後に優しい顔になる人もいますから、ここは人間関係ウォッチングの能力を磨く時です。

最初に「えっ!? 」という態度を取っていても、少しすると優しくなる。中年世代に多いですね。「面倒くさいけれど、イヤじゃない」という心理です。ですから最初の反応だけを受けて決めたり、判断したりしないでください。

援助を求めるのもスキルのうち

この先生が「誰に頼ったらいいか」という気持ちになっていることをほめてあげたいです。人に頼る「援助希求」をすることは、この厳しい時代に教員を続けていこうと思ったらマストの能力でしょう。私が見ていると、人に頼ることのできない先生が辞めていっているのです。

先生方のカウンセリングをしていると、人に頼るのが苦手な方が多いです。「自分で何とかしなければ」と背負い込んでしまう。それで、いよいよ学級が上手く行かなくなって、うつ病になってから「何でもっと助けてくれないんだ!」と、急に周囲を責め始める人がいます。極端なところに追い込まれていく人が多いのです。

でも、学級がすでに崩壊している状態にある人をまわりがサポートするというのは、ほとんど無理に近いことです。「もっと軽く困っている時点で早めに助けを求めてくれたら、なんとかできたのにな」という気持ちにまわりはなります。

ぜひ、小さなところから援助を求めるスキルを身につけましょう。


諸富祥彦

諸富祥彦●もろとみよしひこ 1963年、福岡県生まれ。筑波大学人間学類、同大学院博士課程修了。千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表を務め、長らく教師の悩みを聞いてきた。主な著書に『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『図とイラストですぐわかる教師が使えるカウンセリングテクニック80』『教師の悩みとメンタルヘルス』教室に正義を!』(いずれも図書文化社)などがある。

諸富先生のワークショップや研修会情報については下記ホームページを参照してください。
https://morotomi.net/

取材・文/長尾康子

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