全員が本気で競走するにはどうする? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #20】

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平川 譲
使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業

かけっこや短距離走の授業を行っていると、子どもたちによく「本気で~」「全力で~」と励ましている自分がいます。走力が低い子の様子を観察すると、低学年段階では入学前に本気で競走していないためか、本気で走るということ自体が分かっていない子どもを見かけます。また、中学年以降では、競走で負ける経験ばかりしていたためか、競走する意欲を失っている子どももいます。これらを払拭するためのとっておきの教材を、今回は紹介します。いつも同じくらいの走力の子と競走する「かけっこ入れ替え戦」です。

執筆/神奈川県公立小学校教諭・齋藤 裕
監修/筑波大学附属小学校教諭
 体育授業研鑽会代表
 筑波学校体育研究会理事・平川 譲

かけっこ入れ替え戦の魅力

仲間と競い楽しみながら全力で走ることができる
勝敗を素直に認めることができる

1 競走の場と行い方

一緒に走る組で並んで準備します。ゴール後は、着順で前から並びます。教師は1人なので、ゴールの位置に立ち、タイムを計測します(図1参照)。

「先生をよく見てスタートをするんだよ。」と指導をしておき、教師は声を出さずに「用意」で腕を上げ、「スタート」で勢いよく腕を下ろすことでスタートの合図とします。この約束を確認しておけば、声を出して聞こえたか聞こえていないかを心配する必要はありません。

このように簡単なルールにしておくことで、子どもたちは走ることに集中し、全力を出しやすくなります。

最後の組の子が走り終わって、上のイラストのように応援席に座ったら、先頭の1位の子は1つ速い組に、最下位の子は1つ遅い組に移動します(図2参照)。
次の競走は、入れ替わったメンバーで行うということを繰り返します。1回の授業では、2回程度が適当だと考えます。それ以上行うと、疲れて新記録は出にくくなります。

2 タイム計測について

ストップウォッチを使ってタイムを計測します。おすすめは、3人組での競走です。ほとんど難しさを感じることもなく、タイムを計測することができます。3人組でも20~25分で2回競走ができます。

ただし、人数が多く4人組の競走になる場合、4人すべてのタイム計測が難しくなります。その時は、1番と4番を計測します。2番と3番については、その間のタイムで間隔を考慮しながら記録を伝えることも1つの方法です。常に正確なタイムを伝えたいと考える方は、1位2位を計測する、競走に勝つとタイムを計ってもらえるという意識をもたせる方法もあります。

一番遅い組(図2の1組)でいつも最下位になってしまう子がいれば、毎回タイムを計測する(個人内評価を続ける)ことで、意欲を低減させないようにします。

3 事前準備と心構え

50m走の記録をもとに、同程度の3人組(4人組)を決めておきます。同じくらいの速さの子と競走をしているので、「1位になるチャンスがある」と思いながら自然と全力で走りきる姿が低学年でも高学年でも見られます。勝つか負けるかわからないドキドキする場を設定してやれば、子どもの姿はきっと変わるでしょう。子どもは、徐々に全力で走る感覚をつかんでいきます。このような経験を豊富にさせたいと考えています。

また、記録はできる限り計測し、新記録を出した子には、終了後に報告をさせ、名簿に記録するようにしています。新記録の場合には、大いに評価し、褒めてやることが大切です。個人の伸びを評価するように心がけています。

今回は、かけっこ入れ替え戦の紹介でしたが、入れ替え戦は、他教材でもアレンジ可能な方法です。本連載においても、今後入れ替え戦を用いた教材を紹介する予定です。今後の連載をお楽しみに。また、明日からの体育授業で活用してみてください。

【参考文献】
筑波大学附属小学校体育研究部(2017)『1時間に2教材を扱う「組み合わせ単元」でつくる 筑波の体育授業』明治図書出版

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執筆
齋藤 裕
神奈川県公立小学校 教諭
1978年東京都豊島区生まれ。子どもたちが「夢中になって体を動かそうとする体育学習」、体育を指導することを苦手と感じている教師が「これならできそうと思える体育学習」を目指して日々研鑽中。


平川譲先生

監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。


イラスト/佐藤道子

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