コロナ時代につながる!音楽科の授業
関係性の質を高めた組織では、チームとしての思考の質が高まります。高い質の思考は行動の質につながり、結果の質の高さへとつなげることができます。新型コロナ時代において、友達との関係性を築くための音楽科の工夫を紹介します。
執筆/桐蔭学園小学校教諭・岩井智宏
監修/文部科学省教科調査官・ 志民一成
目次
5年 音楽で友達とつながろう
手遊び歌
5年生の4月は、音楽を通して小学生が子供らしく男女で仲よく活動できる土台を作るラストチャンスくらいのイメージで活動に向かうことをおすすめします。このような活動空間の土台は、のちのち音楽的技能の構築や思考の広がりなどにも大きく関わってくると考えています。
なぜなら音楽をクラスの仲間の前で表現するというのは大きな信頼関係が必要であると考えるからです。これまで数多くの子供たちと音楽活動をやってきましたが、音楽授業は基本の活動であっても他教科に比べて高い心の解放感が必要であると感じます。
逆に言えば音楽の授業で友達との関わりを広げてクラスに明るさを作っていけるのではと思うようになりました。その結果、心が解放され、自然と物事に前向きな気持ちや思考の広がりへとつながっていくように感じます。
5年生の4月は特に大切な時期です。新型コロナ禍においても音楽の授業において心を解放できる安心できる空間を作っていきたいと感じます。
教材:線路は続くよどこまでも
1.拍を使って遊ぼう
音楽に合わせて手拍子をリレーで渡していく。歌わなくても音楽で友達とのつながりを感じる。
2.立つ座るリレー
次は手拍子に合わせて立っていく。全員が立ったら次は座っていく。視覚的効果で音楽を感じ取る。動きがあることで活動に取り組もうとしている姿に価値付けができる。
3.コロナバージョン手遊び
旋律は、教師が演奏したり、CD音源などを流したりして、子供たちは手遊びで触れ合う。その際、手の甲を使って活動する。
♪ 線路はつづくーよー
♪ どーこまでもー
*基本形はインターネット「線路は続くよどこまでも 手遊び」で検索
アレンジバージョン 肩たたきゲーム
♪ たのしいたびのゆめ つないでる
「つないでる」の(グー手拍子グー)の最後のグーの部分でじゃんけん。
負けたほうが勝ったほうの友達に拍に合わせて肩たたき。
6年 アプリを使いこなそう
「ロイロノート」で音楽活動
新学習指導要領において、思考力、判断力、表現力等は大きなポイントのひとつです。しかし、形に見えにくい「思考・判断・表現」の観点を見取るのに苦労している先生方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
音楽科の授業においても楽しく活動する中に形を残して子供たちの思考を見取る手段が必要になってきたように感じます。私はロイロノートというアプリを使って音楽の様々なシーンで形を残すようにしています。その時のポイントとなるのが「発問」です。子供たちから聞きたい意見を教師側が焦点化して発問することが大変重要になってきます。
教材:ふるさと(歌唱実践編)
(編曲/浦田健次郎)
1.曲を聴いて印象を残す
教材との出合わせ方は様々ですが、今回の実践でははじめの授業で純粋に聴いて歌ったあとに曲の印象を残す実践から始めました。子供たちはその時点で様々な感受性をもっています。
2 表現を深めていく
その後、教材への理解を深めていき「フレーズの最後」(白丸は二分音符を示している)「ずれる(カノン的)ハモリ」「3 声に分かれるハモリ」に焦点を当てて思考し、表現を深めていきました。違う色の文字は友達の意見を聞いて追加した意見です。
歌唱活動において、音楽的な事実をもとに自由な発想で表現を深めていく部分が最も魅了的だと感じます。それぞれの教材のポイントを分析し、子供たちと一緒に思考し、表現を深めていきましょう。
課外活動 リモートで合唱コンクールを実現
私は合唱団を担当していますが、全国一斉休校の時は練習がまったくできませんでした。その中で合唱団員からリモート練習をしてほしいという手紙が届き、手探りの中、始めることになりました。そこで練習を続けたことで昨年8月に行われた神奈川リモートコンクールにも参加することができました。どんな状況であってもできることを考えて活動を続けることの大切さを感じました。
特別活動(音楽委員会)
新型コロナに負けない歌をつくる!『手洗いソング』
これまで委員会の活動では、朝会で今月の歌を全校で歌う企画や音楽を通して他学年交流を大切にする企画などを進めてきました。しかし新型コロナ禍において、朝会はなくなり子供たちが一定の場所に集まる企画などもできなくなりました。
そこで子供たちで「新型コロナ禍でもできる委員会企画」と題して活動を考えました。すると子供たちから、「新型コロナに負けないように歌で勇気を与えたい」という案が生まれてきました。委員会の中で歌詞を考えてメロディーを考えて振付を付けました。
また、タブレットを導入して動画を撮り動画編集アプリを使って編集まですべて子供たちが行いました。
先が見えない世の中だからこそ、その時にできることを考えて実践し、達成するといったプロセスに大きな意義を感じます。
構成/浅原孝子 イラスト/やひろきよみ
『教育技術 小五小六』2021年4/5月号より