• 勉強マーク小学館ロゴ
  • facebookアイコン
  • twitterアイコン

子どもを犯罪から守る「景色解読力」とは

2019/5/18

子どもたちに「襲われたらどうするのか」ではなく、「襲われないためにどうするのか」ということを教える必要がある――これが立正大学教授・小宮先生の教える「犯罪機会論」の考え方です。その理論をわかりやすくまとめた 『写真でわかる世界の防犯 ─遺跡・デザイン・まちづくり』 は、犯罪学の本とは思えないような世界各地の美しい建物や風景の写真で構成されていて、一般の人が手にとって読みやすい本になっています。この本と先生が行うフィールドワークを中心に、実践に基づいた防犯教育についてお話をうかがいました。

立正大学教授
小宮信夫先生

防犯教育はアクティブ・ラーニング

――先生が教える犯罪機会論と、日本の防犯教育の違いは何ですか?

小宮   日本の防犯教育では、ほとんど「人」に目を向けさせていて、 「不審者に気をつけなさい」とか 「怪しい人にはついていかない」 と教わります。しかし、現実では誰が不審者なのか適切に見分けられません。

さらに警察や学校では、 不審者が襲ってきた場合を想定し、子どもたちに防犯ブザーを鳴らして大声を出す練習をさせますが、 実際には子どもの誘拐ではいきなり襲ってくる犯罪者は1〜2割です。また、「防犯ブザー」を鳴らしている時点ですでに襲われているので、少しも「防犯」ではないのです。

――先生が行っているフィールドワークはどのような内容ですか?

こどもたちが作った地域安全マップ
小宮先生の指導のもと、子どもたちが作った地域安全マップ

小宮 私が行う地域安全マップづくりのプログラムでは、「人」ではなく「景色」に目を向けさせることを重視しています。

そのため、まず「入りやすい」「見えにくい」というキーワードを教えてからフィールドワークに出かけます。すると「入りやすい」「見えにくい」というキーワードが物差しになり、犯罪に巻き込まれる危険性について正確な測定ができるのです。

駐車場の紹介写真
子どもたち自身の言葉で、見えやすさ、見にくさを表現できています

子どもたちに「騙される経験」をさせる

小宮 また、子どもたちは、「自分は絶対に不審者に騙されないだろう」と思っています。 だから私はフィールドワークのときに、子どもたちをわざと騙します。

いかにも入りやすくて見えにくい、危険な場所で「見て! ここにかわいい猫ちゃんがいる!  みんな来てごらん!」と言うと、子どもたちは「どこどこ?」と寄ってきてしまいます。そうやって騙される経験をさせます。

その上で、「だから景色を見なくてはいけないんだよ。私がどんなにいい人そうに見えても、その先の景色を見れば、 犯罪者の好きな場所にいることがわかるでしょう。その人を信用してよいかどうかは、その人の顔や様子ではなく、その人がいる景色を見て決めるんだよ」と伝えるのです。

防犯教育は、実際に体験することで初めて免疫がつく、まさにアクティブ・ラーニングなのです。

防犯教育は学力向上にもつながる

小宮信夫氏
小宮信夫先生 撮影/編集部

小宮 私が教える地域安全マップづくり、防犯教育は、犯罪機会論に基づいて、「景色解読力」がキーワードとなっています。解読する力というものは危険予測能力だけではなく、観察力、集中力、 推理力、洞察力に連動していきます。全ての教科に通じるものがここにはあります。つまり、防犯教育は学力向上にもつながるのです。

小宮先生のホームページには、さらに詳しい研究の紹介等も。詳しくはこちら。


小宮信夫先生の著書

『写真でわかる世界の防犯 ─遺跡・デザイン・まちづくり』
小宮信夫・著  定価:本体1800円+税 ISBN:978-4-09-8401789
https://www.shogakukan.co.jp/books/09840178
試し読みはコチラ

世界92か国の遺跡や街並みを徹底分析した、世界初のオールカラー「防犯写真集」。 現代建築や地域安全のテキストとしてはもちろん、行き先々で安全に過ごすための「旅の友」としてもお勧めの一冊。また、歴史やアート、映画や小説の「もう一つの楽しみ方」も教えてくれます。


『教育技術』2017年7/8月号より
インタビュー/EDUPEDIA まとめ/出浦文絵
●これと関連したインタビュー記事が「EDUPEDIA」でも配信されています。

関連する記事

その他記事一覧

保護者会で信頼を得る話の聴き方、進め方

小学校の保護者会で、相手のことを思いやるあまり援助的・指導的な話し方になると、かえって自分の話をしっかり聴いてもらっていないと保護者は感じてしまいます。個人面談…

2019/7/16

おじぎ 分離礼
正式な礼の仕方「分離礼」を指導しましょう

一学期が終わるころ、4月から始まった新しい学級はシステムが定着し、安定してくる時期です。高学年は、委員会活動、クラブ活動や異年齢交流活動など、学級の外で頑張るこ…

夏の研修会
ベテラン教師直伝!夏の研修会200%活用術

夏休み期間は、各地で「研修会」が目白押し。どの研修会に行き、どのように学び、どう活用すればよいのか、そのハウツーをご紹介します。

2019/7/13

プラスチック色鉛筆 自由課題
想像力と創造力を鍛える自由課題「色鉛筆ドロップス」

「プラスチック色鉛筆」は、ちょっとした空き時間と相性抜群の文房具です。芯が折れにくい、手が汚れにくい、などの特長があり、片付けも容易。机の中に常駐させ、いつでも…

2019/7/12

映画『風をつかまえた少年』で、学びの本質を考える

学校にも行けず、食べるものもない。アフリカの貧しい地域での過酷な状況の中、14歳の少年が一冊の本と出会い、独学で作り上げた風力発電で飢饉から村を救い未来を切り開…

2019/7/11

中野信子
「キレる」をスキルに!戦略的活用でコミュニケーションに活かそう!

「キレる」という感情は、人間にそもそも備わっているものーーそう語るのは『「キレる!」脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」』の著者である脳科学者の中野…

この夏、注目の研究会(2019年7月下旬から4本)

まもなく夏季休業、教師力アップのために有効に使いたいですね。7、8月は研究会も多数開催されるので、参加して自らの学びにつなげてはいかがでしょうか。そこで7月下旬…

2019/7/3

菊池先生と林先生
この夏、見ておきたい「学ぶこと」の本質を映し出す教育映画2作品

教育の本質とは何なのか?を考えるよい機会となる教育映画『ニッポンの教育 挑む(第二部)』『林竹二の授業 ビーバー』の上映イベントを紹介します。教師の力量をどう高…

EQイメージ
保護者も気にする「教師のEQ、高いか低いか」【保護者座談会】

昨今、注目されている教師のEQ(Emotion Intelligence Quoient/心の知能指数)。EQが高い先生でよかったこと、反対に低い先生で残念だっ…

2019/7/2

ぬり絵
心が落ち着く★飾れる 【プリント配付OKぬりえ】7月

ちょっとした隙間時間にも活用できる低学年向けのぬり絵をご紹介します。
7月は朝顔や花火など夏にぴったりなぬり絵です。PDFとしてダウンロードもできます。ぜひご…

もっと見る