コロナ下の特別活動をどのように行うか?教科調査官に聞きました

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新型コロナ対策:新しい授業と学級づくりの知恵、続々更新中!

新型コロナウイルス感染症対策によって、学校行事や学級活動などの実施に大きな影響が出ています。コロナ下で求められる特別活動の意義や、低学年における特活の具体的な進め方について、文部科学省特別活動教科調査官の安部恭子先生に伺いました。

コロナ下の特別活動をどのように行うか?文部科学省特別活動教科調査官に聞きました_安部 恭子 先生

安部恭子先生(あべ・きょうこ)●埼玉県大宮市立小学校教諭として教職をスタート。さいたま市立小学校教諭、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭として勤務。2015年より、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官[特別活動]。趣味は温泉巡り、「コロナが収束したら、楽しみたいですね」。

学校でしか経験できない協働的な学びを大切に!

―コロナ下で子供たちは例年とは違う学校生活を送っています。今、先生方がすべきことはなんでしょうか?

安部 入学式や始業式が6月になってしまったとか、しばらく分散登校が続いてクラス全員がそろうのに時間がかかってしまったという学校も多かったと思います。そういう状況になったときに、先生方が一番心がけていたのは、学校と子供をつなぐ、子供同士をつなぐことだったのではないでしょうか。

臨時休業中、学びを止めないように、子供たちに教材を配ったり、オンラインを活用したりした学校は多かったと思います。そういう手立てもとても大事なことですが、学校が最も大切にすべきは、学校生活をどう子供にとって豊かなものにするかということです。

6月に多くの学校で臨時休業が明けて、4か月が経ちました。この4か月のご自身の学級経営をふり返ってみてください。子供たちにとってどれくらい学校生活が楽しく豊かなものになっているでしょうか。限られた時間のなかで、例年以上に「授業を進める」ことに意識が向くと思います。

しかし、塾やICTでの学びと違い、学校が最も大切にしているのは、協働的な学びです。子供たちが学び合う上で大切なのは、自分の考えとどう違うかを比べて聞いたり、友達の考えにつなげて発言したり、話し合って新たな考えを生み出したりすることです。双方向にならなければ学び合いとは言えないし、子供の発想は広がらないわけですが、学ぶ基盤となる学級づくりがしっかりできていることが前提となります。

それから、ソーシャルディスタンスを保つこと=子供同士が関わらないことではありません。グループ学習も工夫次第でできるのです。

―どんなにソーシャルディスタンスと言っても、低学年が活動すれば、子供同士がくっ付いてしまうという声をよく聞きます。

安部 例えば、ある学校では休業中に、みんなの学校をみんなで楽しい学校にするためのアイデアを募集しました。すると、子供たちから「3密を避けるキャラクターをつくりたい」という考えが出され、実現しました。他にも、ソーシャルディスタンスと言っても分かりにくいから、廊下にお花のマークを貼ってどれくらい間隔を空けて過ごせばよいのかを可視化するなど、子供たちの豊かな発想を生かし、学校生活の充実につなげています。

また、ソーシャルディスタンスを学校のきまりとするだけでなく、実生活と結び付けて自分ごとにすることも大切です。子供が自分の生活をふり返って、「私はこれについて気を付ける」と、自分で決めるようにします。

文部科学省特別活動教科調査官 安部恭子先生
「『自分ごと』としてとらえることが大切」

子供に話合いの段階から目的を意識化させる

――低学年における特別活動の具体的な進め方について教えてください。

安部 新学習指導要領の総則に、「学習や生活の基盤として、教師と児童との信頼関係及び児童相互のよりよい人間関係を育てるため、日頃から学級経営の充実を図ること」とあるように、学級経営で一番大切なことは、先生と子供の信頼関係、子供同士の人間関係を築くことです。

教材研究や板書の工夫、個々の子供に合わせた指導やプリントの作成なども学級経営の一つです。でも、学級や学校は集団で学ぶところです。先生方が学級経営の充実を図るのはもちろんですが、子供たち自身がこんな学級生活をつくりたいというように、目標に向かって学級生活の充実・向上に取り組んだり、よりよい人間関係をつくったりすることが、学級経営の充実につながるのです。

「学級活動⑴を中心とした」特別活動の実践が、子供同士のよりよい人間関係や、互いを尊重し合う温かい学級の雰囲気、学びに向かう主体的で協働的な学習集団をつくります。また、なりたい自分に向けて前向きにがんばることができるようにします。

10月になった今、もしも学級の全員がそれほど多く関わっていないと感じているなら、例えば「もっと仲よくなろう会」のような、子供たちが互いを知り、仲を深めるための集会活動について話し合って実践する。今年は合同音楽会ができないから、「手作り楽器音楽会」を学級ごとに行うなど、教科の学びを生かした集会活動を行うことも考えられます。

そして、学級活動として集会活動を行うからには、「なんのために」がなくてはなりません。「友達のよいところをいっぱい知るために」など、学級集団としての生活上の課題の改善のために行うんだということを意識できるようにします。「なんのために」は先生だけが分かっていてもだめで、子供たち自身が話し合う段階から提案理由とともに分かっていなければなりません。でないと、「僕はこれがやりたい」「私はこれが好き」になってしまいます。それなら、休み時間や放課後、家庭で行ってもいいわけですよね。

新学習指導要領の特別活動の目標に「集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ」とあるように、「自分にとっても、学級のみんなにとってもよいこと」は何かを考えて、話し合って決めることができるようにすることがとても大事です。ただし、低学年は経験が少ないわけですから、議題については、「先生は前のクラスでこんなことやったよ」「お兄さんお姉さんのクラスで聞いてごらん」など、子供たちの発想を広げられるような土壌づくりが必要です。そして学級会では、まず先生が子供たちのモデルになって司会や黒板記録を行い、徐々に子供たちが自分たちだけでできるように積み重ねていきましょう。

それから、学級会でよく聞く悩みは、1時間で話合いが終わらないことです。話し合うことの重点化を図り、「実践するために話し合う」ということを子供たちがしっかり意識するように指導されるとよいと思います。

―学校行事はどう考えるべきですか?

安部 遠足や運動会など、地域の感染状況などによっては実施が難しいものもあるでしょう。今までと同じようにはもうできません。しかし、できないからやらないではなく、創意工夫して行うことが大切です。同じようにはできないからこそ、うちの学校にとって、どの学校行事を大事にしなければいけないか、この学校行事を行うとしたらどんなふうに工夫すればできるかを考えてほしいのです。こんな状況だからこそ、学校行事を通して子供たちのどんな資質・能力を育むのかを明確にします。やめることを目的に取捨選択するのではなく、重点化を図るのです。

実施上の工夫はいろいろ考えられます。例えば、今までは体育館でやっていたけれど、間隔を空けるために校庭で行うなど、会場を変える。今までは全校で行っていたけれど、低・中・高のペア学年ごとに行うなど、分散して実施する。放送を活用するのも一案です。入学式や一年生を迎える会などで、上級生の歌や言葉をビデオメッセージにした学校も多かったと思います。

学校行事は、子供たちの学校生活に彩りや潤いを与え、豊かなものにします。学年という大きいまとまりや、異学年と関わりながら大きい集団で学ぶことはとても大切です。しかし、ただ参加したのでは、「楽しかった」だけで終わってしまいます。そうではなく、学校行事に向けて友達と一緒に準備や練習をがんばった、みんなで役を担って協力して実践したからうまくいったなどの経験が自己有用感や自己存在感の向上につながります。こうした経験は、学校だからこそできるものです。

文部科学省特別活動教科調査官 安部恭子先生
「自分の学校に必要な学校行事を重点化し、できることを創意工夫しましょう」

一人で抱え込まずにつらいときは助けを求める

―コロナ下でも、子供のためにがんばっている先生方へメッセージをお願いします。

安部 通常とは違う業務があったり、配慮しなければならないことが多かったり、先生方には例年以上の負担がかかっていると思います。だからこそ、一人で抱え込まないで、ときには他の先生の助けも借りながら、同じ学校のチームとして一緒にがんばっていくことが大事だと思います。先生方が子供の笑顔からエネルギーをもらえるように、先生方の明るい笑顔や前向きにがんばる姿が、子供たちや保護者のみなさんの安心やエネルギーになると思います。だから、まずは笑顔で元気に過ごし、そしてつらいときには抱え込まずに悩みを他の先生や管理職に相談してください。

これから残り6か月。先生方自身がこの子たちと過ごせてよかったなと思うと同時に、子供たちもこのクラスでよかったなと思えるような学級を、ぜひ子供たちとともにつくてほしいと思います。

取材・文/長昌之 写真/岡田泰裕

『教育技術 小一小二』2020年10月号より

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