子供に対するイライラが止まらないとき、どうしたらいい?|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

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沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

子供の自主性・自立性を引き出すユニークな授業で注目を集めるカリスマ教師の沼田晶弘先生。 学級経営のほか、コーチングやリーダーシップ、信頼関係構築などの講演も多数こなす沼田先生に、「子供たちのトラブルや、予想もしない行動にイライラが止まらず、つい感情的になってしまう」という先生の悩みにアドバイスをいただきました。

撮影/下重修

子供が大好きで、期待をするからイライラする

子供に対してイライラしてしまうことに悩んでいる先生は、恐らく子供のことが大好きなんだよね。

大好きだし、ものすごく子供に期待しているからイライラしてしまうのだと思う。

例えば、跳び箱の授業で、8段跳べるはずの子が6段も跳べないと「どうしたんだ! やる気がないのか?」ってイライラするけれど、跳び箱はもちろん、運動そのものが苦手な子が6段跳べなくてもイライラしない。
もちろん、6段跳べるようになってほしいと願っているけれど、すぐに跳べるとは期待していないからだよね。

もちろん、子供に期待することはとてもいいことだよ。

でも期待し過ぎてしまうと弊害も出てくる。叱らなくてもよいことで叱ってしまう場合があるからね。

とくに、子供を叱るときに、「何をやっているの!」「どうしてそんなことするの!」と感情的になってしまうときは要注意だ。

イライラしたときの、叱り方に要注意

例えば、自分の子供に、「Aさんのおうちに遊びにいくなら、帰りに卵を買ってきて」と子供にお願いするとしよう。

この場合「子供だから、忘れてしまうこともあるだろう」と思っていれば、卵を買い忘れて帰ってきても、「やっぱり…」と納得できるし「買って来れなかったのはどうしてかな? お店が閉まっていたかな? 忘れちゃったかな?」と叱らずに買わなかった理由を聞いてあげることができる。

しかし、「お願いしたのだから、当然買ってきてくれるだろう」と期待していると、買ってこなかったという結果だけ見て腹が立ってしまう。

まじめな人ほど、事前にいろいろ準備もしていたりするから、「何度も確認したし、メモも渡したのに…」と自分がやってあげたことを思い出してさらにイライラしてしまい、「どうして買ってこなかったの! 買ってきてって言ったじゃない!」と感情的に叱ってしまうかもしれない。

家の白い壁に子供が落書きをしてしまったとき、

「子供なら壁にらくがきをしたくなるだろうな」と想像できる人は、ちゃんと教えなくてはいけないと思い、「この白い壁には絵を描いてはだめです」と伝えるだろう。

「まさかこんなきれいな家の白壁に絵を描いたりしないだろう」という期待があると、落書きを見て「何やってるの!」「どうしてそんなことするの!」と感情的に怒ってしまうだろう。

でも、そんな叱り方をしても、子供が落書きをした理由は一つだけ。

「楽しいから」に決まっているよね。

感情的になるのは、子供のことをよく考えているから

でも、つい感情的になってしまうというのも、それだけ自分のクラスの子供が大好きな証拠でもあるよね。恐らく四六時中子供のこと考えて、一生懸命その子たちのために動いてるんだろう。

「子供のことで感情的になってしまう」ということは「子供のことをよ~く考えている」ってことだからね。

だから、期待した結果が出なかったり、期待通りの行動ができなかったとき、「自分が期待していたところでは力は発揮できなかったかもしれないけれど、別の違うところでものすごい力が発揮できるのかもしれない」と考えてみたらどうだろう。

自分の「かくあるべき」から脱却しよう

さらに、自分の「かくあるべき」から脱却することも大切だ。

例えば、「いい子に育ってほしい」という期待が大きいと、「いい子は先生の言うことをきくべき」「いい子は友達に優しくすべき」「いい子は隠し事をすべきではない」などと、自分の中の「いい子」である条件、つまり、「かくあるべき」姿を押し付けてしまうことがある。

でも、どんなに自分の中の「かくあるべき」姿を押し付けても、その子がいい子に育つとは限らない。

それどころか、伸ばせるはずの才能を伸ばせないこともある。

「かくあるべき」から脱却するためには、自分が信じている世界のほかにも、いろんな世界があって、いろんなことを考えている人がいて、いろんないい人がいる、と視野を広げて考えてみるといい

もしくは、自分とは全然違う発想をする人や、突拍子もないことを言う人と友達になると、自分自身の考え方や捉え方ももっと柔軟になるかもしれないよ。

柔軟な考えをもてるようになると、子供たちが自分の思いもよらぬ言動を取ったときも、「何でそんなことするの?」ではなくて、「おお、そうくるか」と余裕をもって捉えられるようになり、イライラすることも減ってくるんじゃないかな。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。

取材・構成・文/出浦文絵

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