現役校長がやさしく教える!初心者教師の動画づくり9つのコツ
コロナ休校中、これまで馴染みのなかった動画編集に奮闘している先生も多いのではないでしょうか。限られた時間で子供をひきつける動画を作るには、ITスキル以前のちょっとしたコツがあり、これを知っているのと知らないのとではかかる手間と質に雲泥の差が…! 現在、校長としてまさに動画作成を行っている俵原正仁先生の解説です。
執筆/兵庫県公立小学校校長・俵原正仁
目次
「それっぽい動画」でよしとする
このご時世、「授業動画をつくるように」と、いきなり教育委員会(もしくは管理職)から言われ、「なんでやねん! どうせぇちゅうねん!」と、関西人でもないのに大阪弁でツッコんでいる人が日本全国津々浦々いることと思います。
そんな貴殿に提供いたしますのが、本原稿。ちょっとしたポイントを押さえることで、ダラダラとした動画が、「それっぽい動画」になります。今まで動画を作ったことがない人には参考になること間違いありません。
撮影前のポイント
フリートークの名人でもない限り、全くのノープランでカメラの前に立つことは避けた方がよいでしょう。
1、シナリオと絵コンテを用意する
あらかじめ、シナリオを作っておきましょう。できれば、絵コンテを作ることができれば、事前にカット割りまではっきりするので、カメラ担当など一緒に作成する人とイメージを共有することができます。絵コンテといっても絵心は必要ありません。カット割りのための絵コンテなので、棒人間でもかまわないのです。
2、尺は長くても5分程度
時間は、長くても5分以内にしてください。教師は画面の向こう側で目の前にいないのですから、授業以上に子どもたちの集中力は散漫になります。よっぽど面白い動画をつくることができれば話は別ですが、動画作成の初心者にそこまでのクオリティは求められません。5分をめどに、シナリオをつくってください。シナリオを作ってみたらどうしても10分ぐらいになってしまった…そのような場合、10分の動画を1本ではなく、5分×2本の動画を作成してください。
例えば「学校たんけん」の動画をつくる場合、全部で10分ほどになってしまったら、「学校たんけん1 くつばこからわたしたちの教室まで」と「学校たんけん2 もっとたんけんしてみよう」というように、2つに分けるということです。
3、一つか二つのセリフごとにカットを変える
例えば、校長室で椅子に座った校長が5分ほどメッセージを送るといった、最初から最後までワンカットで同じ構図、同じ背景が続く動画は、いくら5分以内でも見る方は飽きてしまいます(芸能人のインスタライブなども画面の切り替えはありませんが、あれは芸能人だから飽きずにファンが見ているのです)。
つまり、子どもたちに集中して動画を見せるためには、一つか二つのセリフごとにカットを変えたり、撮影場所を変えたりして、画面にメリハリをつける必要があるのです。
一つのカットを短くすることは、一度に話すセリフの量も減ることにつながりますので、撮影時のNGを減らすことができるというメリットもあります。
4、パペットやペープサートを使う
また、学校で授業動画をつくる場合、顔出しNGということもあります。その場合、板書やノート、パワーポイントの画像を映しながら、教師は音声のみの出演という形になりますが、パペットやペープサートなどを使うと、画面が楽し気な感じになります。学校や学年でキャラクターをつくっておくと、学校再開の際にも使えて、一石二鳥です。
撮影時のポイント
撮影前の下準備がしっかりできていれば、撮影にそれほど時間はとられません。編集ソフトを使って、撮影後に効果音や音楽、字幕などを入れると、「それっぽい」どころか「それなりの」動画ができるのですが、今回はあくまでも初級編ですので、編集もできるだけしないという前提で話を続けます。
5、ホワイトボードを見ながら話す
あらかじめシナリオをつくっているので、セリフはすでに確定しているはずです。でも、そのセリフがうろ覚えであれば、間違ってしまったり噛んだりして、NG、やり直しになってしまいます。やり直しが続けば、撮影時間も伸びますし、何より後で編集しなければならなくなります。そうならないように、セリフを完璧に覚えて撮影に挑んでください…ということもめんどくさいので、ホワイトボードを使います。テレビでよく使っているカンペというやつです(スケッチブックで代用するのも可です)。
話し手の視線がしっかりとカメラ目線になるように、実際に撮影に使う時には、ホワイトボードはカメラの近くに提示するようにしてください。
6、ゆっくり話す、間をとって話す
劇作家の鴻上尚史氏は「正しい発声」を行うために、声の5つの要素(大きさ 高さ 速さ 間 声色・音質」を意識しなければいけないと言っています。動画撮影の場合は、この中でも特に、「高さ」と「速さ」と「間」を意識してください。声のトーンを少し上げて、いつもよりゆっくり目に話すと聞き取りやすくなります。歌のお兄さんお姉さん、劇団の人になったようなつもりで話してください。
7、カメラはできるだけ動かさない
撮影慣れしていない人ほど、ズームアップやパンなどを使いたくなるものです。でも、多用するとかえって画面は見にくくなります。画面に動きがないと、カメラを動かしたりズームレンズの機能を活用したくなる気持ちは分かります。実際、見る立場としても、動きのない画面は退屈と言えば退屈です。でも、三脚で固定した画面が一番見やすいのです。だからこそ、一つのカットを短くして、カット割りや背景を変えることで、動画全体の流れの中で動きを加えていくのです。
編集時のポイント
8、オープニング、エンディング映像を付け加える
いくつかのシーンをつなぐだけなら、無料の動画編集ソフトの基本的な操作で比較的簡単にできると思います。学年や学校で動画を何本か作成する場合、オープニング映像とエンディング映像をあらかじめ作っておき、新たに作成した動画の前後に編集でくっつけると、何となく番組っぽくなり、動画としての統一感、シリーズ感が出ます。「それっぽい動画」が完成します。
9、不要な「間」をカットする
カットとカットの間に「間」があると、間延びした感じになるので、できればその間を削除してつなぐと、見やすい動画になります。中級者以上になると、その間のリズムを全体の流れを見ながら編集の段階で調整したくなるので、撮影時にはあえてセリフの前後を長めに撮影するのですが、編集時にこのような手間をかけたくないという人は、撮影時によけいなシーンを撮らないようにするのが一番です。初心者はここまで全てを意識しなくてもかまいません。まずは、動画を作成してみましょう。楽しくなってきたら、さらにワンランク上の動画づくりに取り組んでみればいいのです。
いかがでしたか? 自分に合っていないと思ったら、無理をする必要はありません。「それっぽい動画」で大丈夫です。得意な分野に情熱を注いでくださいね。
俵原正仁(たわらはら・まさひと)●兵庫県公立小学校校長。座右の銘は、「ゴールはハッピーエンドに決まっている」。著書に『プロ教師のクラスがうまくいく「叱らない」指導術 』(学陽書房)、『なぜかクラスがうまくいく教師のちょっとした習慣』(学陽書房)、『スペシャリスト直伝! 全員をひきつける「話し方」の極意 』(明治図書出版)他多数。