【新型コロナ緊急アンケート結果】今教師が抱えている不安と困惑の本音
「新型コロナウイルス感染拡大についての緊急アンケート」(4月21日から5月6日まで)へのご協力、誠にありがとうございました。
休校中の学びの保障はどうしている? 仕事の不安や課題は? …などなど、全国の先生方が今、どのような状況におかれ、どのようなことに悩み、怒り、困惑しているのか。そのリアルな実態を、ここに共有します。
回答数:310名
(公立小学校:271名、私立小学校:5名、特別支援学校:3名、中学校:24名、高等学校:5名、その他2名。勤務校で休校措置が取られている:307名)
目次
休校中の学び、9割以上が「プリント等の配付」
勤務校で休校措置が取られているという先生307名に対して、勤務校で取られている子供の学びのための措置を聞いたところ、9割以上が「プリント等の家庭学習課題を配付」という結果になりました。多くの公立小学校において、オンライン授業の壁はまだまだ高いというリアルな姿が見えました。
Q、休校中の子どもたちの学びを保障するため、現状、ご勤務校で取られている措置はどのようなものですか?(複数回答可)
「その他」に寄せられた回答としては、
・学年によってはオンライン授業を行っている
・教育委員会による動画配信を活用している
・時間割の提示をしている
・子供の緊急受け入れ時に対応している
・地元のテレビ局の協力で動画を撮影して放送している
・メールや学校ホームページでその日に学習する教科書の範囲を指定している
などの方法がありました。
未履修内容の対応、子供の安全が最大の課題
学校を再開しても時数が圧倒的に足りないことが見えている中、一番多かった回答は「各教科の未履修内容にどう対応するか」。続いて、常に3密状態と隣り合わせの学校現場において、「子供たちの健康・安全をどう確保するか」が大きな課題として浮かび上がっています。
Q、仕事に関して、現在あなたが不安を感じ、今後の課題だとお考えのことは何ですか? (複数回答可)
「その他」に寄せられた回答としては、
・オンライン授業をどうするか
・年配の先生のICTスキルの欠如
・家庭のネット環境の差
・評価をどうすべきか
・子供のなまった体を緩やかにほぐす方法
・子供の精神的ストレスにどう対応するか
・夏休みはどうなるのか
中には「選択肢全部です!」という回答も…。
不安と課題だらけの実態が見えてきました。
自由記述欄から見えてきた本音
自由記述欄からは、教師の貴重な本音が見えてきました。
(下記は、回答の一部の抜粋です。個人の特定を回避する目的で、いただいたご回答の文意を変えることなく、数字や詳細な描写を一部変更しています。ご了承ください)
3密を避けることが困難
・現在、学童が開くまでの間、子供を預かっているが、間隔を開け、窓は開け放し、会話はしない、と対策は取っているものの、不安でしかたない。もう少し、安心できるまで休校が続いてほしい。
・大規模校で、1クラスの人数は30名を超えている。座席を離しても30センチが限度。
・一年生が相手だと、どうしても距離をとった指導が難しい。歌わず、触れ合わず、話し合わない授業づくりができるのか。
・夏場は、エアコンをつけて密室を作らず授業できるのか。
・3密、どうやって避けるのか? 子供たちに、あれもだめこれもだめと尋常でない制限をし、教師はその対策・対応に疲弊するのは目に見えている。
万が一クラスター化したら…という不安
・万が一クラスター化してしまった時の対応が不安。その規模が学校単位となると児童を通して家族への感染なども想定され、周囲への影響も甚大。
足りない時数をどうやりくりするか?
・限られた時間で、何を重視し、何を割愛するのか、文部科学省に早く決めてほしい。
・優先して教える教科の厳選はできないのか。教科に軽重があるわけではないが、優先順位をつけないと、あれもこれも中途半端にやることで、結局はどれもこれも取りこぼすことにならないか。
・学力を取り戻すことばかりに焦点がいくと、詰め込みすぎて子どもたちを追い詰めていくのではないだろうか。
広がる学力格差への懸念
・同じ地区内の別の学校に我が子が通っているが、勤務校と我が子の学校で課題の内容や量が全く違うことがとても気になる。勤務校では、予習は一切行わせず、制作した課題プリントは昨年度の復習ばかりで量も少ない。逆に、我が子の通う学校は、本年度の予習中心で、難易度も高く、親の手助けなく一人で解き切るのは難しい内容。再開後にこの差を埋める事ができるのかが不安。
・公立の学校においては、そこに所属している先生方の力量、熱量の差で、格差が生まれる。具体的に文部科学省や教育委員会などで方針を統一してほしい。
・オンラインで提出する課題について、同じ児童が提出できず、保護者に電話しても変化がない。 これが重なるとどんどん差が広がってしまう。家庭の力による差をどうすればいいのか。
評価の難しさ
・家庭学習での子供の理解度が客観的に評価できない。課題の答えを写しただけかもしれないので。
・動画配信や課題を示す事になったが、評価はどうすればいいのか。単純にテストだけで判断してしまってよいのか。学習の過程も大切に見守りたい。
体力低下も心配
・学力だけではなく、体力や運動不足の保障も考えなくてはならないと思う。
・休校明けに思いきり校庭を走らせたら事故も起こり得る。そういう細かな共通理解を持っておきたい。
自分や家族の安全が確保できない
・「子供のために」と勤務しているが、果たしてそれが正解なのか…。自分がかかるかもしれない。もうかかっているかもしれない。家族にうつすかもしれないという不安。
・休校中は職場は三密ではないから出勤しなさいと言われる。でも、子供は保育園が休園で預けられない。高齢の親に預けるのも心配。
・二人の乳児を自宅で見ながら在宅勤務中だが、勤務校からの研修報告や成果物提出の縛りがきつい。子どもの運動がてら散歩にも連れ出せない。
行政の対応に困惑
・今年度は大幅に年間計画を変えて学習しないといけないが、どのように変えるのか具体的ガイドラインが全くなく、学校裁量に任されている。運動会など学校行事の実施の有無も同様。この、学校ごとに判断させられているという状況が大きな不安。
・文部科学省、教育委員会の動きが現場や子ども、家庭の実態に合っていない。また、最終的には「現場判断」が求められ、矢面に立たされているのは学校。
・学校行事や宿泊を伴う学年行事は、自治体から方針が降りてこないと動けないので困っている。
・3月からの休校はテレビで知った。管理職の先生は教職員と子どもの健康を第一に考えてくれるが、学校より上の組織の決定と連絡が遅すぎて、結局後手の対応になってしまう。
・上からの通知やガイドラインを見ても「工夫を」「配慮を」ばかりで具体性がない。
・朝令暮改状態が度重なり、「これも仕事」「仕方ない」と割り切ってはいるものの、心中はこの「振り回されている感」による疲労が溜まっている。
・教育委員会が作る教材が、この状況にもかかわらず子供たちが外出しなくてはできないものなど、現場感覚とズレている。
管理職への疑問
・教育委員会に管理職が振り回され、何のためにそれをするのかがわからなくなる時がある。
・こんな緊急自体なのに、平時のような感覚で重要度の低い書類提出を求めてくる管理職に憤りを感じる。
・ICTに興味がなくリテラシーも低い先生方。管理職が対策も示さず、危機感が全く感じられない。
・管理職がピリピリしている。
保護者対応の悩み
・保護者から何か問い合わせをいただいたとしても、教師個人の考えを伝えることは憚られる。保護者から見たら、今の学校は不親切に感じるだろう。学校が再開したら、これまでの不安から、学校への不信感を爆発させる保護者もいるのではないか。
・保護者から学校への電話が毎日鳴る。上の判断が遅く、対応もそれを待たないとできないので、私たちも辛い。
・行事の実施の判断が学校に任せられているため、同じ地域でも運動会を中止にした学校、延期にした学校とで差がある。保護者や子供からしたら、あそこの学校は中止したのに、あそこの学校は延期にして開催してくれた、と、不公平感が出る。同様のことはオンライン授業についても言える。
虐待やいじめが心配
・学力が低く家庭内暴力も多い地域に勤務しているが、学力はおろか家庭内の様子を知る機会さえなくなってしまった。子供たちが無事に生活しているのか、とても不安。
・山間部の子が多くオンライン学習ができる環境にないため、授業が進められない。 障害のある子供のことも書面でしか把握していないため、現在どう過ごしているのか全くわからない。
・見えないところでLINEいじめなどが起こっているのではと心配。
子供の状況が心配
・「子供が家にいたら働けない、世話が大変」など、まるで子供を邪魔者扱いするような報道に疑問。友達と会えない、運動が制限される等、現在の状況は、後になって子供たちの心と身体に悪影響を及ぼすのではないかと心配。
・給食を食べないことで痩せてきた子どもたちの姿を見た。
・長く自宅待機をしていた児童のペースは崩れ、心身のバランスを崩すことが予想される。不登校児童が増えないかがとても心配。
休校=教師はヒマではない!
・休校で「教師はヒマだろう」と思われているのか、イレギュラーな仕事が増えている。夏休み後半は本来ならゆっくり休める時期だが、今年はそれも無くなりそうでますます休めないと感じる。
オンライン授業の是非と壁
・素人が授業動画を作成するのは労力の無駄だと思う。全国的に休校で、カリキュラムも同じなのだから、全国的なもっといい方法があると思う。
・オンライン授業を、一度試しにやってみたが、回線がうまく繋がらず、重くて子どもたちとオンラインでのやりとりができず断念という形に。
・上から、授業動画をYouTubeにアップして子どもたちに見てもらえるようにするよう言われたが、クラスの子ども以外の人も見るところに顔をさらす事には強い抵抗がある。
・オンライン化を進めるよう上から通知が来たが、貧困のためネット環境がない家庭が半数以上いる。学校でできる支援にも限界がある。子供たちがどんな環境で生活しているのか、そこまで考えて行政は動き、通知してほしい。
・オンライン授業をやろうと言っても、実施にはパソコンは在宅ワークの親が使いたいだろうし、すぐに全家庭に端末を届ける事が難しい。
・家庭への連絡手段はメール配信のみ。管理職が機能を把握できていないし、携帯を持っていない家庭もあって困っている。
特別支援学級担任の本音
・休校で、障害の程度や必要な支援が把握できておらず不安。
・支援級の児童は、どうしても蔑ろにされているように感じてしまうことがある。自分自身も自己肯定感が下がることがある。
職員室内で感じる差
・教員は基本的に分担して在宅勤務をしているのに、講師は毎日出勤し、事務作業をしている。講師に面倒な事を押し付けられているように感じる。
全国の教師と知恵を結集して乗り越えたい!
自由記述欄の中には、前向きな提案もありました。
・消毒などについては地域のボランティアなどお願いできれば、少しゆとりができそう。
・分散登校や、授業時や集会時にクラスを分けるなどの対応を検討中。
・これを機に、子どもに本当に必要な学校での時数、担任に可能な授業時間、学校の本来の役割が議論され、教員の業務内容が改善されることを願う。
また、
・校内で話し合ったことや対応を多くの学校で交流できればいいと思う。
という声もありました。
この記事を読んで、ご意見・ご要望、また「こんな解決策がある」「勤務校ではこんな取組が成功している」などのアイデアがありましたら、ぜひ三行教育技術ツイートや、下記のお問い合わせフォームより、お寄せください。
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なお引き続き当サイトでは、新型コロナ休校に関する情報は 新型コロナ対策 休校 タグの記事で随時配信していきます。
今回のアンケートを通して、教育現場で先生方が、答えのない複雑な、重い責任を伴う問題を数多く抱えていること、地域や職場環境によっても違う課題があることが見えてきました。
教育技術各誌、みんなの教育技術ともに、このアンケート結果を真摯に受け止め、少しでも皆様の不安や悩みを解決する糸口となるような企画を考え続けていきたいと思います。
ご協力、誠にありがとうございました。そして、くれぐれもご自愛ください。