小学校オンライン授業実践例:使うツールは?保護者への連絡は?
新型コロナウイルスの影響で長引く休校の中、オンライン授業を考える学校が増えてきています。どのようなツールを使えばできるのか、保護者への説明はどうすれば良いのか? 京都教育大学附属桃山小学校教諭の樋口万太郎先生がご自身の学校での取り組みから、解説してくれました。
執筆/京都教育大学附属桃山小学校教諭・樋口万太郎
目次
慣れている人などいない。拒否反応は自然なこと
オンライン授業というと、どのような授業を想像されるでしょうか?
Zoomなどのビデオ会議ツールを使い、教師と子どもがあたかも教室にいるかのようにやりとりをしている授業でしょうか? それとも、某予備校みたいに、教師がわかりやすく教えている動画をみる授業でしょうか? 人それぞれ、持っているイメージは異なることでしょう。
先生の中には、「オンライン授業」と聞いただけで、「そんなことしたことない」「できる自信がない」「普段の授業と全く違うのでしょ」と拒否反応を出す方もいることでしょう。
こういった反応は自然なことだと思います。私自身、これまでオンライン授業を行ったことは一度もありませんでした。しかし、そもそも、これまでにオンライン授業を行ってきた小学校の先生はどれほどいるのでしょうか。
3月から続いている休校を前に、子どもたちのことを考え、学校の先生方全員が一丸となり、知恵を振り絞りながら取り組んでいるのが、私が今向き合っているオンライン授業なのです。
現在、平日に毎日オンライン授業を行っていますが、日々反省です。うまくいかなかったことを次の授業で活かす、そんな日々を送っています。だからこそ、オンライン授業に関するリアルな声をお届けしようと思います。
今回の記事により、オンライン授業に対して気持ちが少しでもプラスになることを願っています。
どんなツールが必要か?
本校では1〜6年生まで全ての学年で、普段の授業で「ロイロノートスクール」(授業支援ツール)を使用していました。私は今年度6年生の担任をしていて、子どもたちはクラス替えなしの5年生の時からの持ち上がりになるので、学級の子どもたちは私の授業の進め方や「ロイロノートスクール」の使い方には慣れていました。
オンライン授業では、他のアプリを使用するべきかという話もありましたが、結局は子どもたちが操作に慣れている「ロイロノートスクール」を使用することになりました。先生にとっても子供にとっても、慣れているものを使って行うのが一番だと思います。
学年に合ったやり方で行う
オンライン授業といっても、全学年が同じようなスタイルで行っているわけではありません。
低学年・・・子どもと保護者が一緒に「写真を送る・動画を見る」授業
中学年・・・子どもたちが「写真を送る・動画を送る」授業
高学年・・・「ロイロノート」のメッセージ機能を使った双方向の授業
私たちの学校では、このようにステップを作っています。いきなり、双方向の授業を行わなくてもよいと思っています。先生側にもオンライン授業に慣れていく時間が必要になってくるでしょう。
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ロイロノートスクールを使った双方向の授業例
私が担任をしている高学年では、「ロイロノートスクール」の機能だけで双方向の授業を作っています。例えば、次のような使い方です。
・教師から、既存のコンテンツ(NHK for schoolなど)のリンクを送信する
・教師から、動画(3分未満)やテキスト(その時間の流れや問題など)を送信する
・子どもたちが、自分の考えを書いたテキストを子どもたち同士で送り合う
・子どもたちが、テキストを提出箱に入れて提出をする
・子どもたちが、提出したテキストをお互いに見合う
・質問箱を設け、子ども達の質問を受け付ける
というようなことを行い、より双方向に近いオンライン授業を目指して、取り組んでいます。提出をしたり、お互いに考えを見合ったりすることで子どもは授業に参加しているように感じるようです。
オンライン授業1日の時間割
例えば、ある日の時間割です。
10 :00〜10:15
朝の会
健康観察の提出
10 :15〜11:00
1時間目 学級活動
学級目標を作ろう
11:15〜12:00
2時間目 社会
縄文の文化についてまとめよう
プリントに取り組む
14:00〜14:45
3時間目 国語
説明文を読む
段落ごとに自分の共感度(4段階)を提出する
段落ごとに内容を短くまとめる
14:45〜15:00
終わりの会
振り返りジャーナルを書く。明日の連絡をする
(※様々な状況で、現在は授業開始時刻を変更しています。)
何人かのお家の方からオンライン授業について、感想をいただきましたが、多くの方に喜ばれていたのが、この「時間割」です。時間が決まっていることで、生活にリズムが出てくるようです。
子どもたちの感想
子ども達にオンライン授業「初日」に書いてもらった振り返りです。
「今日は家で初めてのオンライン授業をしました。学校では味わえない雰囲気を味わいました」
「今日は、初めてのオンライン学習になりました。家では友達がいなくて寂しいけど、集中できたと思います。特に、変わることはなくいつも学校でやっているような事をできたので、これからも続けていきたいと思います」
「今日は授業をオンラインでしました。オンライン授業は初めてだったので、まだまだなれませ ん。それでもこういう形で授業が先生とできるようになった事は嬉しいです」
「一時間目みたいに動画で話したほうが分かりやすかったです」
技術的な不具合などのトラブルにどう対応するか
高学年はこれまでに学校でロイロノートを使った授業の経験をしてきているため、技術的な不具合はそれほどありませんでしたが、他の学年では電話で対応をするようにしています。
特に、1年生の先生方は、子どもたちも初めて使用するということで、こまめに各家庭に電話をかけ、接続状況を確かめています。
また、オンライン授業を行うにあたって私たちの学校では「機器Q&A」や「タブレット端末を使用するときの約束事」という資料を作成して配付しました。このようなものを作っておくことで、その後の対応を楽にすることができます。
保護者への連絡はClasstingを利用する
また、学校から保護者への連絡をする手段として、「Classting」(連絡帳ツール)を使用しています。学校から保護者へのお手紙は「Classting」、先生から子どもたちへの連絡は「ロイロノートスクール」で、というような使い分けです。
低学年では特に保護者のフォローが大切になってきます。オンライン授業を成立させるためには、保護者の協力、それをお願いするこまめな連絡が必要になってきます。
授業が受けられない家庭向けの対応も用意しておく
私たちの学校では、1日登校ができましたので、そこで漢字ドリルや計算ドリルなどの宿題の範囲を指定するようにしました。オンライン授業を行うことになったとしても、様々な状況で受けることができない人がいるかもしれないということは考えてすすめる必要はあると考えています。
いかがでしたか? オンライン授業とひとことで言っても、そのやり方は学校の数だけあるのかもしれません。手が届くスキルとツールで、この物理的な距離を埋める方法を考える良い機会にして行きたいですね。
樋口 万太郎●1983年大阪府生まれ。京都教育大学附属桃山小学校教諭。「子供に力がつくならなんでもいい!」がモットー。教科書「小学校算数」(学校図書)編集委員。近著『子どもの問いからはじまる授業!』(学陽書房)の他、著書多数。
Twitterアカウントは@boseteacher