子供たちと読みたい 今月の本#11 誰もが暮らしやすい環境・社会とは?

全国SLA学校図書館スーパーバイザー・石橋幸子先生にすてきな本を紹介していただく連載です。11回目のテーマは、「誰もが暮らしやすい環境・社会とは?」。今回は様々な障害や症状を抱える主人公が登場します。本を通して誰もが暮らしやすい社会を考えられるきっかけにつなげましょう。そして、読書の楽しみを伝えてください。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど学級の実態に合わせてください。
監修/全国SLA学校図書館スーパーバイザー・石橋幸子

目次
絵本
先天性四肢欠損という障害や視覚障害、心身障害などをもつ主人公が登場する絵本があります。当事者の状況や思いなどを知る機会にしてみてください。
『さっちゃんのまほうのて』

作/たばたせいいち、先天性四肢障害児父母の会・のべあきこ、しざわさよこ
偕成社刊(発行:1985年)
先天性四肢欠損という障害を負って生まれたさっちゃん。傷付きながらも右手の指がないという障害を受け入れ、力強く歩き始めます。
石橋先生のおすすめポイント
読み聞かせたり紹介したりする対象者が何年生でも、まず奥付の初版年月日を見せて、説明してください。1985年に出版されて以来、今も出版され続け、読み継がれているということは、それだけ人気があり、読みたい人、読ませたい人がいるということです。
全部読み聞かせても10分かかりませんから、ぜひ、ゆっくり絵を見せながら読み聞かせてください。お母さんになれないと言われたさっちゃんの気持ち、お母さん、お父さんの言葉など、子供たちの心にじんわりと染み込み、多くを語る必要のない物語です。中高学年の子供でしたら、表紙の作者名にある「先天性四肢障害児父母の会」についても考えさせたいものですね(低中学年向き)。
『みんなとおなじくできないよ 障がいのあるおとうととボクのはなし』

作/湯浅正太 絵/石井聖岳
日本図書センター刊(発行:2021年)
障害のある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。弟のことを好きだと思う一方で、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じています。そんな複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?
石橋先生のおすすめポイント
小児科医として活躍する作者の実体験がもとになっている絵本で、低学年の子供が自分で読んで理解するのは少し難しいかもしれません。平易な文章と心情がダイレクトに伝わるはっきりした絵の本ですので、教室で先生や学校司書が子供たちの反応を見ながらゆっくり読んでください。「みんなとおなじくできないよ」という障害のある弟の言葉が2回出てきます。ここは弟・兄(作者)の気持ちを読み手が代弁することになります。学校図書館だからこそできる読み聞かせだと思います。「あとがき」の内容もぜひ伝えてください。また、全学年で道徳の教材としても活用できそうです(全学年向き)。
『わたしのくつしたはどこ? ゆめみるアデラと目のおはなし』

文/フロレンシア・エレラ 絵/ベルナルディータ・オヘダ 訳/あみのまきこ
岩崎書店刊(発行:2024年)
アデラの周りでは最近不思議なことばかり起こります。あるはずの靴下がなかったり、道を間違えたり。何が起きているのでしょう。お話と仕掛けが視覚障害についての理解を助ける絵本です。
石橋先生のおすすめポイント
「わたしのあかいくつしたはどこ?」という主人公アデラの大声でお話が始まります。見開きの右ページに大きな丸い穴があり、その穴の部分だけ、次のページの絵が見える仕掛け絵本です。最初は作者の意図が分かりませんが、ページをめくって読み聞かせるうちに円が小さくなっていることに子供たちも気付くはずです。さて、それはどうしてか。謎解きをしながら読み進めることになります。後半の「いろいろなものはなくなってはいません。アデラの目がみえていないのでした。」という文章でアデラの視野が狭まり、見えにくくなっていたことが分かります。子供の発達段階に応じて後書きにある「視覚障がいについて」を読むとさらに理解が深まります(全学年向き)。
『みることば さわれることば 手話えほん』

作/スギヤマカナヨ 手話監修/吉岡昌子
あすなろ書房刊(発行:2024年)
子供たちみんなで楽しめる手話絵本「みることば さわれることば 手話えほん」のシリーズ全3巻。例えば、第1弾は、「あ い う え お」。「あいうえお」は、読む、書く、声に出す、だけではありません。ひらがな、カタカナ、口の形、指文字、日本点字の表記、ローマ字を記載し、分かりやすいイラストと解説で友達や家族で楽しく手話を学べます。手話動画も視聴できます。
石橋先生のおすすめポイント
『みんなであいうえお』『ともだち』『みんなでオノマトペ』の3巻で構成されています。手話ってどんなものかな、どんなふうに行うのかなという子供の疑問に応えてくれる絵本です。まず、「はじめに」でそれぞれの巻の内容の概要を伝えるとよいでしょう。
どの巻にも二次元コードが載っていて、手話動画を見ることができます。手話は話者の表情や手の動きが重要ですから、実際に手話で表現する様子を映像と音声で知ることが一番分かりやすい方法です。本を見て、動画を見て、手話の仕組みに気付いたりまねっこしたりできます。書名にある「さわれることば」については、奥付ページに「盲ろう者、視覚障害者にとって、手話は『さわれることば(触手話)』です。」とあります。これについては子供の実態や必要に応じて説明してください(中高学年向き)。
『やさしいカタチ』

著/大西暢夫
彩流社刊(発行:2025年)
不思議なカタチの車いすみたいなモノ。これは、何だろう? 誰が、どうやって使うのでしょうか。そして、誰が作っているのでしょう。重度の障害をもった人たちの生の表情とともに、生活を支えるスタッフや不思議な乗り物を作る職人との触れ合いを描いた写真絵本。
石橋先生のおすすめポイント
見返しから標題紙(書名が記載されたページ)まで6ページを見せてください。自由に子供たちにこれは何か、誰が使うのかを言わせます。それから読み聞かせたり、内容を紹介したりするとよいでしょう。普段私たちが接することがほとんどない重度心身障害の方への優しさが姿勢保持装置で形になった写真絵本です。絵本の舞台、みちのく療育園メディカルセンターの名誉園長の後書きも子供たちの理解を深めてくれますので、ぜひ紹介してください(中高学年向き)。
『めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!』

文・絵/多屋光孫
合同出版刊(発行:2021年)
芽が出てまもない、細いネギのことを「芽ネギ」と言います。その芽ネギをつくる農園で本当にあった話を描いた絵本です。
石橋先生のおすすめポイント
題名を見たり聞いたりすると、まず「?」が浮かびます。「めねぎのうえん」とひらがな表記ですが、それが「芽ネギ農園」であることが分かり、何が「ガ・ガ・ガーン!」なのかを気にしながら読み聞かせを聞くことになります。400年続く農園で特別支援学校の子供の実習を依頼されるところから話が始まります。絵をしっかり見せながら読み聞かせてください。6ページに渡る農園の社長や社員の方からのメッセージもぜひ紹介してほしいですね。奥付ページには「この絵本をお読みになれない方に、本のテキストデータをお送りいたします。」とあり、読書バリアフリーにも配慮した本であることが分かります。子供の実態に応じて見せてください(中高学年向き)。
図鑑
ユニバーサルデザインの図書館や読書バリアフリーについてよく分かる図鑑があります。誰もが本を読める社会を考えるきっかけにつなげてください。
『だれもが「本を読める」社会へ 読書バリアフリー③ ユニバーサルデザイン図書館、読み上げペンほか』

監修/白坂洋一
汐文社刊(発行:2024年)
一人一人の「読みやすさ」「分かりやすさ」に配慮する「読書バリアフリー」の考えが広がっています。この巻では、読書バリアフリーについて先鋭的な取組をしている図書館、読み上げペンなどを取り上げています。
石橋先生のおすすめポイント
表紙をみんなで見て、「だれもが『本を読める』社会へ」とはどういうことか、考えたり話し合ったりしてみてください。逆にどういう人が本を読めないのかを考えたほうが分かりやすいかもしれません。目が見えない人、見えにくい人、ページをめくるのが大変な人、外国の人で日本語が読めない人などが挙がるでしょう。第3巻には特別支援学校の学校図書館、50年以上前からバリアフリー活動に取り組む公共図書館と点字図書館、インターネット上の図書館などが紹介されています。写真も多いので、見せながら適宜読み聞かせるとバリアフリー図書に関する課題づくりや情報収集に最適です(中高学年向き)。
『りんごの棚と読書バリアフリー1 自分にあった読み方ってなんだろう?』

監修/りんごプロジェクト
フレーベル館刊(発行:2024年)
すべての人が読書を楽しむ権利「読書バリアフリー法」。その周囲で、様々な人と読書をつなぐ「りんごの棚」を紹介します。「りんごの棚」の作り方を通して、世界の読書バリアフリーや自分にできる行動について考える方法を届けます。
石橋先生のおすすめポイント
「りんごの棚」を知っている子供は少ないでしょう。先生方でもご存じでない方もいるかもしれません。この本の「はじめに」と6ページの「知ってる? りんごの棚」を読むと、「なるほど!」となります。そして目次を見ると、紙の本を自分でめくって読むことが困難な人が項目に上がっていて、紙の本を読むことが読書だと思っていた子供たちはびっくりすることでしょう。
総合的な学習の時間や国語、社会などの探究活動の課題づくり、調べる学習にぴったりの本ですから、内容の紹介と本の使い方指導(①「はじめに」「目次」「この本の使い方」を読むこと。②目次を見て興味があるページから読むこと。③奥付ページを見て出版年や他の情報入手法を探すこと)をしてください(高学年向き)。
