【木村泰子の「学びは楽しい」#47】新たな年に自校の「学校づくり」をみんなで問い直しませんか
すべての子どもが自分らしくいきいきと成長できる教育のあり方について、木村泰子先生がアドバイスする連載第47回。今回は、新しい年を迎えた今、全教職員でやるべきこと、そして保護者との関係づくりについて考えていきます。(エッセイのご感想や木村先生へのご質問など、ページの最後にある質問募集フォームから編集部にお寄せください)【 毎月22日更新予定 】
執筆/大阪市立大空小学校初代校長・木村泰子

目次
自分の学校を自分がつくる
毎年、この時期に全教職員で子どもの事実から「学校づくり」を問い直していました。それぞれの立場から自分の考えを書くのです。用紙は「問題点」と「改善点」を書くようになっています。1年間の「学校づくり」を子どもの事実から振り返り、問題点と改善策を書く。まさに、文句を意見に変えるチャレンジです。問題点だけ書くのは却下です。自分の若かりし頃を思い出しても、問題点ばかり追及して文句しか言ってなかったなあって思うのです。すべての教職員が「自分の学校を自分がつくる」ことを合意して行動するからこそ「みんなの学校」づくりが進化します。だからこそ、全教職員が主体性と当事者性をもって改善策を自分なりに自分の言葉で書くのです。多様な価値観があふれる「問い直しの場」が生まれます。誰一人取り残さない次年度の教育課程の編成につながります。全教職員のミッションは、パブリックの学校の最上位の目的「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」です。
全教職員から出されたそれぞれの問い直しを一覧にして対話を重ね、誰もが納得して次年度のプランを言語化していきました。
自分がつくる自分の学校では、すべての人が学校をつくる当事者になります。どんないいことがあるかと言うと、誰も人のせいにはしません。
学校(職員室)に文句(批判・陰口・否定)などの空気が生まれないのは、誰もがウェルビーイングになるものですよ。みんなでチャレンジしてみてください。
「不登校」ゼロは公教育の当たり前
今年こそは「不登校」の言葉を生まないパブリックの学校をつくりましょうね。できるかできないかではなく、やるかやらないかです。
結果ではなく、パブリックの最上位の目的について全教職員が合意して、チーム力を高め合う大人の背中を子どもたちに見せるのです。大人の背中を見抜く力をすべての子どもは本質的にもっています。
今回、読者の方から貴重な声を届けていただきました。みんなで自分事に引き寄せて問い直してみましょう。
私は、不登校と行き渋りを繰り返している息子の母です。 スクールソーシャルワーカーの先生(元学校の校長先生)に木村泰子先生のことをお話ししたら、「特別な先生ですね」と言われました。 私は、悲しくなりました。 私の印象ですが、全員ではないですが先生たちに何を話しても共感してもらえていない気がしています。 教育委員会にも頼れないなら、自分で行動するしかないと思い、子供たちをつなげる企画を考え、家で近所の子供たちと楽しみました。 そうしたら、隣に住んでいる義父から、「土日に楽しみすぎるから、学校に行けなくなるんだ」と言われました。 校長先生が木村泰子先生のことを知らなかったので、先生のYouTube動画を紹介しました。 その後、「1人の担任だけでなく、みんなで見るようにします」と言ってもらい、息子ももう一度通うことを選択し、通っていましたが、最近また行き渋り、ほとんど行かなくなりました。 私は、どうしたらいいのでしょう?
この方の声を学校として、どのように受け止めますか。全国に同様の思いをされている保護者の方がたくさんおられるでしょう。35万人の子どもが「不登校」と言われる今です。
もちろん、この方の子どもさんに出会ったわけでもなく、学校のことも何もわからない私がとやかく言える立場ではないということを踏まえつつ、いただいたメッセージを大切に、ここから学びたいと思います。
先生たちは誰もが必死で働いています。それなのに、子どもが学校から離れ、保護者がこんな思いをし、学校を信頼できなくなり対立していく。あまりにも残念なことです。
先生たちからは、「保護者の理解がない」「保護者が学校を信頼してくれない」「保護者の声がストレスだ」「保護者に困っている」という声を聞きます。でもね、変わるべきは学校の大人です。
学校に「行く」「行かない」を決めるのは保護者でも先生でもなく、子どもです。大空小を特別だととらえている以上、子どもは学校に行かないでしょう。全国から苦しんできた子どもたちは、誰もが大空小は「ふつう」と言います。誰一人、「いい学校」「特別な学校」などと言いません。理由を聞けば、「息ができるから」と、当たり前のことを言います。息ができるから学校に行く。息ができないから学校に行けない。子どもから聴かせてもらった「ほんとの声」は、シンプルなのですよ。
子どもも大人も息ができる学校は「ふつう」の学校なのです。
保護者は子育てのパートナー
保護者が学校に言ってくるのは「困っている」からです。学校が困らせているのだから、まずは「お母さん、困らせてごめんね」と謝ります。
教員は「プロ」だから、保護者を困らせたことについて謝るのです。保護者は敵ではありません。どんな保護者も子どもを一緒に育てるパートナーです。学校だけが何もかも請け負って「わかりました。がんばります」と言ってサービスする関係性は捨てることです。保護者を困らせたことは謝りますが、保護者の言うことについて謝ることはしてはいけないのです。一緒にこの子を育むパートナーなのですから、どうすればこの子が楽になって安心して友達と一緒に学べるかについて1にも2にも対話するのです。保護者と先生が目の前の子どもを真ん中に置いて、一緒に育める作戦を立てるのです。子どもも保護者も教員もみんなが困っているのですから、一緒に対話しながらつながることが不可欠です。
忘れてはいけないのは、自分の力では無理と判断したら、職員室の周りの人の力を活用することです。一人で子どもを育てることなどだれもできないということを、いつも忘れてはいけないのですよ。
目的はすべての子どもの命が学校にあることなのですから。
〇次年度の教育課程の編成に向けて、全教職員が主体性と当事者性をもって現状の問題点と改善策を言語化していこう。
〇「困っている」保護者の声に耳を傾け、共に子どもを育てるパートナーとして対話をし、どうしたら子どもが安心して友達と一緒に学べるかを考えていこう。
〇自分1人で子どもを育てることはできないことを忘れずに、すべての子どもの学びを保障するために周りの人の力を活用しよう。
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きむら・やすこ●映画「みんなの学校」の舞台となった、すべての子供の学習権を保障する学校、大阪市立大空小学校の初代校長。全職員・保護者・地域の人々が一丸となり、障害の有無にかかわらず「すべての子どもの学習権を保障する」学校づくりに尽力する。著書に『「みんなの学校」が教えてくれたこと』『「みんなの学校」流・自ら学ぶ子の育て方』(ともに小学館)ほか。
【オンライン講座】子どもと大人の響き合い讃歌〜インクルーシブ(共生)な育ちの場づくり《全3回講座》(木村泰子先生✕堀智晴先生)参加申し込み受付中! 大空小学校時代の「同志」お二人によるスペシャルな対談企画です。詳しくは下記バナーをクリックしてご覧ください。
