プラットフォームとしての学校【教育用語】

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みんなの教育用語【毎週月曜10時更新】
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教育分野で度々耳にするようになった新しい用語を、深く掘り下げて解説します。今回は「プラットフォームとしての学校」を取りあげます。

執筆/立命館大学教授・柏木智子
監修/筑波大学教授・浜田博文

みんなの教育用語

学校を子ども支援の拠点にしよう

子どもの貧困に対応するために学校を「プラットフォーム」として考えるという試みは、いまやさまざまな課題を抱える子どもを支援するための取り組みとして欠かせぬものになっています。

「プラットフォームとしての学校」とは、子どもを支援するための拠点として学校を位置づけようとする考え方のことを指します。学校は、すべての子どもの状態を把握することのできるところです。そうした学校の利点を活かして、さまざまな課題を抱える子どもを早期発見し、何らかの支援へとつなげ、子どもの最善の利益を保障しようとする発想から生まれた用語になります。

この「プラットフォームとしての学校」と「チームとしての学校」は、近しい関係にあります。子どもの抱える課題は、より複雑化・困難化し、教員だけで対応することが難しくなってきています。そのため、教員が、心理や福祉等の専門家や専門機関の職員と連携・協働しながら課題の解決にあたる必要があります。また、保護者や地域住民の力を借りることも必要な場合があります。つまり、学校を拠点に、多様なメンバーからなるチームを作り、連携・協働して子どもを支援するという図式になります。

この用語は、2014年に閣議決定された「子供の貧困対策に関する大綱について」にて初めて公式に登場しました。本大綱は、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」の制定を受け、具体的な方針や施策を明記したものです。その中の当面の重点施策として「教育の支援」に関する記載があり、「(1)『学校』をプラットフォームとした総合的な子供の貧困対策の展開」として、「学校教育による学力保障」「学校を窓口とした福祉関連機関等との連携」「地域による学習支援」「高等学校等における就学継続のための支援」が挙げられました。

多面的に長期的に子ども支援に取り組む必要 

「プラットフォームとしての学校」は、現時点における学校・福祉関連機関・地域による連携・協働の拠点としての役割を担うだけではなく、長期的、包括的な役割も課せられていると指摘されています。それは、義務教育段階での子どもと保護者の支援だけでなく、高校段階での就労支援や学び直し支援も含めた、小・中・高12年間にわたる支援です。そのために、学校間連携が進められたり、福祉関連機関が長期的見通しをもった支援のあり方を提案したり、地域がコミュニティ・スクール地域学校協働活動地域未来塾等の活動を通じて、子どもを長い目で育てていく支援を行いつつあります。子どもの貧困は、子ども期だけではなく、その後の将来を含めて継続的な不利を生じさせる問題です。そうした点から考えると、長期的な視野で多面的な支援の方策を考えることは非常に重要です。

このように、この用語は子どもの貧困対策の一環として提示されたものではありますが、いまや子どもの抱える課題全般への対策を推進するものとなっています。近年ようやく理解されてきたのは、子どもが多くの困りごとを抱えているものの、それを言えずに自分で抱えたまま生きづらくなっているという事態です。その結果として、学力や意欲や自己肯定感を低下させたり、心身ともに不健康な状態に陥ったり、自分や他者を傷つけてしまったり、学校や社会に参加できずにそこから距離をとってしまったりする状態が生じます。こうした状態の子どもを少しでも支援するために、学校のあり方や機能を改めて考え直そうとするところにこの用語の意義があります。

子どもの最善の利益のために、教員はなにをなすべきか

プラットフォームとしての学校を実現する上で次の課題があります。それは、だれがなにをどのように行うのか、だれがそのマネジメントを行い、俯瞰的な視点から調整するのかといった具体的な中身と、それに対する教員のかかわりについての議論が進んでいないことです。子どもからすれば、支援を受けつつあるものの、そのコアとなるところがわからずに援助要求を出せなかったり、断片的な支援となってしまっていたりすることになります。

そのため、今後の課題として、教員が子どもの貧困対策として、あるいはすべての子どもの最善の利益を保障するために、

①学習指導・生徒指導を通してできることを明らかにする
②心理や福祉等の専門職員・地域住民・市民と連携・協働しながら取り組みたい内容を整理する
③専門職員・地域住民・市民がすでに行っている学校内外での支援について情報収集し、それらの全体像を把握する
④そうした中で、学校をプラットフォームとするためにだれがどのようにマネジメントする必要があるのかを現実に即して提示する
⑤その上で、人的・物的・財的資源がどれほど必要なのかについて提起する

などを挙げることができます。

▼参考文献
柏木智子『子どもの貧困と「ケアする学校」づくり-カリキュラム・学習環境・地域との連携から考える』明石書店、2020年
柏木智子・武井哲郎『貧困・外国人世帯の子どもへの包括的支援-地域・学校・行政の挑戦』晃洋書房、2020年
末冨芳「子どもの貧困対策のプラットフォームとしての学校の役割」日本大学文理学部人文科学研究所『研究紀要』第91号、2016年

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